2018.01.21更新

岐阜県医師会メディカルセミナー
平成30年1月21日(日)

<知ってほしい小児の代謝疾患>

1) シトリン欠損症:糖質が嫌いで、油やタンパクしか食べない。
タンパク質や脂肪がア大好き。やせ気味。意識喪失、突然死。
2) 反復性横紋筋融解症:運動をすると、筋肉に激痛が走る。CPT2が異常。
ミトンドリア脂肪酸異常、CPKが異常に高い、突然死
3) ライ症候群:足を痛がる子、両側拇趾の発作性疼痛。
4) ファブリ病:学童期に四肢の疼痛、感染、入浴、運動で増悪、みのがされやすく、心因性と思われがちである。
5) リジン尿性蛋白不耐症:タンパクが嫌い、卵,牛乳が大嫌い、低身長。シトルリンを入れると治る。蛋白、アンモニアで悪化。
6) 小児大脳型副腎白質ジストロフィー:学童期の男子で、物が見えていないのに見えるふりをする。落ち着きがない。突然死、けいれんが起きる。
7) Wilson氏病:血清の銅が少しずつ沈着。3歳になり肝障害、血小板が減少、白血球も減少。脾腫、書字振戦、血清銅、セルロプラスミンが高値。
1歳では発症しない、銅がまだ溜まっていない、3歳がピーク。
8) 家族性高脂血症:膝が柔らかい、10歳でLDL-コレステロールが180以上もある。HMG-CoA還元阻害剤が有効。両親が高脂血症。

「子供を診察するときは家族歴が大切」

おおはし

投稿者: 大橋医院

2018.01.16更新

「僕の友達」    大橋信昭

 僕が君に出逢ったのは、15歳(中学3年生)であった。帰り道が一緒で、気も合うし、話も弾むし、必然的に、友達になった。彼には、両親がいなく、おじさん夫婦に世話になっていることを知ったのは10か月後であった。両親がいない寂しさを、僕は彼から感じることができなかった。

それでは、すっかり友達になった彼と、どんな話しをしたのか、思い出してみよう。
彼:「君は、朝日新聞の天声人語を、毎日、読んでいるだろうな?」
僕:「僕は読んだことがないよ
彼:「世の中の出来事を深く洞察してある文章なのだ、あれは読むべきだ」
僕はかなり、ショック、賢いやつだな!

彼:「君、ドストエフスキーの、「罪と罰」は読んだろうな!あれは常識だからな。ついでに時間があれば、「カラマーゾフの兄弟」も読んでおいた方がいいと思うな。パールバックの「大地」は、読んだら君なら感動するよ。」
僕:「どれも、読んでいないよ!」
彼:「君、まさか夏目漱石や、芥川は読破しているだろう」
僕:「蜘蛛の糸は知っているけど?」
彼:「君は、読書量が足らないな、情けない」
僕は頭が下がるばかりである。それから僕は彼を追い越そうと、天声人語、ドストエフスキー、夏目、芥川の無茶読みに、かなり時間を費やした。

彼:「今度、夏休みの自由研究があるけど、僕は、“浮力”について研究しようと思っているのだ。君も、この際、いい研究をやった方がよいよ!」
それは、飛行機が何故、空を飛ぶか、実行で見せたライト兄弟のグライダーによる「翼よ!あれが巴里の灯だ」を再実験するということになるという彼の研究である。浮力という言葉さえ知らなかった私は、お粗末な研究で終わった。夏休みには、彼の研究は教員たちに、絶賛であった。
常に、彼は僕にコンプレックスを与え、学問や研究でわたしが彼に優位にたつことはなかった。

 やがて、僕は岐阜高校、彼は別の高校で、時々手紙のやり取りをしていた。
僕も医師に成りたかったから、受験勉強を、自宅で、通学電車、地元の図書館で夢中であった。ある昼下がり、図書館で数学の微積分を勉強していると、
後ろから、僕のノートを覗き込んでいる奴がいた。彼であった。久しぶりであった。しかし、彼は僕を嘲笑した。
彼:「君は、そんな低いレベルの数学で満足しているのだな?僕の教科書を見て見ろ!」と僕のノートの前に叩き置きした数学の本は、大学の数学を職業にする人たちの教科書であった。僕にはまた、彼へのコンプレックスが起き、めまいがした。その本は君へプレゼントするから、もっと人間を磨いておくことだ!」
と、捨て台詞で、姿をくらました。
 その後、僕が彼について知ったことは以下のごとくであった。両親がいないから専門学校を卒業するや、アルバイトに明け暮れ、学資金をあちこちから調達し、京都大学へ数年間、浪人して入学したそうである。数学に夢中になり、ついに世界の有望な数学者に贈られる、「フィールズ賞」を勝ち取ったそうである。その後、細かいことは、知らないが、ソニーに入社しかなり出世していることが分かった。びっくりした話だ。
 それから何年か経ち、僕も開業し47歳となり、すっかり開業医に定着していた。急に中学の同窓会の話がまとまり、私はどうしても彼に逢いたくなった。それで、僕はおじさん夫婦の家に彼の住所を聞きに行った。おばさんが出てきて、僕が事情を話すと、おばさんが「きっと、彼は喜ぶと思うわ」と、電話番号を教えてくれた。私は、一目散に、彼に電話した。何回かけても留守電であ
った。ある日,やっと電話が通じた。出られたのは彼の奥さんであった。「主人ですか?隣にいますけど、」僕の胸は鼓動で苦しかった。しかし、数秒後、彼は電話を切った。二度と通じなかった。彼との再会は諦めた。
 65歳にして思うに、彼は「君は両親がそろっていて勉強に苦労は無かっただろう!私は、おじさん夫婦に気を使いながら、北海道まで酪農のアルバイトまでして、大学へ入るのも就職するのも、両親がいないというだけで、かなりつらい差別に逢うのだ。同窓会に出てこいだと?君みたいな甘えんぼとは,もう逢いたくないよ!さようなら!」と彼の声が私の心に響いていた
僕は、両親に優しく育てられ、参考書は好きなだけ買え、彼に比べれば何の苦労もなく医師に成り、一人前のつらして診察室に座っているだけだったのだ。
ごめんよ、彼の声は聞こえなかったけど、学校の帰り道に刺激を受けたことは後でとても役に立ったんだ。ありがとう、友よ。(完)

おおはし

投稿者: 大橋医院

2018.01.12更新

「お爺ちゃん、ビールはもう駄目よ」  
 大橋信昭


 診療が終わり、いつもの癖で、ビールをキュット一杯飲もうとした。4日前から遊びに来ている、孫の長女に止められた。「お爺ちゃん、毎晩、毎晩、ビールばっかり飲んでいるから、もう駄目よ。」と。注意された。いや、参った。今日は休肝日にしよう。孫には、弱いな。「そんなに、ビールばっかり飲んでいると、お医者さんのところへ、行かなくちゃいけないよ。」あれ!「お爺さんのお仕事は何でしたか?」「郵便屋さんでしょ。」うーむ、封筒ばかり開いているから、郵便屋さんか?
 ところが、私は、ある夜、急患がやってきて、私が白衣を着て、注射器を揃えていると、「お爺ちゃん、お医者さんなの?」と驚いた顔をしていた。白衣を着て、聴診器をもって、汗まみれの毎日に、孫は、私の職業をやっと理解した。「お注射、しちゃうぞ」の声に、逃げて、姿をくらました。
 孫と、お絵かきや、数字ゲームや、追いかけっこをした。ある日曜日、大垣城公園に、出かけた。ジャングルジムに孫は、一直線であった。そこには2歳から5歳も、6歳の子も群がっている。みんな,体力差があるから、同じ行動を私の2歳の孫がしたら危険である。婿殿と集中監視である。ところが、面白い現象が起きた。ジャングルジムのトンネルの中に孫が入っていった。婿殿も続行した。体がラグビーのような体格の婿は諦めた。私も負けないくらい太っているが、そのトンネルに入ろうとした。何と無事に入れた。何度か、壁に体をぶつけたが、トンネルは、脱走した。63歳のジャングルジムのトンネル脱走事件、記録に残らないか。孫は、何回も滑り台を落下するのを繰り返した。私も、一度だけ、滑り台を落下した。太った、剥げた、お爺さんが滑り台を落下して、周囲は笑っただろう。しっかり汗をかき、帰宅し、入浴をし、食事に出かけた。食事会は、一番楽しいのである。いつも家内と二人きりで、残飯に近いものを食べているから、7人で(私、妻、次女、長女、孫二人、婿)の食事は、賑やかである。あれ嫌い、これ大好き、あースープこぼした、アンパンマンだ!あれ!次女がウンチした。早く、おむつ交換だ。大戦争である。これは私にはうれしくてしょうがない。お片づけをして、もう一度体を綺麗にし、夜、8時半から9時には就寝である。すぐに寝るはずがない。寝室から、強烈な泣き声が、応接室まで響き、婿殿が眠れるわけがない。
 楽しみは、孫二人と、私の触れ合いである。私も、すっかり、幼児の心になろうと努力する。次女とは、視線をしっかり合わせて、「パパ、ママ、ジージー、バーバー」とゆりかごを揺すりながら、でれでれの笑顔である。次女も大笑いである。長女は、「赤ずきんちゃん」を読んであげるのにはくたびれる。後は、手を合わせて、ジャンプごっこ、お互いに笑顔は絶やさない、両手の握手(おにぎり)は、熱くなる。「お爺ちゃん、ビールは、病気になっちゃうよ。」「もう飲まないよ。」嘘ばかり。そして、クスクスごっこ、笑い続けている。鬼ごっこは、あれだけ「赤ずきんちゃん」を読ませながら、鬼は怖いそうである。
 それでも、ママ、パパが一番である。それにはかなわない。可能な限りで、一杯おしゃべりをして、お遊戯を散々楽しみ、私は医師であることを忘れそうである。
 やがて、お別れの時が来た。みんなで、イチゴケーキを食べながら、大笑いが家中に響き、家内と長女が変える支度をして、玄関でお別れである。孫と熱い握手を何回もし、「バイバイ、また来てね」というと、孫は急にまじめに、「お爺さんはビールをたくさん飲んだらだめだよ!」「はーいわかりました。」苦しい答弁である。笑顔を交わしながら、彼らは実家に帰った。急に、静けさと沈黙がやってきた。
よーし、孫の成長をしっかり見るため、長生きするぞ。でも、ビールは少し飲もう。(完)

おおはし

投稿者: 大橋医院