大橋院長の為になるブログ

2022.01.28更新

米ファイザーと独ビオンテックは1月25日、新型コロナのオミクロン株に対するワクチンの臨床試験を開始したと発表した。18~55歳の健常人約1400例を対象に、3つのコホートを通じ、安全性、認容性、免疫原性を評価する。両社は現行ワクチンがオミクロン株に対しても、ブースター接種(追加接種)により、重症化や入院を抑制する効果があるとしたうえで、将来発現する可能性のある新たな変異株に対応するためにも、新たなアプローチが必要だとしている。

 実施するコホートは、①臨床試験登録の90~180日前に現行のファイザー製ワクチンを2回接種した615例を対象に、オミクロンに対する新たなワクチンを1回もしくは2回接種、②登録の90~180日前に現行のファイザー製ワクチン3回接種を受けた600例を対象に、オミクロンに対するワクチンを1回接種、③ワクチン接種を受けていない人205例を対象に、オミクロンに対するワクチンを3回接種-で、安全性や認容性、免疫原性を評価する。

 ファイザーのKathrin U. Jansenシニアバイスプレジデント兼ワクチン研究開発責任者は、「臨床データやリアルワールドデータからは、ブースター接種がオミクロン株の重症化抑制と入院を抑制していることを示しているが、時間の経過に伴って効果が減弱することに備え、オミクロン株と将来出現する可能性のある新たな変異株に対し、新たなアプローチを特定する必要がある」として、オミクロン株に対するワクチンの必要性を強調した。

 ビオンテックのUgur Sahin, CEO兼共同創設者は現行ワクチンがオミクロン株に対して重症化を抑制する効果があるとしたうえで、開始する研究について「これまでの変異株と同様にオミクロン株に対しても、同様のレベルでの抑制効果を達成するためにオミクロン株に対応するワクチンを開発するためのサイエンスベースでのアプローチの一部だ」と説明した

投稿者: 大橋医院

2022.01.27更新

コロナ下での診察の落とし穴
全身をくまなく診るという基本が大切
――例えば、発熱の原因が蜂窩織炎だった場合、皮膚の所見があれば、診断はしやすいと思いますが、コロナ下ではそういった疾患も見落とす場合があると聞きます。

 蜂窩織炎は全身のどこにでもでき、皮膚と皮膚の下の組織が感染して赤くなって腫れます。例えば、蚊に刺されて、そこから炎症が広がっていくこともあります。抗がん剤などで免疫が低下している方だと、皮下組織で細菌が増殖して蜂窩織炎になりやすくなります。蜂窩織炎のように、熱源が皮膚など見えやすい場所にあれば発熱の診断はすごくしやすいです。

 本来は、発熱があれば、その他にもいろいろな症状や所見があるかもしれませんから、一つ一つ見落としてはいけない疾患を頭に思い浮かべながら、全身をくまなく診察すべきです。甲状腺を触って異常がないか確かめたり、菌血症で結膜出血はないかを確かめたりと、頭頸部から胸背部、腹部、四肢、皮膚まで診察します。

 しかし、COVID-19の感染が心配される状況下では、どうしてもパーティション越しなどで、患者さんと距離をおいて検査、診察をするようになります。すると、全身をしっかりと診ることがしにくいので、蜂窩織炎などの分かりやすい熱源でも見落としてしまいがちになってしまいます。全身をくまなく診察するのが難しい状況だからこそ、コロナ下では「見落としがないか」を常に念頭に置きながら診察することが、ポイントの一つだと言えるでしょう。

――発熱以外の身体所見が鑑別のポイントになる疾患には、他にどのようなものがありますか。

 偽痛風も熱が出ます。痛風のように骨の周辺の組織、関節などが痛くなる疾患です。痛風との違いは、尿酸値が上がるか上がらないかで、痛風とよく似ていますが、痛風とは違って、ピロリン酸カルシウムという物質の結晶が沈着して痛みが生じます。

 この場合、関節が腫れて赤くなり、痛みの症状も伴いますので、熱以外に関節の痛みがどこかにあれば、偽痛風も疑います。慢性的な関節痛とは異なり、熱が出るとともに、関節が痛くなっていくことがポイントになります。

夏場には熱中症による発熱も
――夏には、熱中症も発熱疾患として多いと思いますが、COVID-19と見分けるポイントはありますか。

 夏場には、「自分はコロナもしくは熱中症かもしれない」と心配して来院される方が多くいました。炎天下で海に行ったり、スポーツ観戦をしたりした後に、熱が出たというケースです。熱中症かもしれませんし、あるいは、人混みの中で新型コロナウイルスに感染したのかもしれません。どちらの場合でも、熱が出たり、体がだるくなったりしますので、熱中症とCOVID-19を身体所見のみで見分けるのは難しいですね。

 熱中症では、COVID-19の上気道炎の症状、咽頭痛や咳はありません。熱中症で脱水状態になっていると尿が出ないので、ちゃんと尿が出ているかどうかや、前日に取った水分の量などを聞きます。あとは診察で舌が乾いていないか、皮膚が脱水の所見になっていないかなども見ていきます。

 冷房を嫌う高齢者では、室内での熱中症も起こり得ます。高齢者は「喉が渇いた」という感覚を感じにくいという特徴があり、水分を丸一日、ほぼ飲まないこともありますので注意が必要です。

さまざまな発熱疾患
薬剤による発熱も多い
――薬の副作用による「薬剤熱」も多いそうですね。

 薬剤熱は、実際には投薬をやめてみないと分からないでしょう。発熱の原因が本当に分からないとき、いろいろと検査をしても全く異常がないときは、薬をやめてみることを考えます。そして実際に熱が下がったら、薬剤熱だったということになります。

――どのような薬が薬剤熱を起こしやすいのでしょうか。

 一般的には、抗痙攣薬や、痛風・高尿酸血症治療薬のアロプリノールは薬剤熱を起こすことで有名です。他には、抗生剤、抗真菌薬、利尿薬、インターフェロン、抗うつ薬で熱が出る方もいます。血液検査をしてみて、好酸球の分画が多いと、アレルギー的な要素からの薬剤熱の可能性があるので、薬をやめてみることもあります。

――薬剤熱の特徴には、比較的徐脈、比較的元気、比較的CRP低値の“比較三原則”があるそうですね。

 比較的徐脈というのは、熱の割に脈が高くないことを言います。例えば、普通38℃の熱が出ていたら、脈は110-120程度に上がりますが、脈拍が70ぐらいしかない場合、比較的徐脈ということになります。

――精神神経用薬による副作用(悪性症候群)でも高熱が出る場合があるそうですね。

 抗精神病薬やパーキンソン病の治療薬をよく使う精神科や神経内科などで見られます。私の外来では経験がなく、一般的なプライマリ・ケアではあまり見る機会はないかと思います。ただし、パーキンソン病の治療薬を飲んでいる方の場合は、気にしておく必要があります。

結核にも注意が必要
――プライマリ・ケアでよく出合う発熱疾患には、他にどのようなものがありますか。

 尿路感染症もよくありますね。膀胱炎では熱は出ませんが、細菌感染症が腎臓に及び、腎盂腎炎になると熱が出ます。実は先日、「熱が2日ぐらいあって、すごくだるい。背中を少し叩くと痛い」という患者さんが来院されました。本人はコロナだと思って来られたのですが、尿検査をしたら炎症所見が強く、腎盂腎炎の診断でした。抗菌薬の内服で改善しました。

――尿路感染症を疑ったのはなぜでしょうか。

 その方はまず、上気道症状がありませんでした。また、発熱に加えて頻尿の症状があり、排尿後に軽い痛みと残尿感がありました。また背中に叩打痛がありました。そこで尿検査と血液検査をして、炎症の値が高かったので、腎盂腎炎と診断したのです。

――他に注意すべき発熱疾患は何かありますか。

 胆嚢炎、胆管炎も熱が出ます。胆嚢と胆管は右の上のおなか、右の季肋部にありますから、胆嚢炎、胆管炎では、そこがすごく痛くなるというのが特徴です。熱も出ますが、強い痛みがありますから分かりやすいでしょう。

 他には、高熱が出る甲状腺の疾患に、亜急性甲状腺炎があります。これは甲状腺機能亢進症と誤診しやすいので注意が必要です。甲状腺ホルモンの値が高いときに発熱があると、亜急性甲状腺炎の可能性があるので気を付ける必要があります。

 まれですが、結核も注意が必要です。いまだに日本は結核の中蔓延国です。当院でも先日、結核患者の接触者ということで、検査目的で来院された方がいました。結核も発熱、体のだるさ、リンパ節の腫れなどの症状があります。

 他に発熱疾患として見逃しやすいものには、副鼻腔炎、悪性リンパ腫、リウマチ性多発筋痛症、悪性腫瘍、血管炎、膠原病などもあります。熱が続くような場合は、発熱疾患の鑑別の中に入れるとよいでしょう。

――発熱疾患と言っても本当にさまざまなものがあり、鑑別は難しいのですね。

 コロナ下でも、「目の前の患者さんはコロナ以外の疾患かもしれない」と考えて、経過や病歴をしっかり聞き、他の発熱疾患を否定するための身体所見を一つ一つしっかり取っていくことが、非常に大切なことだと言えるでしょう。

投稿者: 大橋医院

2022.01.25更新

米国は創意工夫の国です。この特徴は、毎年付与される特許の量が最もよく表しているでしょう。例えば、2020年の実用新案申請件数は597,175件、付与件数は352,066件となっています。実用新案(発明特許)は、新しいまたは改良された製品、プロセス、または機械の作成を含み、外部の利害関係者が許可なく侵害することを禁じています。多くの人が特許といえば、実用新案のことを指しています。

※この記事は、M3 USAが運営する米国医師向け情報サイトMDLinxに2022年1月6日に掲載された記事「These 4 physician inventors changed medicine forever」を自動翻訳ツールDeepLで翻訳した記事となります。内容の解釈は原文を優先してください。

 医師の中には、臨床や病態生理に精通しているだけでなく、優れた機械的頭脳を持っている人も少なくありません。ここでは、4人の偉大な医師の発明をご紹介します。

フリオ・C・パルマズ博士
 バルーン拡張型ステントのない世界を想像してみてください。何百万もの冠動脈バイパス手術が行われ、致命的な心臓発作や脳卒中が発生していたでしょう。アルゼンチン生まれのフリオ・C・パルマズ博士は、90年代にこの革新的な技術を開発し、世界中の何百万人もの患者さんを救いました。

 91年、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の1億ドルの投資により、パルマズステントは末梢動脈への使用が認められたました。瞬く間に冠動脈用として承認され、ステント市場の90%を独占することになりました。その結果、ジョンソン・エンド・ジョンソン社はパルマズ氏らの所有権を買い取りました。

 その後、ボストン・サイエンティフィック社やメドトロニック社などとの競争で、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の市場シェアは5%以下にまで落ち込みました。法廷で12年間争った結果、ジョンソン・エンド・ジョンソン社は侵害訴訟で勝訴しました。

 冠状動脈、末梢動脈、気管、尿道などに毎年200万個以上のステントが埋め込まれています。

 パルマズ氏は生涯で20件以上の特許を取得し、2002年には国際血管内手術学会の栄誉賞、2006年には全米発明家の殿堂入り、2013年には全米発明家アカデミー入りを果たすなど、大きな評価を受けています。彼の先駆的なステント研究は、スミソニアン協会の永久医療コレクションに含まれています。

 現在は、カリフォルニアのナパバレーにパルマズ・ヴィンヤードを所有し、ワインメーカーとして活躍しています。

メフメット・オズ博士
 オズ氏は、2000年から放送されている自身の名を冠した番組でよく知られています。しかし、メディアでの活躍に加え、心臓血管外科医、大学教授、最近では上院議員候補でもある彼は、心臓疾患の管理を一変させたMitraClipの発明者でもあります。

 1996年、イタリアで開催された医学会議に出席したオズ氏は、1本の縫合糸で僧帽弁閉鎖不全症(MR)を予防できることを知りました。このアイデアに触発されたオズ氏は、心不全患者の多くが病気のために受けられない開胸手術ではなく、カテーテルを留置するだけの低侵襲なアプローチを開発しました。

 MitraClipの適応は、手術を受けられない原発性MR、または症状があり、薬物療法に抵抗性のある二次性MRと心不全の患者さんです。2020年1月現在、MitraClipは世界で10万人の治療に使用されています。

 NEJM誌に掲載された臨床試験の結果によると、MitraClipは、その使用が適応となる患者において、安全かつ有効であることが証明されました。実験群302名、対照群312名の患者を対象とした本試験では、24ヶ月以内の全入院率(年換算)はそれぞれ35.8%、67.9%、24ヶ月以内のあらゆる原因による死亡率はそれぞれ29.1%、46.1%でした。さらに、デバイス関連の合併症からの解放率も予想以上に高いものでした。

レネ・テオフィル・ヒアシン・ラエンネック博士
 ラエンネック氏は、1816年に聴診器を発明したフランスの医師です。聴診器を使って心音や肺音を評価し、それを解剖時の病理観察で裏付けました。後に、聴診器の使い方についての画期的な著作「De L'auscultation Mediate (On Mediate Auscultation)」を発表しました。

 「臨床聴診の父」と呼ばれるラエンネック氏は、気管支拡張症や肝硬変、肺気腫、肺炎などを初めて記述しました。彼の作品に関連して、さまざまな臨床用語が医学用語集に導入されました。

レイモンド・ダマディアン博士
 人間の細胞から出る電波を利用して体内を撮影するMRIほど便利な診断機器はありません。2001年、レイモンド・ダマディアン博士は、この技術でレメルソン-MITプログラムから生涯功労賞を受賞しました。

 ダマディアン氏は、サニー・ヘルス・サイエンス・センターの教授時代に、同僚と一緒に核磁気共鳴(NMR)装置を使ってカリウムの沈着をマッピングしました。ダマディアン氏はすぐに、この技術を使って体の組織を可視化し、病気を特定することに目を向けました。

 ダマディアン氏は1977年に最初のMRスキャナーを開発し、その開発に7年の歳月を要したことから、MRスキャナーを「Indomitable」と名付けました。ダマディアン氏は体が大きすぎて装置に入りきらなかったため、助手が最初のスキャンを受けたといいます。最初のMRスキャナーは、1980年に発売されました。

 ダマディアン氏は、MRIに関連する45以上の特許を持っています。興味深いことに、彼は唯一のスタンドアップ式MRIを発明しました。彼のキャリアの中で、彼の会社は特許侵害の様々なケースを追及してきました。

投稿者: 大橋医院

2022.01.24更新

 『クラスター 五輪の夏の墓標』(一粒書房)。その帯には『想像を超える悲劇は静かに始まった』との文字が躍る。著者は診療所やグループホームなどを経営する医療法人理事長で医師の村澤武彦氏だ(ペンネーム)。自身の実体験を基に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のクラスターの惨状を克明につづった小説だ。

 「文学賞に応募し、受賞したら出版」という心づもりだったが、「第6波の急激な感染拡大を前に、選考失格を覚悟の上で緊急自費出版した。医療介護の現場で起きるクラスターの悲惨さを国民に広く伝えたかった」と語る。クラスター発生の経営的なダメージは続き、いまだ風評被害の懸念も残る中、自費出版に踏み切った思いを村澤氏にお聞きした(2022年1月17日にオンラインでインタビュー。全2回の連載)。

――当初、文学賞に応募する予定だったものの、緊急的に自費出版に切り替えたとのことです。

 知り合いのある作家から、「とにかく文学賞を取らないと、小説家としてやっていけない」と指摘されていたのです。小説を書き始めたのが2021年8月のお盆頃。それから2カ月ほどかけて原稿用紙にして約600枚分書きました。けれども、10月に応募した文学賞の結果が出るのは4月。そこで受賞しても出版までには半年、1年かかるでしょう。第6波が来ることも想定される中、それでは意味がないと考えるようになり、「もっと早く出版にこぎ着けることができる賞を」と探して別の賞への応募に切り替えましたが、そもそも受賞できる保証はありません。

 「小説家になりたい訳ではない。今回の経験をとにかく世間に知ってもらうことが僕の役割」

 そう考え、一番早く自費出版してくれそうなところを探して、原稿を送ったところ、そこの社長が「一晩で一気に読み上げた。とにかくこれはすごい」と評価してくださった。本が完成したのは1月11日、僕の手元に届いたのが1月12日です。

――先生のグループホームでクラスターが発生したのが、ほぼ1年前。その後、先生ご自身が新型コロナに罹患し、入院されています。クラスターの収束まで約50日とのことです。何らかの形で記録に残すことを考え始めたのはいつ頃なのでしょうか。

 小説の中でも2カ所書いていますが、最初はクラスターが収まりかけた頃が最初です。収束後、保健所には事実関係を詳細にまとめた資料を提出したのですが反応はなく、改めて事実を伝えなければと思ったのが2回目です。

 僕は入所者や職員に多数の感染者が出たグループホームの経営者として、逃げ場のない環境で職員と一緒に新型コロナと闘った。その過程で自分自身が新型コロナに罹患して入院。しかも、高齢の父を新型コロナで亡くして、死に目には会えませんでした。実にいろいろな立場を経験しています。新型コロナを題材とした小説は他にもありますが、いくら取材を重ねても、今回の僕が経験したことの全てを分かり得ないでしょう。僕でなければ書けないこと、伝えられないことがある――。何らかの形で記録として残す必要があると考えたのです。

――グループホームでは、感染者を施設内で対応するのは難しい。

 一口に介護施設と言っても、その種類はさまざまです。老人保健施設や特別養護老人ホームは、スペース的に余裕があり、感染者が出ても施設内での隔離は可能でしょう。常勤医や嘱託医、看護師などもいます。

 これに対して、グループホームには、もともと医師や看護師はおらず、認知症でマスクを着けるのを嫌がったり、徘徊したりする高齢者がいるわけです。それでも感染者が見つかっても、行政からは「施設内で診てください」「患者さんが死にそうになったら、連絡をください。入院先を探しますから」などと言われてしまった。ホーム内では各種検査やモニターなどはなく、多人数への酸素投与やできる治療法もなく、ただただ見守る以外になかった。

 職員も感染したり、濃厚接触者になったりして、1人、2人と離脱していく。行政から紹介されたところに依頼しても応援には来てもらえない。少ない職員で食事を含め生活全てを支えなければいけない。お弁当を頼んでも、グループホームには直接届けてくれない。トイレが壊れても、業者は感染を恐れて直しには来てくれない――。本当に逃げ場がなく、誰も助けてくれない悲惨な窮状に陥っても、働き続けなければいけない職員も、あくまで一市民。専門的なトレーニングを受けた自衛官とは違います。僕は経営者として「職員を守りたい」と思う一方、リスクを感じながらも仕事を続けてもらわなければいけなかったのです。

 僕は新型コロナの感染が始まった2020年当初は、メディアなどでも感染対策について解説していたりしていました。そのとき、「患者が一人でも出たら、グループホームは全滅しかねません」などと感染の怖さも語っていました。その懸念が、まさに自分の施設で現実のものになってしまったのです。

 確かに新型コロナの重点医療機関で重症患者を診るのは大変なことです。しかし、対象とするのは既に新型コロナと診断が付いている人。それに対し、介護施設などでの感染は、感染源は分からず、静かに始まり、気づいた時にはあっという間に広がってしまう怖さがあります。その上、医療機関には新型コロナ対策の各種の補助金がありますが、介護施設にはないという違いもあります。

 人も、お金も出さないが、新型コロナの患者は施設内で診てほしい――。いったん新型コロナのクラスターが発生したら、グループホームなどの介護施設は、厳しい状況に置かれることを、政治家も、行政も、医療者も、市民の方々も、実はご存じではないでしょう。政治家や行政には、実際に現場で起きていることを理解した上で、本当に弱い立場にある人を守ってほしいということです。

 僕はワクチン接種が進み、新型コロナの治療薬が使えるようになった今、オミクロン株の感染であっても、社会活動を止めるべきとは思っていません。しかし、要介護者や透析を受けている人など、「弱い存在」はなかなか世間には気づかれにくい。ぜひとも本書を読んで、その存在に思いをはせて、日頃の行動に気を付けていただきたいということを訴えたい。

――先生の診療所から派遣した看護師3人のほか、先生ご自身も感染してしまった――。

 当法人の診療所やグループホームの感染対策のレベルは、むしろ高い方だと思います。それでもちょっとしたことで感染してしまうのが、新型コロナの怖さです。うちの特殊な事情ではなく、どこでも起こり得ることなのです。

 僕の場合、クラスター発生後、グループホームに入ったのは実は数回だけ。恐らく感染したのは、入所中の父が新型コロナと診断される数時間前に会った時だと思います。眼鏡をかけているためにゴーグルはしていなかったものの、それ以外の全ての予防策を取り、診察していました。ただ、父が2度立て続けに咳をした時、微細な唾液がフェースガードの隙間から入り込んできたように感じました。それで目から感染したのかもしれません。

――では今後、グループホームでクラスターが発生した場合、どんな支援があり、どう対応すればいいとお考えでしょうか。認知症高齢者は、環境が変わると認知症自体が悪化するとの指摘もあります。

 当初、病院から受け入れが断られるのは、「介護する能力がないから」という理由でしたが、僕のグループホームで感染者や死亡者が相次いだ後は、入院を受け入れてくれるようになりました。しかし、認知症が悪化したとかなどの連絡は受けていません。そもそも新型コロナで呼吸器症状が出ている中で、徘徊するといった元気すらなくなっていたのです。

 一方で、グループホームなどの介護施設には「医療を提供する能力」はありません。介護施設では、一人でも陽性者が発生したら、まずは入院させることです。確かに今はオミクロン株に置き換わり、重症化率は低くなっていますが、今でもこの点は変わらないと思います。

 さらに保健所や医療機関は仲間であり、一緒に闘うという姿勢が必要。僕も最初、「保健所はなんて冷たいんだろう」と思ったこともあります。しかし、保健所は保健所なりに頑張っていて、こちらが依頼しても対応できなかったのは、それが限界だったことに早々に気づきました。医療機関同士も、「患者さんを受け入れてくれない」とかお互いに恨み事を言いがちですが、そんなことを言っている場合ではありません。お互いに仲間として情報共有などもしつつ、高め合い、対応していくことが必要です。

 マスコミの姿勢も見直してもらいたい。医療批判ばかりしないでいただきたい。確かにごく一部には新型コロナ対応に消極的な人がいますが、大多数の人は家族も顧みずに、クラスターが発生してもそこから逃げずに頑張っている現実をぜひ見ていただきたい。

 今の日本の医療現場は本当にギリギリのところで仕事をしているので、クラスターが発生して職員が1人でも欠けたら、対応できる余裕がなくなってしまいます。警察、消防、自衛隊などは有事に備えて、平時からトレーニングしたりしています。それと同じ考え方で、中長期的には、感染症対応などに特化した自衛隊医官をつくり、普段はトレーニングや海外支援をしながら、国内でクラスターが発生した医療機関に支援に入る仕組みなども必要です。大規模なクラスターを経験してみて、本当に欲しかったのは、人的緊急支援でした。

投稿者: 大橋医院

2022.01.22更新

新型コロナで入院した患者を対象に未解明だったスーパースプレッダーの決定要因を検討

 東京医科歯科大学は1月17日、新型コロナウイルス感染症のPCR検査で高いウイルスコピー数を有し、周囲への感染を拡大するスーパースプレッダーと呼ばれる患者の決定要因について明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男教授の研究グループと、同大救急救命センター、同大臨床検査医学分野との共同研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Infection」オンライン版に掲載されている。

 新型コロナウイルス感染症の診断にはRT-PCR検査が重要な役割を果たし、同検査によりウイルスコピー数の定量的な評価が可能となる。2003年のSARSあるいは2012年のMERS流行時から、全ての患者が等しく感染を広げるのではなく、高いウイルスコピー数をもつ特定の患者が特に感染を広げていくことが知られていた。これらの患者はスーパースプレッダーと呼ばれ、新型コロナウイルス感染症においても高い感染力と死亡率をもつことが知られている。スーパースプレッダーを早期に同定することは、治療および周囲への二次感染の拡大防止の観点から重要だが、これまでスーパースプレッダーの決定要因については解明されていなかった。

 研究グループは今回、2020年3月~2021年6月までに、中等症から重症の新型コロナウイルス感染症で東京医科歯科大学病院に入院し、少なくとも1回以上RT-PCR検査が行われた患者379人を対象とし、スーパースプレッダーを特定する要因について検討を行った。

糖尿病、関節リウマチ、脳梗塞の既往がリスクになると判明

 入院患者の電子カルテの情報をもとに、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・関節リウマチ・がん・慢性腎不全・脳梗塞・心疾患・呼吸器疾患・アレルギーなどの既往歴について調査を行い、分析した。

 年齢や性別、喫煙歴で調整した分析の結果、上記の既往を3つ以上重複して有する患者では、既往のない患者と比較して、ウイルスコピー数が87.1倍(95%信頼区間5.5,1380.1)高くなることが明らかになった。また、糖尿病患者では17.8倍(95%信頼区間1.4,223.9)、関節リウマチ患者では1659.6倍(95%信頼区間1.4,2041737.9)、脳梗塞患者では234.4倍(95%信頼区間2.2,25704.0)倍、ウイルスコピー数が高くなることが明らかになった。

 入院時の血液検査結果の解析では、入院時に血小板とCRPが低い患者は、高いウイルスコピー数を有することが明らかになった。さらに、複数回RT-PCR検査を行った患者を分析した結果、90%以上の患者が初回または2回目の検査で最大のウイルスコピー数に達していることが判明したという。

リスクが高い患者に対し、特別な感染管理措置を入院初期段階で講じる必要性

 現在、新型コロナウイルス感染症は再流行の兆しを見せているが、感染を広げる原因となり得るスーパースプレッダーを既往歴や入院時の血液検査の情報から特定することで、臨床医は個室で患者を隔離し院内感染を防ぐための注意喚起を行うなど、感染管理措置を取ることが可能になる。

 また、今回の研究により、スーパースプレッダーである可能性の高い患者に対しては、特に感染の初期において注意深い感染管理措置が必要なことが示された。「本研究は、新型コロナウイルス感染症におけるスーパースプレッダーの特徴を明らかにし、院内における二次感染の拡大を予防する可能性を示した」と、研究グループは述べている。

提供:QLifePro 医療ニュース

投稿者: 大橋医院

2022.01.21更新

新型コロナウイルス感染症の社会への影響
「産み控え」によって少子化が加速
――COVID-19による社会への影響のうち、最も懸念していることは何でしょうか。

 ネガティブな影響として、産婦人科医として一番気になっているのは「産み控え」です。メディア報道を見ていたら、「今は子どもを産むのは危ないな」と思うのがむしろ普通かもしれません。立ち会い分娩ができない、生まれても実家の母親に手伝ってもらえないなど、サポートも少ない中で、あえてお産をするというのは、普段と比べてさらに勇気が要ることです。「もう少しコロナが収まるまで様子を見よう」、「子供をもう一人と考えていたけどやめようかな」、そんな人たちが増えて、少子化がさらに加速しています。実際、母子手帳の交付数を見ると、コロナ禍において前年比で大きく減っています。

 当院でも、分娩数は最も多かった時期の3分の2くらいにまで減っています。2014年の年間3300件がピークでしたが、少子化に伴い漸減し、2021年から2000件を割り込んでいます。

 さらにいえば、コロナ禍では、出会いが少ないということもありますよね。もともと妊娠するには、誰かに出会わなければいけないわけですから。

 人口という視点はともかく、子どもを持ちたい人が、安心してお産や子育てができる環境作りは、行政任せにするだけではなく、家庭、職場、地域、官民、あらゆる立場から知恵を出し合うべきことだと思いますね。

――確かに少子化への影響は心配ですね。

 コロナ禍でのポジティブな影響としては、よくいわれているように、ウェブでの会議や学会などの普及の突破口となったことがあると思います。私は厚生労働省や日本医師会などの審議会や会議などの業務もたくさんあって、休みを取って抜けるのにこれまでは調整が必要でしたが、今は移動が不要でとてもありがたいです。

 ウェブ会議では「手を挙げる」というボタンを押せば、発言しやすいのもいいですね。重鎮の方々が居並ぶ中でも気後れせずに発言しやすくなります。多様な立場の人が意思決定に参加できる可能性を開いたと考えるべきで、会議の在り方がより良い方向に進むことを期待したいと思います。最近はリアルの会議に戻そうという動きもあって、ちょっと懸念しています。子育てや介護、遠隔地にいるなどの理由で学会に参加できなかった人たちが、都合のよいときにオンデマンドで勉強でき、離れていてもオンラインで討論に参加できる機会の確保は、ダイバーシティの観点からも欠かせないことで、多少コストがかかったとしても今後もなくすことなく、むしろ拡充していくべきだと思います。

コロナの影響のしわ寄せが研修医に
――COVID-19に関係するご自身の経験の中で、2021年で一番印象深かったことは何でしょうか。

 私は厚労省の社会保障審議会医療部会や医道審議会医師分科会などに臨床医の立場から委員として参画しております。医師の偏在や働き方改革の問題など医療提供体制や、臨床研修医をいかに地方に増やしていくかなど、そういった政策にも関わる内容です。

 コロナ禍では、研修先を選ぶために医学生が地方から東京に病院見学に来て、地元に戻ったら2週間隔離になるので登校できない、そもそも県境を越えての移動は禁止、などさまざまな制限がありました。身近なところでも息子の話で恐縮ですが、マッチングで地方の臨床研修病院を希望していましたが、東京の大学から地方に移動できないことになったため、病院見学も試験も研修前の打ち合わせも全てオンラインでした。幸い希望通りマッチングできましたが、採用する側も応募する側も直接訪問による面識がないだけに不安は大きいと思います。赴任の際も隔離期間があるため早めに現地入りしたり、研修前にPCR検査を受ける必要があったり、いろいろと大変だったようです。

 当院でも地域研修のため、都外に後期研修医を派遣しているのですが、いったん現地入りしたら、しばらくは東京に戻らないようにと言われた例もありました。コロナ禍の影響は決して均等ではなく、社会全体から見ても非正規労働者など弱い立場の人の生活に深刻な影響をもたらしたといわれています。医療界においてもそうした傾向はあり、特に医学生や研修医など若手に学習、研修、進路を含め、多大な影響が出ていると思います。影響を最小限にとどめるための丁寧なフォローが必要です。

 そういう不便を押してまで都会から地方に出向くのは、コロナ禍でさらにハードルが上がります。親元にとどまりたい、親も手元に置いておきたいという希望も、近年は少なくありません。医師の偏在の問題や、地方の研修医を増やすことは、そういうことまで考慮すると、とても難しいと思います。

 災害支援などもコロナ禍ではこれまでと異なり、遠方から支援に入りにくくなりました。医師偏在問題を考える上で、若手だけに負担が行かないような配慮が大切だと思います。変化する医療ニーズにどのように供給側が対応するのか、その仕組み作りの必要性が今回のコロナ禍でより鮮明になったと思います。

ICTを活用して妊産婦をサポート
――これからのwithコロナ時代、医療はどのように変わっていくと思われますか。

 コロナ禍では、患者さんの面会ができない、分娩の立ち会いができないといった、家族との関わりが絶たれてしまう問題が多くの病院で起こりました。おじいちゃん、おばあちゃんが赤ちゃんを見に来るといった、そういうほのぼのした風景が見られなくなり寂しいです。患者さんが少しでも家族とつながりがもてるようオンライン面会など、ICT(情報通信技術)を活用していくことが始まっており、ぜひ期待したいところです。

 当院では、コロナ禍においてオンラインで母親学級や両親学級も始めました。ベビーカーはこれが使いやすくお薦めだとか、ちょっとした心配ごとを語り合えるとか、そういう情報交換は実はすごく大切です。そういった機会がコロナ禍で失われるのはもったいなく、母親の孤立にもつながってしまいます。何らかの方法で孤立を少しでも防ぐようにしないと、妊産婦さんも安心して、妊娠、出産をしようという気持ちにはなりません。ICTを活用して妊産婦の相談に対応する取り組みなどもいろいろ始まっており、困っている人、悩んでいる人が1人でも救われることが期待されます。

投稿者: 大橋医院

2022.01.20更新

ワクチンや抗ウイルス剤などをかいくぐる病原体の特徴は?

 総合研究大学院大学(総研大)は1月17日、A型インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどの病原体に焦点をあて、その感染力や病原性の進化を数理モデルで解析を行い、理論解析の結果、免疫やワクチンからの逃避を繰り返す病原体では、感染宿主をより激しく搾取し、疾病を重篤化させる方向への進化が起きやすいこと、つまり、より強毒化する一般的傾向があることが明らかになったと発表した。この研究は、総研大先導科学研究科の佐々木顕氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Ecology and Evolution」に掲載されている。

 中世のヨーロッパの人口を半減させた黒死病や、第一次世界大戦末期から全世界を席巻したスペイン風邪の流行などの歴史を紐解くまでもなく、伝染病の流行は人類にとっての重大問題であり続けてきた。新型コロナウイルスに翻弄されている現在の状況を見れば、これはことさら強調する必要もないほど明らかだ。人類に大きな脅威をもたらし、喫緊の対策を迫られる災禍はさまざまあるが、こと伝染病への対策に対しては、災禍をもたらす側からの「反撃」があるというのが厄介な点だ。

 伝染病を引き起こす病原体は、急速に巧妙に進化する能力に長けたウイルスや細菌や原生生物などの微小生物だ。そのため、病原体への対策が、それを凌駕する病原体の対抗進化を引き起こしたり、病原体をより強大な敵に育ててしまう危険性もある。実際に、病原性細菌に対する抗生物質投与が、耐性菌の進化につながり、それに対する複数抗生物質の同時投与という新たな切り札が多剤耐性菌の進化をもたらした。

インフルエンザA型ウイルス、新型コロナウイルスなどの病原性の特徴を数理モデルで解析

 研究グループは、免疫機構をかいくぐり、最新の科学技術が生み出すワクチンや抗ウイルス剤などをかいくぐる病原体に着目。その感染力や宿主に対する病原性の進化の特徴を、数理モデルを用いて一般的に予測することを試みた。これまで、免疫やワクチンからの病原体の逃避と病原体の毒性とが同時に進化する場合に何が起こるかについては、理論的に全く解明されていない状態だった。

 具体的には、宿主免疫系との相互作用のもとで抗原性と毒性という複数の病原体形質が、どのように同時進化するのかという問題に、量的形質の遺伝学と適応進化の動態とを統合する新理論体系(オリゴモルフィック・ダイナミクス)を開発して適用することで、その予測を可能にした。この理論の解析により、免疫やワクチンからの逃避を繰り返す病原体では、感染宿主をより激しく搾取し、重篤化させる方向への進化が起きやすいこと、つまり、より強毒化する一般的傾向があることが明らかになった。

 生物が長い進化の末に獲得した、「獲得免疫システム」の根幹は免疫記憶にもとづく免疫応答にある。この獲得免疫のおかげで、通常の病原体による伝染病では、宿主は最初に感染した際には重い症状に苦しんだとしても、回復すれば同じ病気にはかからないですむ。ところが、インフルエンザA香港型(A/H3N2)やAソ連型(A/H1N1)ウイルスは、この獲得免疫系による防御に関係なく毎年流行を繰り返し、同じ人が何度もA香港型やAソ連型に感染してしまうといったことが起きる。これは、これらのウイルスに免疫が働かないわけではない。宿主は「全く同じ」A型インフルエンザ株には感染しないが、ウイルスの方が、自らの姿を変え、免疫系の警戒網(交差免疫)をかいくぐってしまうためだ。

 そこで研究グループは、新型コロナウイルスのように流行の拡大と変異株交代が同時進行する病原体や、インフルエンザA型ウイルスのように、毎年のようにウイルス表面抗原タンパク質を変異させて宿主免疫系から逃げ続けるような病原体の、宿主に対する感染性の強さや病原性の強さはどういう方向に進化しやすいのかについて数理モデルで調べた。

宿主にとってより重篤な症状をもたらす方向へ、進化の行き先がシフトする傾向

 その結果、このような病原体では、普通の病原体で進化する感染力や病原性のレベルを大きく超えて、宿主にとってより重篤な症状をもたらす方向へ、進化の行き先がシフトする一般的傾向があることがわかった。その理由として、宿主免疫系やワクチン投与から逃走し続ける状況では、宿主をうまく利用してトータルで多くの子孫を残すことよりも、宿主を早々に使い捨ててでも早く増えられるものが有利になるからであると考えられた。トータルの数では損をしても、逃走のスピードに優れる株は、結果として、免疫系の包囲網から早く抜け出すことができる。一方、ゆっくり数を稼ぐ株は、数を稼ぐ前に免疫系に飲み込まれてしまうと考えられる。

病原体の進化ダイナミクスへの介入が鍵となる可能性も

 今回の研究成果により、「免疫やワクチンからの逃避を繰り返す病原体は、より強毒化もしやすい」という特徴が明らかにされた。また、病原体の免疫からの逃走や、強毒化のダイナミクスについての解明もかなり進んだと言える。研究グループは、免疫やワクチンによる病原体包囲網に対して、病原体の側が急速に巧妙に対抗進化してくるとしても、これらの理論的知見を生かして病原体の進化ダイナミクスに介入することにより、言い換えれば「追い込み方」を洗練させることで、病原体の対抗進化のスピード、さらには、その逃避の成功の可否をも変えることも将来的には可能になると考えている、としている。

投稿者: 大橋医院

2022.01.19更新

コロナ禍で感じる変化
「医療への目がだんだん厳しくなっている」
――先生にとって、今回のCOVID-19パンデミックで受けたポジティブな変化、ネガティブな変化があれば教えてください。

 ポジティブな変化は、自分が呼吸器内科医として現役のときにこのような世界的に問題となるような感染症に思い切り遭遇したことでしょうか。なかなかできない経験ですよね。大変なこともありましたが、おかげさまで医療界以外のいろいろな業界の方とを知り合えましたし、世の中がいろいろな人や組織によって動かされているのだなということが実感できたことは貴重でした。

 ネガティブな面は……そうですね。医療や医学に対する一般の人の目が冷たくなった気がすることでしょうか。最初は「コロナの最前線で闘ってくれてありがとう」みたいな感じだったと思うのですが、だんだん「一体、あなたたちはずっと何やっているの?」という感じになってきている気がします。

 科学的に納得できる数字の話が少ないし、雰囲気で全てを決めているのかという感じになってきているというか。例えば、「これはなぜこうなるのか」ということを理論的に説明できるのかと言われたら、できないことも結構ある気がします。医療ではできないことははっきりできない、医学でも分からないことは分からないと言った方がいいかなと思うのですが。医療と医療以外の社会が今回、かなり密接に絡んだので、医療への目がだんだん厳しくなってくるのかなというのを心配しています。

――「医療への目が厳しくなっている」というご意見は少し意外でした。政策と医学・医療としての妥当性のバランスを取るのが難しいのだな、というのは一市民の立場からの感想ですが、そういったことでしょうか。

 全体的なことを考えるのは政治が決めるということですよね。僕らは医学・医療の中にいる人なので「医療現場からするとこういうことがいいと思います」ということですが、政治側の人は医学医療以外の社会のことを全部包含し考えないとならない。つまり全体を天秤にかけて、少しでも上に行く方を選ばないといけないと思うんですよね。51%賛成で49%反対だったら、賛成の側に進める。政治はそういうところを担っている。でも、医療者の僕らは「1人でも救いたい」というような、やや極端な議論に流れがちだなと。そうするとやはり、「医療としてはいいけども、社会全体としては通用するのか」という厳しい目が向くように思います。

2022年の目標
「自分のコロナ研究は終わり」
――最後ですが、2022年の目標を教えていただけますか。

 来年こそは研修医の先生たちの歓迎会をやりたいです。特に初期研修医の先生たちはここに来たのはもう2年前ですから、歓迎会ではなくて終わりの会になってしまう!(笑)。もう、謝るしかないですね。

――呼吸器内科の診療・研究面についてはいかがですか。

 それは今までと同じですね。臨床研究と診療を進めていく。肺がんや間質性肺炎、気管支喘息に重点を置いていくのは、コロナ禍前から変わりません。僕の中でのコロナの研究はもう終わりです。最後に、コロナ治療の近未来予想図をお見せしましょうか。

コロナ治療の近未来「発症早期の薬が中心に」
――ぜひお願いします。COVID-19治療薬は発音が難しい薬が多いですよね。

 舌を噛みそうな名前ばかりですよね。図の通り、点線より向かって左側、軽症から無症状の濃厚接触者に発症1週間以内に投与するような薬が今、どんどん開発されています。インフルエンザのオセルタミビル(商品名タミフル)予防投与のような感じです。重症化した後の薬はバリシチニブ、デキサメタゾン、レムデシビルからあまり変わっていない。製薬企業も、より軽症の人の人数が多いので開発も必然的にそちらがターゲットになります。

投稿者: 大橋医院

2022.01.18更新

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、妊産婦にも多大な影響を与えている。妊娠中の感染に対する不安や、ワクチンの胎児への影響に対する不安などを抱えながら、妊産婦たちは出産という人生の一大イベントに臨んできた。「withコロナ時代の医療2021◆産婦人科編」では、日本赤十字社医療センター第一産婦人科部長である木戸道子氏に話を聞いた。第1回は、産婦人科におけるCOVID-19の影響について。(聞き手・まとめ:m3.com編集部・髙嶋秀行/2021年11月18日取材、全3回連載)

コロナ禍での出産
入院できず自宅出産で赤ちゃんが亡くなったニュースに心を痛めた
――2020年と比較して、2021年のCOVID-19との関わり方について、何か変化はありましたか。

 個人的には昨年(2020年)同様、旅行や外食を控えるなど、自粛生活にはほとんど大きな変わりはありませんでした。ただ、やはり去年との違いとしては、東京では第5波の影響がかなり深刻でしたね。

 当院では、周産母子・小児センター長でもある宮内彰人副院長が病院全体の感染対策室の室長も務めています。副院長はかなり多くの業務を担っており、搬送の調整業務や、実際にCOVID-19陽性の方の帝王切開を行うなど、病院全体と産科の双方でリーダーとして大変だったと思います。

 災害医療体制となって産科にも専用病床をつくり、そこで呼吸器や感染症の専門医の先生と協働して治療を行いました。赤十字病院には、任務として「災害医療の対応」があります。COVID-19も一種の災害ですから、そういう意味で当院で対応するのは自然な流れでした。

――2021年のCOVID-19に関する国内外の動きで、一番印象に残ったことは何でしょうか。

 首都圏においては第5波で病床が逼迫したことです。千葉県で新型コロナウイルス陽性の妊婦の方が入院できなくて、自宅で早産したという報道がありました。その報道には産科医としてとても心を痛めました。搬送体制や情報共有が不十分で、その方がずっと不安な気持ちの中で自宅で陣痛に耐え、早産で赤ちゃんが亡くなったのは、本当にお気の毒だったと思いますし、医療の無力感がありました。

 当院でも、もともと呼吸器の合併症があるところに感染して重症化し、出産後も改善せず、転院先で残念ながら亡くなった方がいらっしゃいました。生まれたばかりの赤ちゃんと、まだ小さい上のお子さんを残して亡くなり、母親としてすごくつらかっただろうと、心残りだっただろうと、自分も母親の立場としてお気持ちを想像するだけでもつらいことです。せっかく新たな命を授かった方が、たまたまコロナ禍だったことで不幸な転帰となったことは、あまりにも不運です。

妊婦は分娩時もマスクを着用
――妊婦の方はコロナ禍でも、妊婦健診で病院に通う必要があるので大変ですね。

 当院ではコロナ禍の前から「セミオープンシステム」といって、当院で分娩予定の方も普段はご自宅の近くのクリニックで妊婦健診を受けることができるシステムを採用しており、多くの妊婦さんにご利用いただいています。救急時や分娩が近くなったら、大きな病院で対応する仕組みであり、既に全国各地でも行われています。そのような体制でしたので、コロナ禍でも、妊産婦さんはわざわざ交通機関を利用して大きな病院に毎回行かなくて済み、安心できたのではないかと思います。

 セミオープンシステムは、働き方改革にもつながります。外来対応する医師の人数を削減でき、交代勤務や当直明けに早く帰る仕組みが導入しやすくなります。クリニックと病院の役割分担で、クリニックでのきめ細やかな対応、アクセスなどの良さを生かせて妊産婦にも好評です。

――コロナ禍において、産婦人科ではどのような対応をされてきたのでしょうか。

 新型コロナウイルスによって万一、クラスターが発生し、スタッフにも感染すると、人員が不足して業務に支障が出ます。ですから少しでも体調が悪いスタッフがいれば、早めに休ませなければなりません。医療者は新型コロナウイルス感染が始まった当初から、「ユニバーサル・プリコーション」、つまり全ての方に対して、「感染している可能性がある」と考え、マスクやゴーグルなどを着けて診療を行っています。分娩時には妊婦さんも全員、マスクをしていただいています。息が上がるつらい時期で、余計に苦しくはなりますが、ほとんどの病院で同様の対応だと思います。

 当院では分娩や帝王切開においてパートナーの立ち会いを今も行っていますが、コロナ禍では立ち会いを行わない施設がほとんどです。産婦が出産を独りで迎えなければならないことは、出産は妊娠から始まる2人の営みであるという原点に立てば、本来望ましくないことです。できるだけ感染防止に注意しつつ、パートナーと一緒に子どもを迎える形に戻していくことを考えるべきだと思います。

 コロナ禍においては、母親学級などもほとんどの施設や自治体で中止になっており、他の妊婦さんともあまり交流できません。出産後、自宅に帰っても実家の母親など家族に手伝いに来てもらうことも難しいですし、本当に妊産婦さんたちは厳しい状況に置かれています。

コロナ陽性の場合は原則、帝王切開の病院も
――新型コロナウイルス陽性の妊婦さんの場合、分娩の際の激しい呼吸による感染の防止などのため、経腟分娩が可能でも原則、帝王切開を行う病院が多いそうですね。

 そうですね。感染拡大防止のため、やむを得ない場合も多いと思われます。ただ、妊婦さんの立場からすると、コロナ陽性というだけで帝王切開になるのは、時期が悪く不運だったということで片付けられないようにも思います。

 当院でも必要な状況であれば帝王切開を行いますが、分娩までの時間がどのくらいかかるか、その間にスタッフのケアがどれくらい必要かといった状況を踏まえてチームで相談し、分娩方針を考えます。例えば、経産婦さんで比較的分娩まで時間がかかりそうもなく、順調に進行する見通しの場合は、経腟分娩となるようサポートしています。実際、コロナ陽性の方でも、下から産んだ方もいらっしゃいます。

――なかなか判断が難しい問題ですね。

 もしクラスターが出て、病棟閉鎖や業務縮小を余儀なくされると、結局は妊産婦さんの行き場がなくなり困ってしまいます。母体搬送や母体救命対応も行う周産期センターが万一業務停止になったら、地域の周産期医療全体に大きな影響が出かねません。管理の面からいうと、感染拡大防止のためのさまざまな対策は、個別のケースのためだけではなく、全体のシステムを守るという視点からも必要です。

――出産後、母親が新型コロナウイルスに感染している場合、母子同室は避けられる傾向にあるそうですね。

 お母さんが陽性の場合や濃厚接触者の場合、同じ部屋で一緒にいる間に赤ちゃんに感染することもあり得るので、一定の隔離期間が過ぎるまでは赤ちゃんは新生児室で隔離し、その間は直接は会えません。

――その間は、赤ちゃんとお母さんが離れてしまうことになりますね。

 母子分離にならざるを得ません。産んでも赤ちゃんに会えないというのは、母子双方にとってつらいことですが、写真を撮ってお見せし、様子を日々伝えるなど、愛着を持って良い母子の絆ができるよう、できるだけのサポートをしています。

 母乳にウイルスが移行して感染を起こすという報告は今のところなく、逆に、母体の抗体が母乳を通じて赤ちゃんの感染や重症化を予防するともいわれています。ウイルスが付着しないよう注意して清潔に搾った母乳をあげることにはメリットがあります。お母さんが直接会えなくても、「赤ちゃんのために自分ができること」として搾乳をし、赤ちゃんに想いを届ける、そして隔離期間が過ぎれば直接授乳もできるようになるので、そのときに母乳がよく出る状態にすることで、育児に向けてよいスタートが切れます。

――コロナ禍では、妊産婦さんはよりナーバスになって、産後うつなどが助長されたのではないでしょうか。

 それは十分あり得ると思います。妊娠するだけでも、自分の体は変わっていき、生活、働き方、いろいろと変わっていくことに妊婦さんは対応しなければならなくなります。働く妊婦さんにとっては、保育園入園ができるかどうかも大問題で、女性は妊娠によって生活の基盤、その後の人生の方向性まで変わってしまうこともあります。

 そういった不安に加え、さらにコロナのこと、赤ちゃんや自分の感染の可能性も心配ですし、妊婦健診でパートナーと一緒に胎児の超音波画像を楽しむ機会もなくなってしまい、妊産婦さんの不安はもう何重にも増えたんじゃないかと思います。医療側にその不安を受け止めるだけの余裕がないまま、これまでコロナ禍で多くの制限が行われてきました。しかし、ここで一度現状を見つめ直し、妊婦さんの不安をサポートできるよう、まずは妊婦さんの声を丁寧に聞き、さまざまな意見を取り入れて、妊娠中から産後までの息の長いサポート体制のより良い在り方を行政とともに考えるべきだと思います。

ワクチン接種に対する不安を抱える妊婦
「情報は提供するが、接種の押し付けはしない」
――コロナワクチンに対して、妊婦さんの中には、胎児への影響などを懸念して受けたくない、という方も多かったのではないでしょうか。

 積極的に接種を受けたいという方もいれば、「いろいろ心配だから私は受けません」という方もいます。「接種を受けないことで何か不利益はありますか?」というご質問は、外来でよくお受けすることがありますね。

――コロナワクチンを受けたくないという妊婦さんには、どのような対応をされているのですか。

 ワクチン接種に関して記載してある日本産科婦人科学会のホームページをご紹介して、見ていただくなどしています。接種するかしないかはあくまでも個人の考えなので、「こういう情報がありますが、意思決定するのはご自身です」という形で、医療者側の考え方や価値観を押し付けることは基本的にはしていません。ワクチンの長期的な影響についてまだエビデンスがない中で、「接種は控えたい」という方も一定数いらっしゃるのが現状です。

投稿者: 大橋医院

2022.01.17更新

――現在の沖縄県立北部病院の状況を教えてください。

 稼働病床は257床あり、コロナ病床は全部で47床あります。救急は1日60~100件程度受け入れています。

 外来の制限等は行っていませんが、コロナ診療に当たっている一部の医師は電話で外来の診察を行っています。

 現在はコロナ病床のおおむね8割以上を使用しており、12日時点では45床、14日時点では40床が埋まっています。退院した分だけ新しい患者が入ってくる、という状況です。

――沖縄全体で医療従事者の感染や濃厚接触による欠勤が増えています。県立北部病院ではどのような状況ですか?

 14日時点で全650人(事務系も含む)の職員のうち、15人の感染もしくは濃厚接触が確認されています。ですが、そのうち3人は無症状かつ毎日の抗原定量検査で陰性を確認することで勤務を続けています。3人はコロナ対応だけでなく、その他の疾患の患者への対応も通常通り行っています。

 こうした濃厚接触者となった医療従事者の勤務を認める上では、ただ働かせるのではなく、しっかりと精神的なサポートをすることが重要です。

――厚労省は1月12日に医療従事者は濃厚接触者となっても一定の条件を満たすことで勤務を認めることを改めて再周知しました。

 周知を行うことは重要ですが、今後さらに感染が拡大していくことが予想される中では、この対応だけでは現場は回らないと思います。

 感染拡大が続き検査需要が増す中で、14日間も毎日検査をし続けることが現実的に可能かどうかの検討も必要ではないでしょうか。急性期病院であれば、そうした医療資源にも比較的恵まれているかもしれませんが、慢性期病院などでは事情が異なります。そうした医療資源の観点も、考慮する必要があると思います。

――11日からは自衛隊の看護官5人が県立北部病院に入っています。

 検査のサポートや患者搬送のサポートなど、通常は看護師がコロナ診療に対応しながら続けていた仕事を看護官の方たちに担っていただいています。現場の負担は確実に軽減され、非常に助かっています。

現在は入院患者の半数が65歳以上

――第6波の始まりを感じたのはいつ頃のことでしたか。

 この地域では、年末も比較的感染者は多い状況でしたが、やはり年始に入ってから状況が一変しました。元日の段階ではそれほど大きな波にはなっていませんでしたが、1月2日からは年末に陽性になった方たちの周りでどんどんと陽性者が確認され始めて、あっという間に感染が拡大していきました。

 年始は入院している人の多くが若い人たちでした。症状としては軽症に分類されますが、かなりぐったりとしていた人たちが入院しているような状況でした。ですが、ここ数日は高齢者の入院が増えています。

 今週に入って、高齢者が運ばれ始め、14日の時点では40人中20人が65歳以上です。感染者の年齢層が変化する中で、基礎疾患を持つ人や酸素吸入を必要とする人も増加傾向です。

――現在、入院している人はワクチン接種済みの方が多いのでしょうか。

 年末年始はワクチンを未接種の方が多い状態でしたが、現在では入院している患者のほとんどがワクチン接種済みです。未接種の方は5人のみとなっています。1月1日以降計87人が入院し、ワクチン未接種者30名、2回接種完了者は57名です。

「社会全体へ広がるのは時間の問題」

――これまでの感染拡大と比較して、どのような変化を感じていますか?

 これまでと感染拡大のスピードが違います。それが一番大きな変化です。同時に軽症の方の回復スピードはこれまでよりも早いと感じます。もちろん中等症や重症になれば、治療に必要な時間も長くなります。しかし、それ以外の軽症の方たちは症状が出るまでの時間も短く、症状が改善するために必要な時間も短くなっている印象です。

――高齢者についてはどうでしょうか。そちらも軽症の方が多い状態ですか。

 肺炎が確認され、酸素吸入を必要とする方は現時点ではそれほど多くはありません。COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの基礎疾患を持っていて、感染することによって酸素需要が増えるケース、あるいは食事を取らなくなってきて体調を崩すケースなどが見受けられます。

 デルタ株とは高齢者の病態も異なります。ただし、依然として高齢者にとっては危険な病気であることは間違いありません。

――急激に感染者が増える中で、入院できない方も増えているのでしょうか?

 これまでは、高齢で重症化リスクがある患者は経過観察のためにも入院をするという対応をしていました。しかし、そのような対応を続けることが難しくなってきています。既に高齢者施設での感染者が多く確認されています。全員を入院させることはできません。現在は症状が強く出ている患者を優先的に入院させています。

――先週の3連休、成人式の影響についてはどのように考えていますか?

 実は既に成人式の場で感染したと思われる方々が確認されています。今はその場に参加していた人の間で感染が広がっていますが、これからはその人たちの家族や職場で感染が広がると予想されます。社会全体へ広がるのは時間の問題です。

 今後は学校や家庭など、あらゆる場所で感染が広がっていく。デルタ株に比べて重症化しにくいとはいえ、感染者の母数が増えてくれば一定の割合で重症化する人が増えることを懸念しています。

投稿者: 大橋医院

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