2014.03.27更新

<サイクリング>

大橋信昭

 ある春爛漫の日曜日に、小生は考えた。還暦を過ぎて、運動習慣をすっかり捨てており、このままではメタボリック症候群で、救急車に乗ることが現実化しつつある。還暦なりに小生の健康のため、筋力、代謝レベルを上げる必要を
痛感した。10年前、好んで通ったサイクリングコースを、往復することを小生は突然思いたった。
 その日は、風が生暖かく、太陽光の照度も適切に調節されており、暑くもなく寒くもなく、小生は運動靴をしっかり萎縮した足にはめ込み紐をしっかり縛り、自転車に乗り、北へ向かったのである。当院からサイクリングコースへ向かうには、まず、JRのガードレールの下のトンネルを通過せねばならない。まず、下りで傾斜は急である。重力の助けを借り、一気に最下端を通過し、その余剰エネルギーの勢いでトンネルの最上端に到達しようとしたのである。後は下肢の筋力が頼りである。ところが、10年前と異なり、小生は、自転車の転倒を察知し、登り傾斜の途中で左足を地面に投げ出し、付着させやっと均衡を保たざるを得なかったのである。後は自転車から、小生は地面に降り、トンネルをやっと脱出したのである。先行きに暗いものを感じた。
 しかし、気を取り直し、北へさらに向かった。やっと市街を脱出し、北公民館の近くまで来た。西側には小川がせせらぎ、木々の枝が放射線を描いている。
そこに、鬼のような人相の高校生の集団が7人、ジグザグ上に立ちはだかり、小生を睨んでいるのである。"おやじ狩り"という言葉が、小生の脳裏をよぎった。7人相手に喧嘩にでもなったら、西側の川に放り込まれるかもしれない。小生は、まず全身の力を抜き、彼らと視線が合わないように、決して小生の体と自転車がこの7人の悪党集団と接しないように、慎重に、ジグザグに、ハンドルと車輪を操作した。無気力は相手の闘争心を奪うものか、無事彼らの作る恐ろしいジャングルを通過したら、後は追いかけもせず、殺意のみ感じ、安全地帯に逃げ込んだ。怖いものである。日曜日の、午前中に、おやじ狩りが行われているのである。さー北へ急ごう。
 やっとサイクリングロードへ到着した。道路は自転車にやさしく、赤、黄色、緑の草花が道路の両脇に満員電車の立っている通勤者以上にひしめいている。上には大木より投げ込まれた枝が空の青さを隠すくらいに、天へ天へと争っている。「春だな。」自転車も軽快に登りを走っている。小生の脚力も、まだ若い。
そう思った瞬間、突然に、周りの景色に小生が気を取られていたせいか、仲のよさそうな高齢者が、小生の自転車に接触するくらい前にいつの間にか、存在していたのである。小生は老夫婦を自転車の車輪で外傷、転倒させることは最もいけないと思い、反射的に、無防備になっている、左の地面から谷底へ自転車ごと、落下せざるを得なかったのである。幸い、下はコンクリートではなく、雑草の絨毯であった。小生は無意識に、受け身を取って雑草の上に頭部だけを打たぬような格好で、寝転がることになっていたのである。かなりの落差を降下したはずである。すると、上から老夫婦が覗き込み、「危ない人ね!」と、冷たく立ち去った。小生は、老夫婦を傷つけまいと、皮肉にも谷底で寝そべることになったのである。小生にも、怒りが込み上げてきた。しかし、怒っている場合ではない。外傷をチェックした。やはり頭部打撲を避けようと左肘と左膝で全体重の打撲を折半したようである。かすり傷と強烈な痛みが襲ってきた。何とか、水のある所へたどり着き、傷口を洗浄した。骨折のないことを確かめ、重くなった自転車を、何とかサイクリングロードへ引き上げ、気力を持って北へ向かった。先ほどの老夫婦はもういない。痛いながらも自転車を進めていると、サイクリングのコースで一番狭い所で、太った猫が寝そべっているのである。しかも、私と自転車を無視して、道を開ける気は猫には少しもないようである。大きな欠伸をしている。私は思わず自転車から降りて猫に、「君は、こんなところで暇をもてあそばずに、鼠でも捕まえろ!」と、怒鳴らざるを得なかった。面倒くさそうにやっと道を開けた猫のおかげで、さらに北への旅は続行した。しかし、先ほどから、左肘と左膝の疼痛が気になる。これ以上北へ向かうことに、還暦の小生は危機感を感じてきたのである。行きはよいよい、帰りは痛いしえらい。しばらく自転車で我が家を目指したが、途中下車し、抑留された捕虜が祖国を目指すがごとく、徒歩で自転車を引きずり、当院へたどり着いたのである。目標の半分以下のサイクリングであった。「何!これくらいのことで負けてたまるか!筋トレでやり直しだ!」
 来週の日曜日も50歳のころのサイクリングを楽しむ予定だが、翌日、翌々日に、こんな全身の筋肉の激痛がやってくるとは想像していなかった。しかし、あきらめないつもりである。(完)


岐阜県大垣市の大橋医院は、高血圧症、糖尿病、や動脈硬化症に全力を尽くします。

投稿者: 大橋医院

院長の為になるブログ お問い合わせ Facebook