眠りは生の一形式(養老孟司著の唯脳論の129ページ):
意識のあるなしを論じるときに、ふつうの人なら睡眠はどうかと考えるであろう。人間が意識という頭を持ったから、睡眠が「無意識」の形態であることは、おそらく気づかれていたに違いない。
ヘシオドスは睡眠を「死の兄弟」という。 しかし、睡眠についての基本的な考え方は、それよりもおそらくハムレットの方が正しい。眠りは死に類するというより、
生の特異な形なのである。睡眠は、ちょっと目にはいささか紛らわしいことがあるにしても、病的に意識のない状態、すなわち昏睡とはまったく異なっている。その生物学的な証拠は、
睡眠中枢の酸素消費にある。たとえ眠っていたとしても、脳のエネルギーの消費、したがって酸素の消費は減らない。レム睡眠の場合は、覚醒時より酸素消費が多いかもしれないという。
何故かはっきりしていないが、眠っている間にも、脳は、それなりにはたらいているらしい。