大橋院長の為になるブログ

2021.03.18更新

嘔吐に強くなって患者を救え!

1)まずは心筋梗塞を除外せよ!

2)頭または内耳

3)腹部

4)全身疾患

忘れやすい嘔吐をきたす疾患
 妊娠悪阻は忘れた頃にやってくる。妊娠可能女性の場合は常に念頭に置こう。ヘタに薬を出して妊娠発覚後クレームが入るなんてよく聞く話。

 感染症は嘔吐する。肺炎や尿路感染、中耳炎でも感染症では化学受容体が刺激されて嘔吐する。糖尿病性ケトアシドーシスの腹部症状は有名。アルコールを大量に飲んだ後、おつまみをあまり食べていないとアルコール性ケトアシドーシスになり嘔吐する。水分とブドウ糖だけで治る。

 電解質異常も見逃されやすい。ルーチン検査でカルシウムやマグネシウムが入っていないと見逃すかもね。内分泌疾患でも嘔吐することがある。

 ありとあらゆる薬剤が嘔吐をきたすので、常に薬剤内服中は薬剤による影響を考えておく必要がある。循環器系薬剤のみならず、腸管蠕動を遅くする薬剤、痛み止め、抗菌薬なんでもござれ。治療域の内服でも嘔吐するときは嘔吐する。

 精神疾患でも嘔吐を主訴にやってくる。詐病の場合、オェーっとやるものの、全然吐物が出てこないことが多い。隣でゲロされると、もらいゲロをしてしまう、これも精神的原因がトリガーなんだよね。

 子ども(6カ月~5歳)ではケトン血性嘔吐症(低血糖、ケトン陽性)をよくみる。成人では周期性嘔吐症という病態がある。発症年齢は2~49歳に多く、一定期間数時間~数日持続して治る。ストレス、興奮、疲労、生理などがトリガーになる。腹痛合併が25%。片頭痛の合併が多く、発作時に片頭痛を認めるのが70%。

 比較的軽症の場合、イソプロピルアルコール綿の吸入のほうが、オンダンセトロン内服よりも制吐効果があったという報告もある。

熱いお風呂やシャワーで治る嘔吐 cannabinoid hyperemesis syndrome
 原因不明の頻回嘔吐が熱い風呂やシャワーで軽快するなら、snap diagnosisでcannabinoid hyperemesis syndrome(大麻悪阻症候群)といえる。症状軽減のために1日に4~5回もシャワーを浴びるという。

 マリファナはアメリカの一部の州では医療目的で合法となっている。日本では大麻、マリファナ、脱法ハーブなどで非合法的に手に入る…、って入っちゃダメでしょ! 外国の学生はけっこう遊び半分で手を出したことがあるらしく、WHOによるとカンナビスの生涯使用率は42~46%という。

 マリファナは本来制吐作用があるが、長期使用で嘔吐しまくる病態になり、検査をしても原因がわからないのだ。マリファナが原因だと言っても「長期使用していて今まで何ともなかったから、そんなはずはない!」とやめたがらないので治療抵抗性らしい。使用期間は2~5年が多い。マリファナを毎日使用している人が59%で、週に1~3回も20%を占める。吐きまくると心窩部痛も訴えるようになる。Cannabinoid hyperemesis syndromeの91%は熱い風呂やシャワーで症状が軽快する。マリファナをやめるのが一番だ。でも目の前でゲロゲロしていたらなんとかしたいよね。実はハロペリドールが奏効するという報告がある(Am J Emerg Med 31: 1003. e5-6、2013/BMJ Case Rep 2017 Jan 4; 2017)。

おおはしおおはし

投稿者: 大橋医院

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