大橋院長の為になるブログ

2020.10.29更新

新型コロナは目に感染する:

新型コロナウイルスは主に呼吸器に感染するが、眼にも感染する可能性が指摘されてきた。こうした中、General Hospital of Central Theater Command(中国)のYing Yan氏らが、このことをより直接的に裏付けるエビデンスが得られたことを報告した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)からの回復後、間もない時期に急性の閉塞隅角緑内障を発症した中国の患者の眼の組織中に、新型コロナウイルスの存在が確認されたという。詳細は、「JAMA Ophthalmology」10月8日オンライン版に発表された。

 今回Yan氏らが報告した症例は、COVID-19の治療のために1月31日に入院した64歳の女性に関するもの。この女性は、入院の18日後に全ての症状が消失し、2月18日および20日に咽頭スワブを用いたRT-PCR検査で陰性が確認された。しかし、その約1週間後の2月28日から左眼の痛みと視力の低下が生じ、3日後、右眼にも同じ症状が現れた。3月8日に眼科クリニックに入院し、急性の閉塞隅角緑内障および白内障と診断された。しかし、薬物療法では眼圧を低下させることができなかったため、手術を施行。その際に採取した眼の組織を調べたところ、新型コロナウイルスが侵入していたことを示すエビデンスが得られたという。

 米国感染症学会(IDSA)のスポークスパーソンを務めるAaron Glatt氏によると、以前から新型コロナウイルスが眼に侵入するだけでなく、眼から新型コロナウイルスの感染が広がる可能性も疑われてきた。医療従事者がゴーグルやフェイスシールドで顔を保護するのは、その点を危惧してのことだ。

 とはいえ、Yan氏らが報告した患者が、眼へのウイルス感染を通してCOVID-19に罹患したのかどうかは不明だとGlatt氏は指摘する。ただ、空気中のウイルス粒子の眼への付着により、あるいはウイルスで汚染された手で眼を触ったことにより、感染した可能性は考えられるという。

 他にも大きな疑問点がある。眼の組織中に残ったウイルスが原因で、何らかの問題が起こり得るのかどうかということだ。この点について、米南カリフォルニア大学ロスキー眼科研究所のGrace Richter氏は、「眼の組織中の新型コロナウイルスが眼の健康状態にどのような影響を与えるのか、まだ明らかにできる段階にはない」と話す。同氏によると、現時点ではCOVID-19に罹患した患者で眼に問題が生じる例は限られており、白目の充血やまぶたの内側の腫れや充血、かゆみといった症状を特徴とする結膜炎を発症する患者がわずかにいるだけだという。

 一方、今回報告された患者は、急性の閉塞隅角緑内障と呼ばれる重篤な疾患に罹患していた。閉塞隅角緑内障は、眼の中の水(房水)が溜まることで急激に眼圧が上がり発症する疾患である。治療では、眼圧を迅速に低下させる必要があり、時には房水の循環を正常化させるために手術が行われることもある。

 ただ、Richter氏は、新型コロナウイルスが急性閉塞隅角緑内障の直接的な要因となるかどうかについては懐疑的だ。同氏は、一般的に眼の解剖学的な特徴(房水の排出口が狭い)から急性閉塞隅角緑内障を発症しやすい人がいることに加え、薬剤が原因で発症する可能性もあることを指摘。今回報告された患者も、入院治療を受けている間にさまざまな薬剤が投与され、それが原因で閉塞隅角緑内障を発症した可能性はあるとの見方を示している。

 米国眼科学会(AAO)のスポークスパーソンを務めるSonal Tuli氏も、この点について同意を示し、「興味深い報告ではあるが、眼の組織中に存在するウイルスが本当に感染力を持つのかどうかなど、さまざまな疑問が残されている」と指摘している。

 ウイルスがどのように患者の眼の中に入り込んだのかは不明としつつも、これらの専門家らは、眼を保護することの重要性を明確に示した報告であるという点には同意を示している。また、医療従事者はゴーグルやフェイスシールドを使用し、一般の人たちは手洗いの習慣を身に付けるとともに眼を触らないよう呼び掛けている。おおはし

投稿者: 大橋医院

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