2020.01.25更新

<この文章は架空の物語であり、登場する人物、国、政治情勢とは無関係です>おおはし

私は95歳の老人の家から、往診の帰りである。事刻は午前5時半ごろであろうか?急に発熱と全身関節痛を訴えって苦しそうだということで電話があったのである。やはり流行りのインフルエンザで、

経口薬と補液をして、大森神社を経由して,当院へ帰宅予定であった。大森神社というのは、戦国時代からあったといわれ、盗賊が住み着き、何も知らない通りがかりの旅人、神社であるからお祈りに来た善良な村人を、襲いかかり、賽銭どころか、身ぐるみ一枚、奪い取られるという伝説があった。今は山賊はいないが、そこで起きた過去の多くの悲劇が、悲鳴や、怒鳴り声、夜更けには足のない三角頭布をつけた亡霊が出ると言う噂がいつまでも語り続けられている。私も日の出前の薄暗い、評判の悪い神社の前を帰り道に選んだのがいけなかった。賽銭箱の前にどうしてか分からない絨毯が置いてあった。往診帰りの私は、白衣と聴診器と往診カバンをもって、その絨毯に座ってみた。すると、耳を塞ぎたくなるような高調の横笛の音色と共に私を載せて空へ向かって上昇し始めたのである。まずは大森神社の屋根の上を旋回し、大垣公園あたりまで、アッと今に飛行した。白衣姿の私は、寒くて仕方がなかったが、高所恐怖症でもあり、悪夢であってくれの願い一つであった。大垣公園にはこんな早朝、あるカップルがベンチで濃厚なラブシーンを演じており、うらやましいと思ったら、私を載せた絨毯はアッという間に富士山より高く昇りつめ、日本を猛スピードで太平洋からアラスカ、北陸へたどり着いたのはほんの一瞬の出来事であった。純単に白衣姿で聴診器と往診カバンを落とさないように、真っ青になっている私に同乗してもらいたい。

 北極におは雪がほとんどない。地球温暖化がここまで気負ているのであろうか!シロクマは住む場所もなく、氷原に集まる小動物もいなく、飢餓が強くやせ衰え、絶滅寸前であろうか!アザラシやトドは、天敵のシロクマがグロッキーなので、余裕をもって、魚を食事しながら、楽しそうである。しかし、遠くに見えるグリーンランドやシベリアの永久凍土も解け始めている。もし、この凍土が解け、メタンガスが吹き出したら地球のCOは一気に増加する。海水温が高いせいか、地球の最北点で、絨毯の上の白衣姿の私は,凍死しない。しかし、寒い、シベリアを超えて中東まで絨毯に行くように言願いした。よく、ロシア上空、中近東上空を旋回しているが、ミサイルはやってこない。中近東は映画「アラビアのロレンス」に描いてあるように、もともと、小数民族が小競り合い族が小競り合い、様々な宗教で、争ってはいるが、バランスは保たれていたのだ。そこへ、石油資源の利権も絡み、欧米諸国が勝手に国境線を引いたものだから、世界大戦を起こすほどの不均衡地帯になってしまった。ますます対立が深まる中東を後に、大気汚染、新型ウィルス、でやかましいアジアに絨毯は猛速度で太平洋まできた。日本は最後にして、太平洋ど真ん中である。かつて堀江青年がヨットで日本からUSAまで横断した「太平洋ひとりぼっち」という映画を思い出す。しかし、海は汚れている。サンゴ礁は枯れはて、魚も済むとこもなく、温暖化に低酸素血症がこの太平洋全体にある。いけないこのままでは!  私がかつて留学していた研究所に忘れることのできない北米を縦断するミシシッピ川を訪れた。幾たび来ても、ミシシッピ川は海のようである。その川のある東部の岸辺で、若い恋人が、唇を重ねていた。さー、南アメリカへ行こう!しかし、アマゾンの密林は枯れはて、小国は争いばかりしている。かつての原住民がマヤ文明に代表する独特の世界を形成していたのに、スペイン、ポルトガルが破壊した。こんなとこはいいからオーストリアへ行こう!なんだ、着いたら山火事がまだまだ密林を破壊し、大量の酸素とコアラの命を奪った。これでは地球にCO2が増えるばかりだ。南極はどうかと思案していたが、女房に無断外泊をしていることに気が付いた。急遽、日本の美濃地方の大垣市の大橋医院に、絨毯は止まってくれた。長く乗っていたせいか、寒くもなく怖さもない。すると鬼のような顔をした女房が「夕べ、どこにとまっていたの?いい年をして遊郭にでも泊まっていたのでしょう!」「いや、この絨毯で地球の観測に行ってきたのだ」と私は絨毯に飛び乗り、「サー絨毯!早く飛びなさい!」と怒る女房の前で泣き叫んだ。しかし、二度と絨毯は飛ばないし動こうともしなかった。すっかり信用を無くした私は、絨毯を粗大ごみに放り投げる女房を見て、この不思議な経験はやはり夢だったのか、それにしては現実感があった。しかし、政治家たちは利権争いをやめて、人類が長く安心して地球に住む政治をしなくてはいけない。我が家の平和は何とか回復するであろう。

投稿者: 大橋医院