開発途上の抗ウィルス薬:レムデシビル(米ギリアド)
レムデシビルはもともとエボラ出血熱の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬。コロナウイルスを含む一本鎖RNAウイルスに抗ウイルス活性を示すことが明らかになっており、COVID-19の治療薬として最も有望視されている薬剤の1つです。
米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)は4月29日、米国と欧州、アジアで1063人のCOVID-19患者が参加した臨床試験の予備的な解析の結果、レムデシビルはプラセボに比べてCOVID-19からの回復を31%早めることが示されたと発表しました。回復までの期間(中央値)はレムデシビル群が11日だったのに対し、プラセボ群は15日と有意に4日短縮。死亡率はプラセボ群11.6%に対してレムデシビル群8.0%と、有意差はつかなかったものの改善傾向が示されました。
ギリアドも同日、自社で行っている2本の臨床第3相(P3)試験のうち、重症患者397人を対象に行った試験で有望なデータを得られたと発表しました。これらの結果をもって承認に向けた動きが加速することになります。もう1本の中等症患者を対象としたP3試験は、5月下旬に初期のデータが公表される見込みです。
一方、4月29日の英医学雑誌「ランセット」では、237人の重症患者を対象に行った臨床試験の結果、レムデシビルとプラセボの間で臨床的改善までの時間に有意差はなかったとする論文を発表しました。この試験は、登録症例数が少なかったことから早期に中止されており、ギリアドは「統計学的に有意な結論を導くには効力を欠く」と指摘しています。
ファビピラビル(富士フイルム富山化学)
ファビピラビルは2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬。新型インフルエンザが発生した場合にしか使用できないため、市場には流通していませんが、新型インフルエンザに備えて国が200万人分を備蓄しています。ファビピラビルは、インフルエンザウイルスの遺伝子複製酵素であるRNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制する薬剤。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスであることから、効果を示す可能性があると期待されています。ただし、動物実験で催奇形性が確認されているため、妊婦や妊娠している可能性がある人には使うことができず、妊娠する可能性がある場合は男女ともに避妊を確実に行う必要があります。
日本では、富士フイルム富山化学が3月にCOVID-19を対象にP3試験を開始したと発表しました。臨床試験登録サイトに掲載されている情報によると、対象は重篤でない肺炎を発症したCOVID-19患者約100人で、肺炎の標準治療にファビピラビルを追加した場合の効果を検証。米国でも4月からP2試験が行われています。
シクレソニド(帝人ファーマ)
シクレソニドは、日本では2007年に気管支喘息治療薬として承認された吸入ステロイド薬。国立感染症研究所による実験で強いウイルス活性を持つことが示され、実際に患者に投与したところ肺炎が改善した症例も報告されています。
国内では、無症候または軽症のCOVID-19患者を対象に、対症療法と肺炎の発症または増悪の割合を比較する多施設共同の臨床試験が国立国際医療研究センターを中心に行われています。
ロピナビル/リトナビル配合剤(米アッヴィ)
ロピナビルはウイルスの増殖を抑えるプロテアーゼ阻害薬で、リトナビルはその血中濃度を保ち、効果を増強する役割を果たします。これらの配合剤であるカレトラは、日本では2000年にHIV感染症に対する治療薬として承認されています。
2020.05.06更新
開発途上の抗ウィルス薬
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