2015.06.01更新

<書斎>

大橋信昭
 私は、書斎でSF小説から歴史小説、哲学書を読み漁り、私の頭脳は、思考することや記憶することなど、フル回転であった。かなり疲れていた。眼鏡を外し、一休みしていると、大きな物音がしたかと思うと、何か巨大な洞窟が現れ、私は吸い込まれていった。長い暗闇の中を、私は何もできないでいた。突然、アスファルトの道路に叩きつけられていた。痛みが臀部から腰部にかけて走り、うずくまった。気が付くと闇夜に、星と満月がきらめき、堤防の上の細い道路であり、雑草が巨大な川の濁流まで生い茂っており、恐怖感が走った。すると、私をまぶしい光が道路の100メートルぐらい離れたところから刺激した。そして耳を覆いたくなるような爆音とともに、巨大なオートバイが私の前に停止した。そのドライバーは女性らしい。ヘルメットを外すと、黒い長い髪が彼女の肩まで垂れ下がった。鋭い眼光で私を睨みつけたその女性は、二重の瞼に美しい眼球と妙に尖った鼻、喰いしばるようにむすんだ唇が強烈に私の網膜に焼付いた。「あんた!こんなところで何をしているの!」と鋭いが、波長の高い美しい声が闇夜に響いた。答えようとすると彼女の仲間であろうか?7人の男性ドライバーに取り囲まれた。「姉貴、こいつは誰です?」「知らないわ!あんた!こんな所で何をしているの?」私は恐怖と驚きで「さっきまで書斎で本を読んでいたんです。」すると、彼女の左に居た背の高い金髪でオールバックの男が刺青をした太い腕で、私の首を絞めつけ、つるし上げ、そのまま地面に叩きつけた。かなりの激痛が全身を覆った。そして入れ替わり、あと6人の人相の悪い男たちが私の脇腹に蹴りを入れた。私は、もんどりうって草むらから、黒いうねった川べりまで転がった。もう意識が遠のこうとしていた。すると彼女が道路から降りてきて、「本当のことを言いなさい!」と唇が近づいた。その口臭はたまらなく素敵であった。黒い革ジャンのスタイルも妖艶であった。
 その時に鋭い激音がした。警察集団であった。トレイニングを受けた警察集団は、男性7人を格闘の末、思ったより簡単に捕獲された。美しい彼女は私を攫んで、川に飛び込んだ。激しい激流に二人流され、警察官達は後を追った。すると、また不思議な黒い闇が二人を被い、不思議なことに元の私の書斎に戻っていた。不思議そうに本を眺めていた彼女に、留守である家内の服を差出、シャワー-による交代でのお互いの体の清潔化を私は主張した。彼女が先にシャワーを浴び、そして僕が次に浴室に入った。家内の服を着た長い黒髪の女性は独特な妖艶を帯びていた。私は一歩一歩近づこうとした。その時にチャイムが鳴りひびいた。家内であった。玄関から「私、用が急に済んだので帰ってきました。」これに驚いた私は彼女に屋根裏に上がることを強制した。拒否された。
あっという間に書斎に家内は入ってきた。中高年に入った私の家内と、若い黒髪の女性は睨みあった。「あなた、これどういうこと?」私は説明のしようがなかった。私は、家内から詰め寄られ苦渋そのものであった。家内は、「あなたがこんなことをする人とは思っていなかった。実家に帰らしていただきます。」濡れたシャワー室と、書斎の自分の服を勝手に着ている若い女性を睨んで、家を出て行った。この若い女性の処置に私は困り果てた。「いいわ、元の仲間に逢っていくわ。私、指名手配だから、警察へ行けば元の仲間に逢えると思う。」とあっという間に我が家を出ていった。何もかも失った、私は、堤防であった彼女のことが心配であった。黒い洞窟が彼女をもとの所へ戻してほしかった。急に眠気がして書斎で眠り込んだ。翌朝、家内が帰ってきた。ご機嫌が相当悪い。若い女性とシャワーと洋服の話にどんな説明も家内には理解できなかった。気になる黒髪の女性も、そっと書斎を抜け出して、警察やら、町中探しても二度と逢えなかった。書斎の本だけが事実を知っている。皆さん、平凡で退屈な生活が一番大切であります。


岐阜県大垣市の大橋医院は、高血圧症、糖尿病、や動脈硬化症に全力を尽くします。

投稿者: 大橋医院