2015.06.06更新

<廃線>

大橋信昭

 私は、廃線の上を歩いていた。それは危険な行動であり、鉄道関係者が観ていれば大変なお叱りを受けるであろうし、一般大衆の目にも異常行動として警戒されるであろう。しかし、私はひたすら廃線の上をまっすぐに歩いていた。線路の両脇には雑草が生い茂り、行く先は果てしなく錆びた鉄の塊が道を作っていた。しかし、1時間も歩いているとすぐ前に、暗いトンネルの入り口が迫っていた。この先を、このまま歩いてよいものか、私は危険を感じた。その先の暗闇が私を招待している気配を感じ、一歩一歩、足がその先へ行くのを止められなかった。いきなり真っ黒な世界が広がっていた。しかし、廃線の鉄の上を確かめながら奥へ、私は向う見ずにも進んでいった。暫くすると、急に明るいもの、電気の点滅を感じ、確かめに急いだ。そこには廃線から向かって右側になんと「BAR トンネル」という看板を見つけたのだ。呼び込み嬢は、ミニスカートで脚線はまぶしく、うさぎさんの恰好をしており、暑い唇から「寄ってらっしゃいよ」と甘い人工的な吐息が漂った。胸がはちきれんばかりで柔らかく、私の頬をピチャピチャ叩き、お金は持っていたのかわからずにさらに奥へ入っていった。通された奥の暗い机と6席ある椅子の奥の中央に通された。隣には淡谷のり子みたいな"ママサン"がいて、「何をお召し上がりになるのかしら?ねー、いっそレミーマルタンにされては?」私は財布の確認を急いだが、すぐに両脇には、派手なホステスがガードを固めた。ミニスカートに深い谷間、網タイツに、ボディーラインぴったりのワンピースで、「私も一杯いいかしら」左の女性がと私にしなりより、甘い息をかけた。全身に刷り込んだ香水と、不可思議な減少に私は怖く極悪のどん底であった。レミーマルタンはなみなみコップに注がれ、私と、両脇のホステスも、ママも、かなり飲んだようだ。これが私の請求書に回ってくるとなると、一回銀行に行かなければいけない。酩酊の極致に、ママが耳元へ、「奥にとてもくつろげる部屋があるのよ。あの若い子、そう!右の唇にほくろのある子ね。」私はもう強制的にさらに深い黒い奥の部屋に通された。シャワーとダブルベットが用意されており、そのほくろの女の子は「お先に!"」とシャワー室へ消えた。カーテン越しに彼女の脱衣シーンが透き通ってみられ、私は刺激を受けた。しかし、馬鹿なことを考えているばかりではいけない。今日は廃線をゆっくり歩いていたのだ。どうしてこんなことに?早く脱出しなければいけない。あの退屈な毎日に戻らなければいけない
彼女の入用中に、私は、必死に脱出口を探した。手探りで壁を押しまくった。よく見ると、タンスの裏に、扉があることに気がついた。わたしは、そっと音が出ないようにタンスを移動し、その隠れていた扉を押した。長い狭いトンネルであった。四つん這いになり猛スピードで出口へ急いだ。奥ではママたちが大騒ぎし、こちらに向かってくるようだ。やっと出口と思われる扉を見つけ、両足でこじ開け、外に向かって飛び降りた。するとある程度落下したのか、かなりの激痛が私の膝、越、頸部へと伝わった。周りを見渡すと小さな駅であった。駅長もいない。女子高校生が待合室で、にぎやかにおしゃべりをしているのが聞こえた。その女子高校生の一人が私を見つけ、「あのおじさん、あそこで何をやっているの?」私は痛みをこらえ、女子高校生も無視し、駅名を見た。駅名は「三酢手理―駅」とかいてあった。無人駅でもあるし、追っても見えないし、廃道から駅の出口へ、急いだ。在来線を超え、搭乗口へよじ登り、駅前へ出た。駅前の商店も、通りの商店もシャッターが閉められていた。やっと見つけた小柄な御婆さんに、「ここは何県ですか、東京へ帰りたいのですが?」すると御婆さんは、不思議そうにここはXX県三酢手理―市ですけどね。東京都は遠いですね。」私はびっくりした。あの廃線は何らかのパラドックスなのか?
財布を調べたら、5万7千円入っていた。タクシーの運転手を追いかけ、この近くの新幹線駅まで行ってくれと言った。運転手は新幹線の駅までですか?」しぶしぶ1時間はかかったと思うが、狭い商店街から、田園を超え、海に近い街道筋をしばらく行くと新幹線が止まるOOOO駅があった。指定席いや、グリーン席を選んだ。東京まで2時間、やっと我が家へ戻れる。急速に眠くなったが、軽く後ろを振り返ると後部座席にあのバーのママとホステスと用心棒と思われるサングラスをかけて黒いスーツの男が私を睨んでいた。どうして、彼らはあの席にいるのか?私はトイレに逃げ込んで扉を施錠した。窓を思い切り体当たりし、できた隙間から脱出を試みた。足から臀部から、胴体、両手が窓にかかっている時に、追ってはトイレに入ってきた。その瞬間私は両手の力を緩め外へ追い出された。不思議な風に乗っかり猛スピードで旋回し気が付くと我が家の玄関の前に居た。女房が私の無断外泊を怒っていた。そんなことはいい。早くお風呂に入り、眠りたいだけだ。もう筆者も疲れているからもう事件は起きないと思う。お休みなさい。(完)

岐阜県大垣市の大橋医院は、高血圧症、糖尿病、や動脈硬化症に全力投球します。

投稿者: 大橋医院