<第六感>
大橋信昭
第六感とは、基本的に、五感以外のもので五感を超えるものを指しており、
現実では説明し難い、鋭くものごとの本質をつかむ心の働きの事である。
「虫の知らせ」午前2時、就寝中、なんとなく、一階の正面玄関へ向かった。
なんと、背の高い小太りの丸顔の眼鏡をかけた男が、鉄の棒で、当院の正面玄関を突破しようとしている。私は思わずその盗賊、いや強盗殺人と目があった。
彼は、咄嗟に近くに車を止めており、共犯と一緒に立ち去った。警察に電話しても「気を付けてください」、ガード会社は、「すぐに、5分以内に参ります。」
そっけないものであった。私が、犯人に殺されない限り、誰も助けてくれないことが分かった。それにしても、何気なく、玄関へ私が夜中の2時に降りていくことは、ご先祖様のおかげか、第六感というものかもしれない。
「予知」孫の誕生予定日は、8月5日であった。実家で出産するということで、我が家へ長女は里帰りしていた。まさしく、8月5日、彼女の陣痛は、始まった。しかもその間隔は短縮する傾向であった。産院へ彼女は頻回に電話していた。産院のナース、医師が来てくださいということで、婿殿の大切な妻であり、初めての子供でもあり、私は、慎重に産院へ彼女を妻と運んだ。ナースがいうことには、産道がまだ狭く、一日ぐらいはかかるかもしれない、という話であった。私は明日の診療もあるし、まず我が家で待機することにした。しかし、夜中の2時半に突然、初孫が生まれた予感がして、産院へ急いだ。ブザーを鳴らし、家族と連絡したら、今、初孫が出産したとのことであった。初孫を拝むことができた。しかし、何故生まれたと感じたのであろうか?第六感であろうか?
「なんとなく」その日の診療は感冒で混んでいた。私は感冒患者を、手早く診察していた。しかし、その患者は、私は何となく、診察を止め、超音波撮影を施行した。なんと、肝臓癌を発見した。すぐに中核病家へ搬送したが、あの大勢の感冒患者から、何故肝臓癌を診断できたか、謎である。第六感であろうか?
「準備」今日は、中核病院で、夜間の小児夜間当直であった。小児科は私の専門ではない。故に、あらかじめ、小児科の予習をしていくのである。その日はなんとなく、水疱瘡の初診患者が初診で来院する予感がした。治療方針、薬用量をしっかり復習して、急患センターへ出かけた。やはり、水疱瘡患者が来院した。予習は充分してきたので、自信を持って診療できた。これも第六感であろう。
「夜中のラブレター」初恋の女性に40年ぶりに逢った。ある公的職場である。当時の思いが私の方が強かったのか、すぐに17歳の高校生に戻った。話も挨拶程度で悔いが残った。何か話をじっくりしたかったと、夜、やけ酒を飲んだ。
すっかり酩酊し、突然パソコンに向かって、ラブレターを書き、千鳥足で郵便ポストに投函しようとしたが、ご先祖様が"やめなさい"と叫んだ気がした。
突然理性が戻り、ラブレターは破り、布団にもぐりこんだ。これは第六感ではないが、大変な家庭問題になるところであった。
「禁酒」最近疲れやすく、年齢によるものかと思えば、飲酒量が増え、肝機能悪化、酒癖が悪く、酩酊し、次女のパソコンを壊し、仏壇の前で裸踊りをしていたらしい。私は,覚えがないが次女からきつく叱られた。このままでは社会的犯罪者になると思い、断酒剤を服用して、アルコールと縁のない世界になった。第六感ではないが、酒のない世界は素晴らしく、読書、随筆がはかどり、救急患者にもいつでも適応できる。
以上私なりの第六感を考察したが、皆さん、ご経験はありませんでしょうか?(完)
岐阜県大垣市の大橋医院は、高血圧症、糖尿病、や動脈硬化症に全力を尽くします。
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