大橋院長の為になるブログ

2023.05.31更新

CAR-T細胞療法の問題点

CAR-T細胞療法は非常に高い有効性を示しますが、問題点もあります。

<特徴的な合併症>

まず、cytokine release syndrome(CRSと略される)が挙げられます。CAR-T細胞が一気に活性化しサイトカインを放出すると高熱、低血圧、酸素化低下などを起こします。それに対しては抗IL-6受容体抗体やステロイド投与などが行われます。

その他にはCD19陽性細胞全てが除去されるような形になるので正常の抗体産生が抑制されてしまうということもあります。

<コスト>

もう1点重要な問題点としてはコストの問題が挙げられます。1回の治療が数千万円ということでアメリカ以外の国でどのように承認されるのかが関心を持たれています。

CAR-T細胞療法の今後の展望

現時点で実用化がされているのはCD19 CAR-Tのみですが、その他の疾患・抗原に対するCAR-T細胞療法の開発が進んでおり、例えば多発性骨髄腫などに対するCAR-T細胞療法も有用性が報告されていたりします4。

また、CAR-Tの改良も盛んであり、細胞内ドメインに関しても当初はCD3ζ-チェーンから得たものが用いられていましたが、さらに活性化シグナルを改良する為に第二世代CARではCD28や4-1BBなどが組み込まれています。各々をさらに複数組み合わせたような第三世代の開発も行われています。このような構造を有するCARをT細胞に導入することで、抗原を発現するがんをCARが認識した際に非常に強いT細胞の活性化・増幅が起こり、がんを排除するということになります。

その一方で高コストを改善すべく遺伝子導入の手法の開発なども進んでいます。CAR-T細胞療法は効果の面で非常に期待される治療法ですが、コストの面が改善されなければ数多くの疾患に対するCAR-Tが全て保険適応となることは困難とも予想され、低コスト化が進むことが望まれるところです。

 

参考文献
1. Tomuleasa C, Fuji S, Cucuianu A, et al: MicroRNAs as biomarkers for graft-versus-host disease following allogeneic stem cell transplantation. Ann Hematol 94:1081-92, 2015
2. June CH, Sadelain M: Chimeric Antigen Receptor Therapy. N Engl J Med 379:64-73, 2018
3. Park JH, Riviere I, Gonen M, et al: Long-Term Follow-up of CD19 CAR Therapy in Acute Lymphoblastic Leukemia. N Engl J Med 378:449-459, 2018
4. Brudno JN, Maric I, Hartman SD, et al: T Cells Genetically Modified to Express an Anti-B-Cell Maturation Antigen Chimeric Antigen Receptor Cause Remissions of Poor-Prognosis Relapsed Multiple Myeloma. J Clin Oncol 0:JCO2018778084, 2018

投稿者: 大橋医院

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