大橋院長の為になるブログ

2022.04.30更新

  私が17歳の時、中間試験も終わったし、昔の大垣の東宝映画館へ向かった。客は閑散としており、上映されていた映画は“どですかでん”(原作:季節のない街;山本周五郎)」

私はこの映画の魅力にかなり、引き付けられた。黒澤明ちう監督はどういう人であろう?しかし、当時、ヴィデオもDVDもないから、リバイバルで黒澤の作品を待つしかなかった。私は、

原作者の山本周五郎も気になっており、半谷へ行くと、彼の作品は2段と単行本で売っていた。どれが候補になったか、知らないが”芥川賞を断ったそうだ”どんな作家もこの賞のために、文壇デビューを図るのに、彼は淡々と、日本の侍とはのテーマで書き続けた。どこの本屋にも山本周五郎の作品は置いてある。亡くなって何年たつであろう?

 20歳の時に黒澤明作品”羅生門”が上映された。僕は黒澤明と盗賊演ずる三船敏郎のファンになってしまった。芥川龍之介の”藪の中”と”羅生門”を合作したものであった。映画館は客は全く入っていないが、黒沢のこの作品は1951年度国際グランプリに輝いた。「もう俺はいい加減な作品は書けなくなった」といった。

 ここで黒澤が監督になったとき以来の彼の作品を述べる。私なりの感想を書く。姿四郎;1943年、2;一番美しく(戦時下,女工が軍の弾圧の下で、黙々と、軍需製品を作るのを強制される映画である。そんな中にも、彼女たちは僅かな青春を捜していたのだ。黒澤明は、

女工役の女性と結婚している。3,続、姿三四郎:1945年3月であり、日本軍のチェックが機微すぎ、面白くない。4,虎の尾を踏む男達、戦後、黒沢は初めて弾圧なしに映画を作った。ミュージカルで、榎本健一(エノケン)も出演しており、内容は勧心帳であり、やっと黒沢の世界が回ってきた。4、素晴らしき㈰:1947年、学生運動の初期であろうか、理解不能、5、酔いどれ天使、1948年、

一時、東宝を解雇されかけた三船敏郎を黒沢が主役に抜擢した。当時彼は、町のチンピラとして恐れられていた。しかし、町の頑固な老人医師に結核を診断され、養生を進める。全くやくざに徹していた

松永(三船)は、ついに賭場で喀血する。真田医師(志村喬)の献身的な努力にもかかわらず死んでいった松永を、真田は本当に悲しんでいた。当時、三舟扮するやくざ姿がかっこよすぎて新宿では三船のことを組員は兄貴と尊敬した。6、静かなる決闘:面白くないし、鑑賞すると気分が悪くなる。7、野良犬:1949年、ピストルをバスのなかで刷られた村上刑事は、佐藤啓二と犯人を追うが、そのピストルで次々と連続殺人事件が起きる。相当の苦労の末、犯人を沼地に追い詰めた。左腕を村上は打たれたが、犯人にしがみつきやっと手錠をかける。8、醜聞、面白くない、9、羅生門、1950年、荒れる京都の町で、坊さんと、百姓と、町の無一文が、勘定所で、捕まった、貴族、魅惑に婦人、多襄丸(強盗)が役人の前で今起きた事件を白状させる。死体となった板子までも嘘をつく。この世に望はないのかとみんな途方に暮れていたが、泣き叫ぶ捨て子を百姓が、我が子と同じように育てるという。この世にやっと明かりができた。10、白痴、1951年、ドストエフスキーの作品を正直にフィルムに収めたものだから、やたらと長く、大映が土下座して30分、縮小した。反れども私は、一回見ただけでもう見ない。11、生きる、志村喬が主演で三船は出番はない。あと半年しか生きられなことを悟った市役所の市民課の課長が、縦割行政で、まったく市民のことなど考えていない小役人の集まりの市役所で、市民課の課長が命を捨てて公園を作ります。最後は公演のブランコに揺れながら笑って死んでいきます。12、七人の侍;1954年、有名すぎて各々お楽しみください。13、生き物の記録、1955年、見るのにつらい、14、どん底、ゴーリキーの原作を映画にしたもので面白くない。15.隠し砦の三悪人、1958年、超娯楽作品、私は30回は見ました。16、悪い奴ほどよく眠る;1960年、そうでしょうね、17、用心棒;1962年、18天国と地獄、1963年、19は、赤ひげ;1965年、この17,18,19は問題なし、私は40回は見ています。 以降カラー映画、「どですかでん、デルス、ウザーラ、影武者、乱、、、お好きなように、私は興味なし。

投稿者: 大橋医院

2022.04.27更新

冠動脈疾患患者523例を後ろ向き解析、厳格なLDLコレステロール管理による冠動脈プラーク安定化効果を検証

 国立循環器病研究センターは4月22日、欧州心臓病学会が推奨する厳格なLDLコレステロール管理療法(55mg/dL未満)は、非糖尿病患者のプラーク安定化に有効であるが、糖尿病患者においてはその効果が減弱している可能性があると発表した。この研究は、同大研究センター心臓血管内科の岩井雄大医員、片岡有医長、野口暉夫副院長、東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の安田聡教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of American College of Cardiology:Cardiovascular Imaging」オンライン版に掲載されている。

 2型糖尿病は、心筋梗塞などの心血管疾患発症リスクが高い疾患。心筋梗塞は、冠動脈のプラーク形成・進展・破綻により発症することから、その発症予防において冠動脈プラークを安定化させ心筋梗塞発症を回避することが重要だ。研究グループは、先行研究により、LDLコレステロール管理療法は心筋梗塞の原因となる不安定プラークを安定化させ心筋梗塞発症予防に有効であることをすでに報告。日本ならびに海外のガイドラインでも、心血管疾患発症予防においてLDLコレステロール低下療法が推奨されており、その重要性が高まっている。

 近年、欧州心臓病学会は、心血管疾患発症既往を有する2型糖尿病患者では、従来のLDLコレステロール低下目標値(70mg/dL未満)よりもさらに厳格な値(55mg/dL未満)を目標として管理することを推奨している。しかし、このような強力なLDLコレステロール管理療法によるプラーク安定化効果については十分に検証されていなかった。そのため、今回の研究は冠動脈疾患をすでに発症した非糖尿病・糖尿病患者における、厳格なLDLコレステロール管理による冠動脈プラーク安定化効果を検証した。

 今回の研究では、国立循環器病研究センターならびに宮崎市郡医師会病院に入院した冠動脈疾患患者523例(非糖尿病症例277例、糖尿病症例246例)を後ろ向きに解析。冠動脈プラーク内の組織成分を描出し、プラーク不安定に関与する脂質・石灰化成分の同定に有効な近赤外線スペクトロスコピー・血管内超音波法を用いて、厳格なLDLコレステロール管理下におけるプラークの特徴を解析した。

糖尿病患者、心筋梗塞発症の素地となる不安定プラークが存在

 研究の結果、非糖尿病症例の6.4%において、LDLコレステロール55mg/dL未満を達成。このような厳格なLDLコレステロール管理下にある非糖尿病症例では、冠動脈プラークの脂質成分が少なく石灰化を認め、LDLコレステロールの厳格な管理が冠動脈プラーク安定化において有効である可能性が示唆された。

 一方、2型糖尿病患者では、13.0%の症例がLDLコレステロール55mg/dL未満を達成。非糖尿病患者とは異なり、糖尿病患者における冠動脈プラークは、厳格なLDLコレステロール管理下でも、脂質成分が豊富に存在し石灰化も軽度だった。

 今回の研究から、LDLコレステロール55mg/dL未満を目標とした治療は、非糖尿病症例のプラーク安定化において有効な可能性があるが、糖尿病患者ではその効果が減弱している可能性があり、厳格なLDLコレステロール管理下でも心筋梗塞発症の素地となる不安定プラークが存在することが示された。

2型糖尿病、LDLコレステロールだけでなく、他のリスクファクターへの介入も必要な可能性

 今回の研究では、糖尿病患者において、LDLコレステロールの強力な管理下でも心筋梗塞の原因となる不安定プラークは依然として存在していた。糖尿病は、脂質異常症の他に肥満・高血圧などの動脈硬化を惹起させる危険因子が集簇している病態だ。特に、高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症や炎症・酸化ストレスの亢進も伴っており、LDLコレステロールの介入のみでは、十分なプラーク安定化効果を得ることが困難だった可能性が推察される。

 同研究成果から、2型糖尿病症例においてはLDLコレステロールだけでなく、他のリスクファクターへの介入も必要である可能性が示唆される。近年、2型糖尿病症例に特徴的な高中性脂肪血症が残余リスクとして着目されている。すでに、今回の責任著者が、高中性脂肪血症は冠動脈プラーク進展・不安定化に寄与することを報告している。これらの研究成果から、高中性脂肪血症に対する介入治療は糖尿病症例のプラーク進展・不安定化予防に有効である可能性も期待される。

 また、研究グループは、中性脂肪低下療法によるプラーク安定化効果を検証する特定臨床研究を立案し、2021年6月より国立循環器病研究センター心臓血管内科が中心となり国内42施設と共同で研究を実施している(PEMA-CORE研究)。今後、2型糖尿病症例に対する有効な予防治療確立を目指し研究を進めていく予定だとしている。

投稿者: 大橋医院

2022.04.26更新

血圧変動が大きい場合の対処法
血圧の日内変動が大きい患者さんが少なからずいます。例えば、早朝血圧は144/80mmHgで、 昼以降の血圧は120/70mmHgなどのケースです。そういったケースでは、降圧剤を追加してでも早朝血圧を下げる必要があるのでしょうか? ご意見をお願いします。

<回答>
No.1

一般内科 先生 の回答
家庭血圧が135/75mmHg以上なら治療適応ですので、寝る前に降圧薬を服用してもらうと早朝血圧が下がることが期待できると思います。

【一般内科 / 40代 / 特定機能病院(400床以上)】

No.2

一般内科 先生 の回答
生命予後などに最も関与するとエビデンスが出されているのが、早朝血圧です。まずは24時間血圧を測定してからお考えになるのも良いかもしれません。現時点で最も正しいと考えられていますので。
その上で、やはりライザーなどで夜間血圧が高いなどがあったりする場合、睡眠時無呼吸症候群やNa過剰摂取がないか精査する必要が出てくるかもしれません。また、ライザーの場合自治医大苅尾先生は眠前にαブロッカーを使われることもあるようです。

 

投稿者: 大橋医院

2022.04.23更新

通常の消炎鎮痛薬(バファリン、ロキソニン、ボルタレンなど、NSAIDsと言います)とは全く異なる作用機序の鎮痛薬ノイロトロピンという薬があります。ウサギの皮膚にワクシニアウイルスを注射して、そこの炎症を起こした部位より摂取した物質を抽出精製したもので、日本で開発されました。消炎鎮痛薬のように胃腸障害や臓器障害を起こすことはまずなく、安心して長期でも使用できる薬です。
 ノイロトロピンは急性の痛みには効かず、たとえばぎっくり腰などに使用しても効果はありません。ノイロトロピンは慢性の神経痛など,痛みを伝える神経の感受性が増して痛みをより強く感じやすくなった状態の痛みにその感受性を低下させて効果を発揮します。慢性の神経痛に使用すると、はじめは効いているかどうかわからないが、少しずつ痛みが軽くなってゆく作用があります。患者さんもノイロトロピンを中止したら痛みが強くなり、はじめて効果があったんだと気がつく場合も多いです。
 ノイロトロピンの作用機序はまだ完全にわかっておらず、下降性疼痛抑制系とよばれる脊髄レベルで脳の痛みを感じにくくする作用が関係しているのではないかと言われています。また、慢性痛、特に神経の傷が原因の痛みでは脳の視床という場所の血流が低下し、それが痛みを強く感じさせるとされています。ノイロトロピンはその視床の血流を増加させる作用があり、それがノイロトロピンの慢性痛への効果に関与しているという説もあります。
 適応疾患には帯状疱疹後神経痛(トピックスに記載しています)、ちなみにアメリカのFDA(食品医薬品局)というアメリカで使用される薬剤の認可を決定する機関が認めた帯状疱疹後神経痛に効く薬のひとつがノイロトロピンです。神経損傷による神経痛(CRPS、複合性局所疼痛症候群といいます。トピックスに記載しています)、線維筋痛症(トピックスに記載しています。リリカとの併用で特に効果を発揮するようです)など、主に難治性の神経痛や原因のわかっていない線維筋痛症のような全身の痛みに用います。

投稿者: 大橋医院

2022.04.23更新


更年期障害に対するプラセンタ(メルスモン)治療
プラセンタとは
プラセンタとは「胎盤(たいばん)」のことです。胎盤は赤ちゃんのへその緒とつながっていて、栄養や酸素を赤ちゃんに届け、赤ちゃんを育てる役割を持っています。胎盤には細胞を育て、活性化させるたくさんの成長因子(タンパク質やアミノ酸、核酸、ビタミンなど)の栄養素がたいへん豊富に詰まっています。

プラセンタエキスとはヒトの胎盤から抽出されたエキスの有効成分のことです。このプラセンタエキスを注射することにより、プラセンタが体内にとりこまれ、美容や疲れなどに効果を発揮するといわれています。

医療用に使われているプラセンタ注射薬は、メルスモンをとラエンネックの2つの製剤が厚生労働省で医薬品として認可されています。いずれも日本国内の産婦人科で健康な母親から正常分娩で生まれた胎盤を使用して作られたものです。 ちなみに当院ではメルスモンを使用します。

更年期障害について
女性の32歳から65歳歳代は、女性ホルモンの分泌低下に伴い、ほてりやイライラ、のぼせ、不眠など何となくこれまでにない体調の変化を感じることが多くなります。これらの症状に合わせ、個人差はありますが排尿障害や性交障害、骨粗鬆症など女性特有の症状や変化が現れてくることがあります。

更年期とは閉経をはさんで前後10年のことを指します。標準的にはおおよそ45歳~55歳くらいが更年期ということになりますがもちろん個人差がありますし、症状もそれぞれです。

更年期障害の症状
更年期障害の症状は人それぞれ、そして個人差もあります。下記は参考までです。何かしら当てはまるものがあるかもしれませんね。

顔がほてる
汗をかきやすい
腰や手足が冷えやすい
息切れ、動悸がする
寝つきが悪い、または眠りが浅い
怒りやすく、すぐイライラする
くよくよしたり、憂うつになることがある
頭痛、めまい、吐き気がよくある
疲れやすい
肩こり、腰痛、手足の痛みがある
プラセンタ療法
ヒト胎盤ホルモン=プラセンタは、肝炎や更年期障害の治療薬として厚生労働省から認可されているお薬です。定期的に注射することでこれらの病気に対して治療効果を期待することができます。

また、病気の治療以外にも、疲労の回復や自己免疫疾患・アレルギー疾患の改善、美肌・アンチエイジングなどの美容効果が認められているため、広く活用されています。

プラセンタの働きとして、次のようなものが報告、確認されています。

免疫賦活作用:病気に対する抵抗力を高める
活性酸素除去作用:活性酸素を除去し、老化を防ぐ
強肝・解毒作用:肝臓の働きを強化する
妊婦の乳汁分泌促進作用:妊婦の乳汁分泌を促進する
抗アレルギー作用:アレルギーを抑える
疲労回復作用:疲労の回復を促す
美肌促進作用:シミ、シワ、ニキビを抑え、美白を促す

投稿者: 大橋医院

2022.04.22更新

更年期の年齢は30歳代から65歳までを更年期といいます。

メルスモンは、当院では、32歳から65歳まで保険で出来ます。

、60歳から65歳でメルスモン希望の方は、午後に、受診してください。(3時半から6時半まで)

投稿者: 大橋医院

2022.04.22更新

新型コロナで入院した患者を対象に未解明だったスーパースプレッダーの決定要因を検討

 東京医科歯科大学は1月17日、新型コロナウイルス感染症のPCR検査で高いウイルスコピー数を有し、周囲への感染を拡大するスーパースプレッダーと呼ばれる患者の決定要因について明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男教授の研究グループと、同大救急救命センター、同大臨床検査医学分野との共同研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Infection」オンライン版に掲載されている。

 新型コロナウイルス感染症の診断にはRT-PCR検査が重要な役割を果たし、同検査によりウイルスコピー数の定量的な評価が可能となる。2003年のSARSあるいは2012年のMERS流行時から、全ての患者が等しく感染を広げるのではなく、高いウイルスコピー数をもつ特定の患者が特に感染を広げていくことが知られていた。これらの患者はスーパースプレッダーと呼ばれ、新型コロナウイルス感染症においても高い感染力と死亡率をもつことが知られている。スーパースプレッダーを早期に同定することは、治療および周囲への二次感染の拡大防止の観点から重要だが、これまでスーパースプレッダーの決定要因については解明されていなかった。

 研究グループは今回、2020年3月~2021年6月までに、中等症から重症の新型コロナウイルス感染症で東京医科歯科大学病院に入院し、少なくとも1回以上RT-PCR検査が行われた患者379人を対象とし、スーパースプレッダーを特定する要因について検討を行った。

糖尿病、関節リウマチ、脳梗塞の既往がリスクになると判明

 入院患者の電子カルテの情報をもとに、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・関節リウマチ・がん・慢性腎不全・脳梗塞・心疾患・呼吸器疾患・アレルギーなどの既往歴について調査を行い、分析した。

 年齢や性別、喫煙歴で調整した分析の結果、上記の既往を3つ以上重複して有する患者では、既往のない患者と比較して、ウイルスコピー数が87.1倍(95%信頼区間5.5,1380.1)高くなることが明らかになった。また、糖尿病患者では17.8倍(95%信頼区間1.4,223.9)、関節リウマチ患者では1659.6倍(95%信頼区間1.4,2041737.9)、脳梗塞患者では234.4倍(95%信頼区間2.2,25704.0)倍、ウイルスコピー数が高くなることが明らかになった。

 入院時の血液検査結果の解析では、入院時に血小板とCRPが低い患者は、高いウイルスコピー数を有することが明らかになった。さらに、複数回RT-PCR検査を行った患者を分析した結果、90%以上の患者が初回または2回目の検査で最大のウイルスコピー数に達していることが判明したという。

リスクが高い患者に対し、特別な感染管理措置を入院初期段階で講じる必要性

 現在、新型コロナウイルス感染症は再流行の兆しを見せているが、感染を広げる原因となり得るスーパースプレッダーを既往歴や入院時の血液検査の情報から特定することで、臨床医は個室で患者を隔離し院内感染を防ぐための注意喚起を行うなど、感染管理措置を取ることが可能になる。

 また、今回の研究により、スーパースプレッダーである可能性の高い患者に対しては、特に感染の初期において注意深い感染管理措置が必要なことが示された。「本研究は、新型コロナウイルス感染症におけるスーパースプレッダーの特徴を明らかにし、院内における二次感染の拡大を予防する可能性を示した」と、研究グループは述べている。

投稿者: 大橋医院

2022.04.21更新

肥満に起因ないし関連する健康障害の1つである月経異常・不妊の中では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が、肥満とインスリン抵抗性の関与するもっとも重要な疾患です1)。
PCOSとは、月経異常、卵巣の多嚢胞性変化、内分泌所見(高アンドロゲン血症など)で診断される臨床症候群です。

肥満に伴う過剰な脂肪分解はインスリン分泌を亢進させ、インスリン抵抗性をもたらします。また、肥満による軽度の炎症はレプチンの増加を招き、アンドロゲンの生合成を促します。インスリン抵抗性と高アンドロゲン血症が関わるこれらの経路を通じて、肥満は卵巣機能不全と関連しています。

投稿者: 大橋医院

2022.04.20更新

継続的に行われてきたDLBCLの治療開発
 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma: DLBCL)の化学療法の開発は、1976年にCHOP療法(3種の抗がん剤、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンに、副腎皮質ホルモンであるプレドニゾロンを組み合わせた治療)がMDアンダーソンがんセンターから報告されて以来、継続的に行われています。本稿では、DLBCLの病態と初発寛解導入治療について最新の知見に基づいて概説します。

DLBCLの病態
遺伝子変異パターンによる分類の研究も進む
 DLBCLは、成熟リンパ系腫瘍の中で最も頻度が高い病型です。全リンパ腫の約3分の1を占めます。発症年齢中央値は60歳代後半で、75歳以上の後期高齢者での発症も多く、約3割に上ります。臨床病期はAnn-Arbor分類(I-IV期)で決定されますが、限局期(I-II期)は3割程度で、進行期(III-IV期)が7割を占めます。

 DLBCLには14の病型が定義されています。その中で、DLBCL, not otherwise specified (NOS)がほとんどを占めます。縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫や血管内大細胞型B細胞リンパ腫などの特殊型は、“他の大細胞型B細胞リンパ腫(other large B cell lymphomas)”に分類されます(2016年WHO分類改訂第4版)。myc遺伝子とbcl2遺伝子の双方の再構成を持つ症例(double hit lymphoma)などは、予後が極めて不良で、高悪性度B細胞リンパ腫(high-grade B-cell lymphoma)として、DLBCLとは別疾患と分類されます。DLBCLの治療開発はDLBCL-NOSを主な対象として進められてきました。

 DLBCL-NOSは遺伝子発現に基づいた分子的サブタイプとして、胚中心型(GCB型:germinal center B-cell subtype)、活性化B細胞型(ABC型:activated B-cell subtype)と、cell of origin(細胞起源)によって分類されます。ABC型は、予後がGCB型と比較して不良であると報告されていますが、一部の分子標的薬ではABC型に特化した開発が進んでいるものもあります。また、遺伝子変異パターンにより、DLBCLを5つに分類(EZB、C4、BN2、N1、MCD)する研究も行われ、GCB型、ABC型との相関も検討されており、治療開発にも関わってくるようになってきました。

現在の標準療法
R-CHOP療法で6割超が治癒
 進行期aggressive lymphomaでは、標準治療としてCHOP療法(6、8コース)が確立されています。CHOP療法より治療強度を高めた治療法(第2、第3世代と呼ばれる治療法でm-BACOD、ProMACE-CytaBOM、MACOP-Bなど)も数多く開発されてきました。しかし、これら4つの治療法を比較した第3相臨床試験(1993年)1)の結果によると、有効性でCHOP療法に勝る治療レジメンはなく、有害事象が最も少ないCHOP療法が標準療法となりました。

 DLBCLはaggressive lymphomaの代表的な疾患です。DLBCLはCD20表面抗原が陽性で、抗CD20抗体であるリツキシマブ(rituximab: R)とCHOP療法を併用した治療の有用性が、2002年に第3相臨床試験で報告されました2)。全生存率も改善され、現時点での標準療法はR-CHOP療法です。R-CHOP療法により、6割を超える症例が治癒します。

R-CHOP療法後の治療開発
R-COP療法でも3-4割が再発
 R-CHOP療法は効果が優れており、治癒が期待される治療法ですが、3-4割の症例で再発を来します。初回寛解導入を改善し、DLBCLの治療成績を向上させることは重要であり、①化学療法の強化 ②分子標的療法の導入の2つのコンセプトで開発が進みました。以下で、それぞれについて概説します。

化学療法の強化―R-CHOP療法を上回る結果は出ていない
 R-CHOP療法は、3週間に1度(R-CHOP-21)の投与法です。これを2週間に1度(R-CHOP-14)にすることにより、相対用量強度(relative dose intensity:RDI)を高め、治療効果の改善を目的とした第3相臨床試験が英国とフランスでそれぞれ行われました。しかし、RDIが高いR-CHOP-14は、R-CHOP-21に無増悪生存で優ることは示されませんでした。

 R-CHOPレジメンの主要薬剤の96時間持続投与やVP-16の追加などにより、治療強度を高めたDA-EPOCH-Rレジメンも検討されました。DLBCLの初発症例に対する単群の第2相臨床試験では、高い有効率が示されました。しかしその後、DA-EPOCH-R療法とR-CHOP療法を比較する第3相臨床試験が行われましたが、無増悪生存では有意差が示されませんでした。また、DA-EPOCH-R療法では、有害事象が高い傾向が認められました。

 その他の第3相臨床試験では、リツキシマブの投与法(強化)も検討されましたが、標準のR-CHOP療法を上回ることは示されていません3)。

 上記の様にR-CHOP療法の治療効果を改善する目的で、化学療法の強化が検討されてきましたが、臨床的に優れた治療法の開発はされていません。

分子標的療法の導入―抗体薬物複合体の初期治療導入に期待
 近年、B細胞リンパ腫に有効と考えられる小分子薬剤が開発されてきました。また、抗体療法の一つである抗体薬物複合体(antibody drug conjugate: ADC)もDLBCLの初期治療に導入が検討されています。

①プロテアソーム阻害剤

 プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブは、NFκB経路の阻害薬として、多発性骨髄腫で広く用いられています。ボルテゾミブは、non GCB(ABC)型のDLBCLでの効果が期待されており、R-CHOPとの併用療法(VR-CHOP)がR-CHOP療法と第2相臨床試験で比較されました。しかしVR-CHOPは、無増悪生存を改善できませんでした。

②BTK阻害剤

 B細胞受容体から核へのシグナル伝達系の重要な酵素にブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton tyrosine kinase:BTK)があります。BTK阻害剤は、慢性リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫などで高い効果が報告されています。

 BTK阻害剤であるイブルチニブはnon GCB(ABC)型のDLBCLにおいても効果が期待できる試験結果があり、第3相臨床試験でイブルチニブ+R-CHOP療法と、R-CHOP療法の比較が行われました(PHOENIX試験)。しかし無増悪生存の改善効果は認められませんでした。ただし、若年者、遺伝子変異型のMCD型・N1型を対象としたサブ解析では、イブルチニブの上乗せ効果が示唆されています。

③免疫調整剤

 多発性骨髄腫のkey drugであるレナリドマイドは、悪性リンパ腫にも効果が期待できます。再発濾胞性リンパ腫には、リツキシマブとの併用で保険が適用されます。第2相臨床試験でR-CHOP療法との同時併用が検討され、ABC型DLBCLに対して、レナリドマイドの併用が効果を改善する可能性が示唆されました。

 また、レナリドマイド+R-CHOP対R-CHOPの比較第3相臨床試験が行われましたが、レナリドマイドの上乗せ効果は証明されませんでした(ROBUST試験)。高齢者を対象としたR-CHOP療法後のレナリドマイド維持療法の第3相臨床試験も行われましたが、レナリドマイド維持療法を行った群において無増悪生存は改善したものの、有害事象が多く、全生存率の低下が懸念されました。

④新規抗体治療薬

 ADCC(抗体依存性細胞傷害)活性を向上させた抗CD20抗体薬のオビヌツズマブは、濾胞性リンパ腫の初発・再発で広く用いられています。DLBCLにおいてもオビヌツズマブ+CHOP療法が、R-CHOP療法と第3相臨床試験で比較されました(GOYA試験)。しかしオビヌツズマブによる治療効果の改善は認められませんでした。

 新規抗体薬の一つにポラツズマブ ベドチンがあります。ポラツズマブ ベドチンはADCであり、B細胞を認識するCD79b抗体に、微小管阻害剤であるMMAEが結合されています。R-CHOPとポラツズマブ ベドチン+R-CHP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびプレドニゾン)を比較する第3相臨床試験の結果が2021年12月に発表されました4)。主要エンドポイントである無増悪生存が、ポラツズマブ ベドチンの併用で改善したと報告されました。全生存は改善されませんでしたが、有害事象は両群で同等でした。今後、ポラツズマブ ベドチン+R-CHP療法の初発DLBCL治療における位置づけが注目されます。

今後の治療開発の展望
R-CHOP療法に代わる標準療法の出現に期待
 初発DLBCLに対しては、R-CHOP療法の効果と安全性のプロフィールが極めて良好であるため、R-CHOPを超える治療法の開発は困難を極めました。しかし、抗体薬を含む分子標的療法の開発が進み、初発症例を対象とした第3相臨床試験も複数行われています。特に抗体開発では、2重特異抗体、ADC、抗CD19抗体が注目されます。20年以上、標準療法であったR-CHOP療法に代わる標準療法が出現するのを期待したいところです。

投稿者: 大橋医院

2022.04.19更新

腸内細菌はヒトの健康と密接に関係しているそうですね。

 本田氏:ヒトの腸には約1000種類の腸内細菌が生息しています。それらが持つ遺伝子の総数はヒトの遺伝子の何十倍にも上り、ヒトの健康は、これら腸内細菌の遺伝子の働きに大いに依存しているのです。

 病気になると、腸内細菌の細菌組成が変化します。健康なときに比べて菌の多様性が失われるなど、さまざまな異常が見られることが分かってきました。これらの異常は、総称してディスバイオシスと呼ばれています。 僕の研究室は、腸内細菌に関わる研究であれば何でもやってみようという方針で、いろいろな病気やその治療など、非常に幅広いテーマを扱っています。

――今回は長寿に関する研究でした1。

 本田氏:慶應義塾大学医学部では、百歳以上の人たち(百寿者)を対象に研究を行う百寿プロジェクトが、20年以上続けられています。同大学元特別招聘教授の広瀬信義先生が始められたもので、百寿者の元に出向いて面談し、血液試料を提供してもらってくるのです。

 僕は幸運にも、このプロジェクトに2016年ごろから加わることができ、そのときから便試料も集めていただいています。腸内細菌の研究には便を用いるのです。僕たちの研究のモチベーションは、もちろん、長生きの秘訣が百寿者の腸内細菌から見つかることへの期待です。百寿者は、高血圧や糖尿病、がんなどにかかっていない人がほとんどなのですから。

――長生きの秘訣は見つかりましたか?

 本田氏:はい。結論から言うと、病原体に対して抗菌作用のある物質(isoalloLCA;イソアロリトコール酸)が、百寿者の便の分析から見つかりました。そして、その物質を作り出すことのできる腸内細菌と、isoalloLCAの合成経路まで、突き止めることができました。抗生物質がほとんどない時代を生き抜いてこられた百寿者たちがこのような菌を持っていることは、長寿の理由の1つなのかもしれません。

胆汁酸に焦点を合わせて調べる
――どのように研究を進めてきたか、改めてそのプロセスと結果を併せて教えてください。

 本田氏:研究対象は百歳以上の160人(平均年齢107歳)で、対照群としては、ある程度健康な85~89歳112人と、21~55歳47人でした。腸内細菌の組成の違いなどを比較して調べました。興味深い点がいろいろと見えたのですが、今回は胆汁酸に着目して詳しく調べることにしました。

 胆汁酸というのは、肝臓の分泌物である胆汁の主成分で、腸管に排出され、そこで腸内細菌によって代謝されます。一方、腸内細菌はさまざまな酵素を作り出し、食物や分泌物を化学的に変化させる働きをします。胆汁酸の場合は、腸内細菌の酵素によって酸化・還元などが行われ、多様な胆汁酸代謝物(二次胆汁酸)が作り出されることが知られています。このような胆汁酸代謝物の中には、例えば漢方薬として使われるなど生理活性が強いものが多かったので、今回、胆汁酸に着目することが重要と考えました。また、百寿者の便は、胆汁の色と同じように深緑がかっていることが多いと研究員が気付いたことも、胆汁酸に興味を持った理由の1つでもありました。

――胆汁酸について詳しく解析した結果は?

 本田氏:便中に、どのような胆汁酸代謝物がどれくらいの割合で含まれているかを、液体クロマトグラフ質量分析計を用いて詳細に分析しました。すると、百寿者だけに非常に多く含まれる物質がありました。それがisoalloLCAだったのです(図1)。

 しかし、isoalloLCAがどのような代謝経路で生じるのか、それを生成させる腸内細菌にはどんなものがあるのか、そうしたことは全く知られていませんでした。そこで、さらに詳しく調べるために、百寿者の腸内細菌の菌株を培養して実験することにしました。isoalloLCAの化学構造から代謝経路を予測し、候補となりそうな前駆体を各菌に与えてみて、isoalloLCAが生成するかどうかを調べることにしたのです。


図1 百寿者と対照群の便試料でisoalloLCAの量を比較。百寿者では赤色で示したisoalloLCAが多かった。CE91の人の便を菌株の培養に用いた。

――腸内細菌の培養は難しそうですが。

 本田氏:一般的には簡単ではありません。ただし、僕の研究室はそれを得意としているのです。菌株を分離・培養する技術を持っているのが僕たちの強みです。ヒトの常在菌ならば、培養液を工夫することで、僕たちはほとんどのものを培養することができます。先輩研究者が代々地道に築いていったものを土台に、磨いていった技術です。

 さて僕たちは、百寿者の中から、isoalloLCAを豊富に持つ最高齢の女性(CE91)の便試料を選びました。そこから68種の菌株を分離することができました。

――菌株を用いた実験の結果は?

 本田氏:68種の菌株のうち、数種類の菌株がisoalloLCAを生じさせることが分かりました(図2)。このうれしい結果が出たとき、実際に実験に携わっていた助教の佐藤優子さんと准教授の新幸二さんが、「当たりがありました!」と言いながら興奮した様子で僕の部屋にやって来たのを覚えています。僕も驚き、喜びました。これで、研究が一山越えたという思いでした。


図2 代謝経路(3-Oxo-Δ4-LCA→3-Oxo-alloLCA→isoalloLCA) を予測し、百寿者の菌株に3-Oxo-Δ4-LCAを基質として加えた。すると、isoalloLCAを生成する菌株(St3、6、7、19、21~24)が見つかった。縦軸は菌株の番号。横軸は胆汁酸代謝物の量。

 ここまでの研究結果でもNatureに出せるような、十分良いものだと思いましたが、僕たちはさらに詳しく調べることにして、isoalloLCAを生成した腸内細菌のゲノム配列を解読し、解析していきました。すると、予測した通りのisoalloLCA代謝酵素の遺伝子配列が含まれていることが分かりました。この細菌酵素遺伝子のノックアウト実験を行うことにより、isoalloLCAの代謝経路の詳細を明らかにすることができました。

――isoalloLCAの働きも調べたのですね。

 本田氏:胆汁酸には殺菌効果を持つものがありますが、isoalloLCAには具体的にどのような作用があるのか、マウスを用いた実験で詳しく調べました。その結果、isoalloLCAは、院内感染の原因菌である Clostridioides difficile に対して強い抗菌作用を持つことが分かりました。さらに、この菌が属するグラム陽性菌と呼ばれるグループに含まれる他の病原菌に対しても抗菌作用を示すことが分かったのです。その一方で、感染症の原因にならない常在菌に対しては、そのような作用は弱いことも分かりました。

 これらの結果は、百寿者においては腸内細菌の働きでisoalloLCAが生成され、その抗菌作用によって病原菌が腸に定着しないことが長寿の理由の1つ、という可能性を示唆しています。 isoalloLCAを合成する腸内細菌株は、今後、感染症に対する予防や治療にも利用できる可能性があると思います。

やれることは全部やりきるのがポリシー
――素晴らしい研究成果に対して、反響も大きかったと聞いています。

 本田氏:うれしいですね。今回の研究は僕たちの中でも自信作です。百寿者の便を研究するというだけでも注目に値することだと思うのですが、isoalloLCAという物質を突き止め、さらに、その代謝経路や抗菌作用といった分子メカニズムまで解明することができましたから。

 分子メカニズムの解明については、いつも目指しているのですが、頑張ってもできないときの方が多いのです。今回、このように順調に結果が得られたのは、isoalloLCAの代謝経路の予測が正確だったからに違いありません。この予測をしてくれたのは、マサチューセッツ工科大学(MIT;米国ケンブリッジ)からの留学生のSean Kearneyさんです。胆汁酸はステロイドの一種なので、彼は化学構造的に類似性のあるテストステロンの代謝経路を参考に予測を立てたのでした。

――腸内細菌の研究を世界の第一線で牽引されてきました。

 本田氏:ミニマムな労力でスマートに論文を仕上げるタイプの研究者もいますが、僕たちはそれを目指してはいません。「力をセーブせず、やれることは全部やる」。これが僕たちの研究室のポリシーです。先ほども述べたように、僕たちは菌株の分離技術を備えているので、ゲノム解読をして比較するだけにとどまらず、実際に菌が何をしているかを実験して調べることができます。あらゆる角度から、やれる解析は全部やるようにしているため、僕たちの論文はデータ量の多い論文になっています。こうした論文は、他の研究者たちにとって利用しやすく、実際、僕たちの論文は引用されることが多いですし、それが評価につながっているのだと思います。他者に利用してもらえるデータの豊富な研究こそが「強い仕事」だと僕は考えており、そういう仕事を目指しているのです。

 必然的に、研究室のメンバーの作業量は膨大なものになるので、僕は、彼らの努力に支えてもらっているのだと感謝しています。また、腸内細菌の作用を調べるためには、無菌状態で飼育しているマウスに調べたい菌を投与します。そうした実験に使用する無菌動物室などは、企業のサポートの上に成り立っています。

――今後の研究は?

 本田氏:さまざまな病気や治療を同時並行で研究しているのですが、特に重きを置いているものの1つは、認知症です。脳と腸は直接的にコミュニケーションを取り合っていて、密接な関係にある器官なのです。また他には、胆汁酸と同じステロイドの一種である男性ホルモンや女性ホルモンと腸内細菌の関係も探っていきたいです。菌が男性ホルモンを代謝することで前立腺がんの抑制に働くのではないかと期待しています。

 今回の研究の関連でいえば、isoalloLCAを作る腸内細菌を持っている人は、85歳以上のグループの中にも見つかりました。持っている量は少量ですが、その人たちの腸内細菌を追跡して調査していきたいです。その人たちが100歳以上になるかどうか、見てみたいのです。とはいえ、研究者も年を取ります。日本では定年制度により退職しなければならず、長い期間にわたる研究がやりにくいのが残念です。僕自身は、生涯研究者として腸内細菌の研究に貢献していきたいと願っています。

――ありがとうございました。

投稿者: 大橋医院

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