2026.06.04更新

世界中で数百万人の人々に影響を及ぼす進行性の神経変性疾患であるアルツハイマー病には、長い無症候期がある。臨床症状が現れる何十年も前から、すでに発症の兆しが見られる可能性がある。

 しかし、我々の新たな研究が示唆するように、血液中のバイオマーカーと自己申告による記憶に関する懸念を組み合わせることで、アルツハイマー病が人生のどの段階でどのように進行するかについて、早期の手がかりが得られる可能性がある。

 これは、中年期が脳の健康を促進するための重要な時期となり得ることを意味する。

 本研究では、オタゴ大学が実施する世界有数のダニーデン研究のデータを使用した。同研究では、50年以上にわたり被験者コホートを追跡調査している。

 我々は、pTau181として知られる特定のタンパク質が、記憶力や思考能力に関する自己申告の懸念と関連していることを発見した。

 特筆すべきは、調査参加者が評価時点でわずか45歳だったという点である。通常、認知症と診断されるのは70代以降である。

 近年、アルツハイマー病の薬物治療には進歩が見られる。しかし、これらは根治的な治療法ではない。せいぜい病気の進行を遅らせるだけであり、進行した段階で失われた認知機能を維持したり回復させたりすることはできない。

 これらの治療法は早期に開始した場合に最も効果を発揮する可能性が高いと考えられるため、アルツハイマー病の最も初期の兆候を特定することがより重要となる。

認知症の予防
 さまざまな種類の認知症は、病気の初期段階では似たような症状を示すことがあるが、治療法や進行の経過は認知症の種類ごとに大きく異なる。

 かつては、アルツハイマー病を確定診断するには死後検査、あるいは近年では腰椎穿刺などの侵襲的な検査が必要だった。

 しかし現在、研究者たちは、アルツハイマー病の発症リスクが高い人々を特定するための低侵襲な方法となり得る血液バイオマーカーの特定に取り組んでいる。

 アルツハイマー病を最も初期の段階で検出できれば、予防の機会が生まれ、脳の健康と加齢に対して最大の恩恵をもたらす可能性がある。

 これには、身体活動を促し、社会活動への参加を継続するよう支援することや、高血圧や難聴といった変更可能な危険因子の対処など、生活習慣の改善が含まれる。

 予防的アプローチは、実施が早ければ早いほど効果的に機能する。したがって、アルツハイマー病が診断されるずっと前に、その早期リスクプロファイルを特定するためには、中高年層を対象とした研究が重要となる。

物忘れが病気の兆候となる時
 人は年を重ねるにつれ、以前ほど記憶力が良くないことに気づく場合が多い。

 物忘れはよくあることであり、加齢に伴うものであれば通常は問題がない。しかし、一部の人々においては、こうした記憶の問題が、何か別のことが起きていることを示している可能性がある。

 最近の研究によると、認知機能における微妙な主観的な変化は、診断のずっと前に生じることが多く、それが病気を感じ始める最初の瞬間である可能性がある。

 生物学的マーカーのスクリーニングを、記憶機能に関する主観的な報告と組み合わせることで、アルツハイマー病の病理の最も初期の兆候を、通常の加齢と区別するのに役立つ可能性がある。

 pTau181のようなタンパク質は、アルツハイマー病患者でははるかに高値となるが、このタンパク質がいつ蓄積し始めるのかはまだ分かっていない。

 我々の知見は、認知症の最も初期の兆候が診断のずっと前に現れる可能性があるという、増え続ける証拠を裏付けるものである。また、自己申告による認知機能への懸念が、中年期であってもアルツハイマー病の早期警告サインとなり得ることを示している。

 興味深いことに、45歳時点において、pTau181バイオマーカーがMRI脳スキャンによる測定値や認知機能検査の成績と関連していることは確認されなかった。

 これには少なくとも2つの説明が考えられる。

 おそらく、pTau181はアルツハイマー病の最も初期の段階、つまり本人が記憶力の低下に気づき始めた頃には増加しているものの、MRI検査ではまだ変化が確認されない段階にあるのかもしれない。

 あるいは、pTau181の上昇は中年期のアルツハイマー病リスクとは関係がなく、このタンパク質は高齢者のアルツハイマー病を検出する際にのみ有用である可能性もある。

 現時点では十分な知見がないが、この研究を継続するため、同じ対象グループが高齢になるまで追跡調査を行っていく予定だ。

This article was originally published on ScienceAlert Latest.

 

投稿者: 大橋医院

2026.06.04更新

<私の嘱託医をしているグループホームは花盛り>   大橋信昭  大垣市医師会
グループホームとは、脳が故障して認知になり、体が丈夫な人が入る施設だ。脳は体の全臓器の親分であり、脳だけ故障、他の臓器が健康ということは?それがあるのだ。その施設は,1階、2階に9人ずつ18人入所している。平均年齢89歳です。最高年齢者は102歳で、足腰逞しく、私が傍に行くと「先生!大好き」としがみついてくる。この人は不死鳥か?5年前にご主人を無くされ、毎日仏壇にお祈りする85歳の老婆は、最近入所した男性をご主人と思い込み、「私の主人の具合は?」と問われ私は「大丈夫!」と言うと嬉しそうに飛び跳ねる。しかし入所したばかりの男性は、肺炎をおこし急死した。だから、また再度後家さんになった85歳の老婆は明るい毎日で、妄想中。もう2週間も、飲水、食事ができないフレイルの老婆は、私は2日も生きておればよいと家族に説明したが、2週間後には、介護士の頑張りもあり、廊下を早足歩き。67歳の筋委縮性硬化症の老婆は、何度も臨終が近いといったが、3週間後に逢った時は、山のようなお菓子を食べていた。5㎏近い赤ちゃんの人形を抱えて歩いている92歳の老婆は,風邪一つひかない。脳と多臓器は無関係か?私も73歳近くなり認知症で、この施設に入所する。料理も、おやつもうまい、天国だ。自分をナースと勘違いしている老婆は私と回診を希望する。全く分からない!

投稿者: 大橋医院

2026.06.02更新

1)対応に悩む言動があったら、まず「せん妄」を考える
認知症または認知症の可能性がある入院患者に興奮や徘徊(歩き回る)、幻覚・妄想などをみとめた際、BPSD だけでなく、せん妄の可能性が十分考えられる。
BPSD とせん妄には、共通する症状がきわめて多い(表1)。
実臨床でせん妄は高頻度にみられるだけでなく、直接因子や促進因子の除去によって改善が見込めることから、安易にBPSDと考えず、まずはせん妄の評価を確実に行う必要がある。
表1 対応に悩む言動とその鑑別

memo
実臨床において、入院患者に何らかの精神症状をみとめた際には、鑑別診断の筆頭に「せん妄」をおくことが何よりも重要です。

(2)せん妄とは?
せん妄とは、身体疾患や薬剤、手術などを原因として、軽度から中等度の意識障害をきたした病態である。
注意障害、記憶障害、見当識障害、睡眠・覚醒リズム障害、幻視、感情の障害といった多彩な症状がみられる。
認知症との違いは、これらの症状が短期間のうちに出現し(急性発症)、夕方から夜間にかけて増悪すること(日内変動)である。
memo
もしご家族から「うちのお父さん(患者)、急に認知症になったのでしょうか?」と聞かれた場合、どのように返事をしますか? ご家族は、普段と様子が違うからこそ心配しているはずなので、この質問自体が急性発症、つまりせん妄であることを教えてくれているのです。

(3)せん妄への適切な対応とは?
せん妄は、準備因子・直接因子・促進因子の3因子で発症する。
せん妄を焚き火で例えると、準備因子(起こりやすい素因)が「薪」、直接因子(引き金となるもの)が「ライター」、促進因子(誘発・悪化・遷延化につながるもの)が「油」となる。
せん妄を治すには、ライターにあたる直接因子の除去が必須である。
薬物治療はあくまでも対症療法にすぎないため、直接因子が除去されたら、速やかに薬物の減量・中止を試みることが大切である。
memo
せん妄を3因子で理解しておくことは、効果的・効率的なアプローチにつながります。ちなみに、直接因子の同定・除去には医師と薬剤師が、同じく促進因子については看護師が主な役割を担います。

coffee break せん妄あるある
①見当識を確認している際、隣のベッドの患者さんが代わりに返事をしてしまう
 耳が遠い患者さんに大声で話しかけると、このようなことがよく起こります。
ちなみに、「3月13日」が全然違う日にちのこともあり、むしろ隣の患者さんの方が気になってしかたありません…。

②「虫がいる!!」と患者さんが天井を指差すので確認すると、本当に虫のように見える模様である


 あなたの病院の天井はいかがでしょうか?

 一般病院の約9割は、このような模様になっています(筆者推測)。防音効果があるそうなのでしかたないのですが、ベッド上で1 日中天井を眺めていると、この模様がだんだん虫に見えてきそうです…。

(4)せん妄のサブタイプとは?
せん妄は、患者が示す運動症状によって、①過活動型せん妄、②低活動型せん妄、③混合型せん妄の3つに分けられる(表2)。
過活動型せん妄では興奮や暴言・暴力などがみられる一方、低活動型せん妄は覚醒度の低下や活動性の減少が主たる症状である。
表2 せん妄のサブタイプ別の症状

memo
医療者にとって、興奮や暴言・暴力などをきたす過活動型せん妄は対応に困る一方、低活動型せん妄は見逃されやすいことが知られています。低活動型せん妄でも患者さんはつらい思いをしているため、適切な介入が求められます。

Advice 「低活動型せん妄に気づくポイントとは?」
 低活動型せん妄は、過活動型せん妄に比べて症状が目立ちにくく、かつ医療者が対応に悩むことも少ないため、臨床現場で見逃されやすいことが知られています。そこで、「低活動型せん妄の可能性を疑うこと」が何よりも重要です。

 低活動型せん妄の患者さんは、1日中ベッド上で過ごし、こちらの問いかけに対しても静かにうなずくなど、一見するとこちらの言うことを理解しているように見えます。このような場合でも、まずは低活動型せん妄の可能性を疑い、その一挙手一投足を注意深く観察する必要があるのです。

 具体的には、

話をしている最中にもかかわらずテレビの方に視線が移る
些細な言葉の言い間違いや聞き間違いがある
質問に対する返事に時間がかかる
 など、低活動型せん妄で高頻度にみられる注意障害を見逃さないことが大切です。なお、医療者が話しかけたりリハビリテーションを行ったりしている最中にもかかわらず、患者の目がトロンとしてくるなども、低活動型せん妄を強く疑う所見と言えるでしょう。

 低活動型せん妄では、「口数が少ない」「周囲に対する無関心」「活動性の低下」「臥床傾向」など、うつ病に似た症状がきわめて多いため、誤診に注意が必要です。低活動型せん妄とうつ病の違いは表3の通りです。発症・経過などは重要な鑑別ポイントですが、なかでも幻視は自ら訴えないことも多いため、積極的に尋ねてみるのがよいでしょう。

表3 低活動型せん妄とうつ

◆!

投稿者: 大橋医院

2026.06.01更新

Westを細くして、かっこよくするには?

ウエストを引き締めてかっこよくしたいというのは、多くの方が一番気にされるところですね。

投稿者: 大橋医院

2026.05.30更新

薬に頼らず期外収縮を抑える方法
熟年離婚の調停中で、そのストレスからくる不眠が原因らしく、ホルター検査で期外収縮が1日7500発出てました。特に夜になると酷い動悸を感じスマートウォッチでは二段脈が50回以上続いたりしてるのですが、最近は昼間も感じ不安です。医師からは、薬を使う手もあるが、先ずは目の前の問題(離婚調停)を早く解決する事が重要と言われて精神科を紹介されました。昼間でもスマートウォッチでは判定不能とか脈拍数が50回以下とのメッセージが出続けています。薬も1ヶ月前にワソラン飲んで全く効きませんでした。薬以外に何かストレッチや運動で期外収縮を抑える方法あれは教えてください。
(60代/男性)

投稿者: 大橋医院

2026.05.29更新

便秘のひどい方へ、

 

1)ツムラ大黄甘草湯7.5gr 3x1 食前

2)マグラックス3錠寝る前

3)アジャスト3錠寝る前

4)リンぜス2錠 寝る前

 

これぐらい飲むと便秘は緩和されます。

投稿者: 大橋医院

2026.05.29更新

 肥満と明確に区別された疾患である肥満症について、横手氏は「肥満症の考え方はまだまだ周知されておらず、専門家や内科医にしか知られていない。肥満症の診断の意義に加え、適切に治療することの重要性を社会により認知してもらうことが重要だ」と話す。

 横手氏が言う肥満症の考えとは、「BMIが25以上で健康障害が生じている場合は、単なる肥満ではなく、肥満症という疾患である。肥満だったら、誰彼構わず痩せればよいわけではない」ということだ。

 実際に、日本肥満学会では肥満と肥満症について、それぞれ以下のような定義を提唱している1)。

肥満:脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数(BMI=体重[kg]/身長[m]2)≧25のもの
肥満症:肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量を必要とする疾患
見逃してはいけない肥満症の患者像①:治療介入の必要性が極めて高い高度肥満症
 では、具体的にどんな患者を肥満症と診断する必要があるのか。横手氏は、まず治療介入の必要性が極めて高い患者像として、「BMIが35以上の高度肥満であり、心不全や、肺胞低換気症候群のような呼吸障害といった重篤な健康障害を合併した方」を挙げる。

 さらに、「このような患者さんは命に関わるような健康障害があり、その治療は対症療法しかない。しかし、肥満症として診断・治療を行い、体重を5~10%以上下げることで、危険な健康障害や生命予後の改善が望める」と診断の必要性を訴える。

治療介入の必要性が極めて高い高度肥満症の患者像の一例
40歳代女性
BMI 35
心不全を合併している
見逃してはいけない肥満症の患者像②:日常診療に潜む治療の必要性が高い肥満症
 また、日常診療に潜む治療の必要性が高い肥満症の患者像として、「2型糖尿病や、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症など生活習慣病で通院中、あるいは健康診断で複数の異常を指摘されている、BMIが30前後の方」を挙げる。

 横手氏は「こうした患者さんの診療では、合併する個々の健康障害に目が行ってしまい、根本にある肥満症を見落としているケースが、これまでの日本の考え方では多いと思う」と指摘する。また、こうした患者を診断する意義について、「それぞれの疾患で薬を服用している患者さんが、肥満症治療により体重を減らすことで、薬を減量できる可能性があることや、新たな健康障害の発生リスクを減らすことができる点で診断する意義が大きい」と話す。表面化している健康障害の根本にある肥満症にアプローチすることは、患者にとって大きなメリットになり得る。

日常診療に潜む治療の必要性が高い肥満症の患者像の一例
50歳代男性
BMI:28
脂質異常症と高尿酸血症で通院中
欧米との比較から見る日本における肥満症診断の重要性
 日本は米国と比べると、肥満に該当する人の割合は圧倒的に少ない。実際に、成人におけるBMIが25以上の人の割合は、米国では8割近くに上る一方2)、日本では2~3割程度だ3)。そのうえ、肥満の判定基準となるBMIは、欧米では30であるが、日本では25と閾値が低く設定されている。これに対して、横手氏は「日本は肥満が少ないから、気にする必要はないということではない。実際に日本と米国における2型糖尿病の割合はあまり変わらない※1。つまり日本人は米国人ほど太っていなくても、糖尿病になりやすいと考えられる」と警鐘を鳴らす。

※1 糖尿病に占める2型糖尿病の割合は90%以上とされ、2024年時点の人口に占める糖尿病のある方の割合は日本で12.0%、米国で15.7%と報告されている4)

歴史的経緯から見る 日本人がより軽度の肥満から健康障害を生じる原因
 横手氏は、日本人がより軽度の肥満から健康障害を生じる原因について、内臓脂肪の蓄積のしやすさを指摘し、その歴史的背景の関与の可能性に触れる。

 人類は長い飢餓の歴史を生き延びてきた。元々は狩猟採集生活を送っていたため、エネルギーを効率よく皮下脂肪として蓄える仕組みが備わっていた。一方、東アジアでは農耕が発達し、食料を倉庫に収めて計画的に食する生活習慣が主となり、余分なエネルギーを身体に貯めなくても済み、環境適応や遺伝子変異の違いを生じた可能性がある。その結果、過剰なエネルギーを内臓脂肪として蓄積しやすい傾向になったと考えられている。

肥満症の診断基準
 日本肥満学会では、肥満症の診断基準について、次のように定めている5)。

 肥満と判定されたもの(BMI≧25)のうち、以下のいずれかの条件を満たす場合に肥満症と診断する。

肥満に起因ないし関連し、減量を要する(減量により改善する、または進展が抑制される)健康障害(表)を有するもの
健康障害を伴いやすい高リスク肥満(ウエスト周囲長によるスクリーニングで内臓脂肪蓄積を疑われ、腹部CT検査によって確定診断された内臓脂肪型肥満)
表. 肥満に起因ないし関連する健康障害1)

診断後に待ち構える肥満症治療薬の大きな課題
 肥満症診療ガイドラインでは、薬物療法について、非薬物療法(食事療法、運動療法、行動療法)で有効な減量が得られない場合に検討するとしており、その適応については「高度肥満で合併症(肥満症の診断に必要な健康障害)を1つ以上、または肥満症で内臓脂肪面積≧100 cm2かつ合併症を2つ以上有する症例」としている6)。

 一方で、肥満症治療薬であるセマグルチド(商品名ウゴービ)やチルゼパチド(同ゼップバウンド)の効能または効果は以下のように設定され、「高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し」という部分が肥満症診療ガイドラインと異なる。

肥満症

 ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。

・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する

・BMIが35kg/m2以上

 こうした差異が肥満症診療にもたらす影響について、横手氏は「肥満症治療薬の適応が学会の提唱する肥満症から狭められている」と指摘する。

 加えて、肥満症治療薬の最適使用推進ガイドラインについて、「投薬期間が制限されて、慢性疾患である肥満症に十分な対応ができないなど、治療を必要とする患者さんが適切な治療を受け難い現状もある」と危機感を示す。

肥満症診療を必要な患者に届けるために
 横手氏は、肥満症診療の今後について、次のように語る。

 「日本独自の肥満と肥満症を明確に区別する考え方は、海外でも認知されつつある。特に東アジア人を中心に、この考え方をさらに広げて、患者さんの健康寿命の延伸に結び付けていくことが大切だと考える。肥満症を治療できる施設が限られている日本では、各地域において病診連携や、病病連携をより密接に行い、自施設では治療できなくても、専門施設との連携で、患者さんを地域で診ていく枠組みも必要だと思う。また、肥満は社会環境や遺伝的素因などさまざまな要因の影響を受けるもので、決して自己責任ではない。こうした正しい理解が肥満症の考え方とともに社会に広がり、患者さんに適切な治療が届くようにすることも非常に重要といえる」

次回予告

投稿者: 大橋医院

2026.05.29更新

本稿では、2026年4月10日(金)~12日(日)に東京で開催された第123回日本内科学会講演会のうち、10日に行われた教育講演「左室駆出率の保たれた心不全の病態と治療、最近の進歩」の内容について報告します。講演は奈良県立医科大学循環器内科学講座の彦惣俊吾教授により行われました。

 心不全は高齢化に伴い近年増加傾向にあり、その適切な診療は喫緊の課題となっています。特に、心臓の拡張機能異常を主因とすると考えられる左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)は増加しています。この病態は複雑で多岐にわたっており、効果が証明された標準的治療が限られているのが現状です。本講演では、HFpEFの病態、診断、治療の最近の進歩と今後の展望について解説されました。

HFrEFとHFpEFで予後に差は無し
 心不全とは、心臓の構造的あるいは機能的異常により生じる症状・徴候(労作時息切れ、呼吸困難、浮腫など)が、ナトリウム利尿ペプチドの上昇、または心臓由来の肺うっ血もしくは体うっ血の客観的所見のいずれか1つ以上で裏付けられる状態と定義されています。

 心不全による入院患者の予後は、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)とHFpEFで差がないとされており、左室駆出率が保たれていても適切な治療が重要です。HFpEF患者の臨床的特徴として、平均年齢が80歳前後と高齢であり女性が半数を占めること、心房細動、高血圧、慢性腎臓病などの合併症の頻度が高いことが挙げられます。また海外の報告では、肥満患者に多いことも示されていました。

 病態としては、加齢・肥満・高血圧などのリスク因子により、細胞・組織レベルで炎症や線維化が生じ、心筋細胞の肥大を引き起こします。その結果、左室構造異常やリモデリングが進行し、心肥大や遠心性拡大の原因となり、拡張障害が生じ、心不全症状の原因となります。さらに、心室機能異常に加えて、心房機能異常、血圧異常、弁膜症といった心臓由来の他の異常や、腎機能障害、貧血、加齢、肥満、フレイルなどの全身性代謝異常も関与しています。このように病態が極めて複雑かつ多様であることが、診断および治療を困難にしている要因の一つとされています。

心疾患と全身疾患が複合し、治療に難渋
 診断においては、心筋症、心膜疾患、弁膜症などの心原性疾患に加え、呼吸器疾患、腎疾患、貧血、肝疾患などの非心原性疾患との鑑別が重要です。しかしこれらの除外が難しい点も課題になっています。積極的に診断するための診断スコアとして欧州からHFA-PEFFスコアが提唱されています。心エコー所見とBNPまたはNT-proBNP値を用いてスコアリングし評価をする方法ですが、心エコーでの詳細な計測が必要であり、専門科による評価が望ましいと考えられています。

 日常診療において、HFpEFは合併症を多く有する高齢患者に多くみられ、薬物治療に対する反応が乏しい症例をしばしば経験します。心エコーやBNPなどの検査を組み合わせることで診断の補助が可能となれば、病態の整理が容易になると考えられます。一方で、心臓以外の原因を完全に除外できない症例も多くあり、心疾患と全身疾患が複合した病態であることから治療に難渋するケースも少なくないと感じています。

HFpEFの薬物治療の有効性は
 2021年時点のガイドラインでは、左室駆出率に基づいて薬物治療が規定されており、HFrEFではACE阻害薬やSGLT-2阻害薬などの基本薬に加え、利尿薬などの併用が推奨されています。一方、HFpEFでは、うっ血に対する利尿薬以外に明確に推奨される薬剤はありませんでした。これは、ACE阻害薬、β遮断薬、ARNIなどの有効性を示す十分なエビデンスが得られていなかったためです。

 その中で、SGLT-2阻害薬は糖尿病の有無にかかわらず、心血管死および心不全入院を約20%低下させることが報告されました。また、非ステロイド型MRAであるフィネレノンも、心血管死および心不全増悪イベントを約15%低下させる結果が出ました。さらに、BMI30を超える肥満患者に対しては、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬がQOLの改善や心不全増悪イベントの低下に寄与したとの報告がでてきました。

 これらの結果を踏まえ、ガイドラインでHFpEFに対してSGLT-2阻害薬がClass I、非ステロイド型MRA(フィネレノン)および肥満症例に対するGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬がClass IIaとして位置付けられました。

HFpEF患者を4つの群に層別化
 しかしながら、すべてのHFpEF患者に適応可能な治療薬はいまだ限られています。その背景には、病態の複雑性と多様性と考えられ、今後は患者の層別化がより重要とされています。例えば、性別による差として、女性ではARNIやスピロノラクトンの効果が得られやすい可能性が示唆されています。

さらに、機械学習を用いた層別化の一例では、HFpEF患者は

① 心房細動などの不整脈を主体とする群
② 高血圧を主因とするVAアンカップリング群
③ 低血圧・低心拍出により心不全入院を繰り返す群
④ 高齢者に多く低栄養やフレイルなど全身状態不良を伴う群

 の4群に分類されました。このうち、③低心拍出群および④全身状態不良群は予後がより不良の結果が出ました。今後、このような層別化に基づく治療選択の発展が期待されます。

 HFpEFはHFrEFと比較してエビデンスに基づく薬剤が少なく、治療に難渋するケースは多いです。近年、新たに使用可能な薬剤が増えてきたことは朗報ですが、現時点でも病態の根本原因が多岐にわたることから、より層別化の進展がすすみ、効果的な治療が容易に判断できるようになれば一般内科でも対応しやすくなると感じました。

個別化治療の確立が求められる
 HFpEFは患者数が増加している一方で、病態が複雑かつ多様であり、診断・治療ともに難しい疾患です。HFrEFと同様に入院後の予後は不良であり、適切な治療介入が重要です。しかし、現時点で広く適応可能な治療薬はSGLT-2阻害薬と非ステロイド型MRA(フィネレノン)に限られており、治療選択肢は依然として少ない状況です。

 今後は機械学習などを活用した患者層別化を進め、それに基づく個別化治療の確立が求められます。また、HFpEFは一般内科領域の要因も多く関与するため、循環器領域に限定せず、多岐にわたる要因から心不全の原因がある可能性を常に念頭に置いて診療にあたることが重要であると考えました。

投稿者: 大橋医院

2026.05.27更新

重篤な配偶者を支える方や亡くされた方は、深い喪失感と強い身体的・精神的ストレスを抱えています。内科医としては、病気の治療だけでなく「心理的な安全基地」となり、患者本人の心身の不調に寄り添い、必要に応じて専門窓口へ繋ぐ対応が求められます。具体的な接し方のポイントは以下の通りです。1. 傾聴と「見守る」姿勢アドバイスより共感: 悲しみ(グリーフ)を「早く治すべきもの」と捉えず、「辛いですね」「眠れないですよね」とありのままの感情を受け止めます。否定や励ましの制限: 「時間が解決する」「頑張って」といった安易な励ましは、かえって負担になることがあります。まずは静かに話を聞きましょう。2. 身体症状へのアプローチ不調のサインを見逃さない: 重度なストレスは、不眠、食欲不振、頭痛、動悸など身体症状として現れます。内科医として、これらの症状を和らげる対症療法を適切に行うことが大きな支えとなります。無理な受診の強要は避ける: ご本人が疲弊している場合、心療内科や精神科への受診を急かさず、「つらい時はいつでも相談していいですよ」と逃げ道を作っておくことが大切です。3. 情報提供と専門機関への橋渡し専門窓口の紹介: 悲嘆が長引く場合や、うつ病のリスクが高いと判断した場合は、無理に抱え込まずに緩和ケアチーム、精神腫瘍科、あるいは地域の専門外来へ繋ぎます。意思決定のサポート: 配偶者の闘病中であれば、治療方針の決定に際して家族が抱える苦悩(ジレンマ)に寄り添い、医療ソーシャルワーカー(MSW)や相談支援センターの活用を案内しましょう。4. 医療者自身のケアご家族を支えることは医療者にも精神的なエネルギーを要します。自身のメンタルヘルスを保ちつつ、チーム医療でサポートする体制を整えることも重要です。遺族ケアに関する詳細なガイドラインや相談窓口は、日本サイコオンコロジー学会 遺族ケアガイドラインや、国立がん研究センターの大切な人を亡くされた方へ 〜相談窓口のご案内〜などが参考になります。7 件のサイト遺族ケアガイドライン - 日本サイコオンコロジー学会がんのみならず,広く. 身体疾患によって重要他者を失ったご遺族に対しての知見が含まれており,成人遺族を対象に広く. 応用...日本サイコオンコロジー学会うつ病患者さんの家族はどう対応したらいいのか、について解説 ...2021/03/08 — はいおはようございます和メンタルクリニックの委員長田裕介ですメンタルクリニックTVへよう。 こそ。 今日は通病患者さんの...3mYouTube·精神科医がこころの病気を解説するCh喪失感による体と心の変化とは? 乗り越える6つの対処法を解説2025/07/04 — 大切な人を亡くしたとき、喪失感は想像以上に深く、心や体、日常生活にも大きな影響を及ぼします。 悲しみや虚無感といった精神...くらしの友7-4.大切な人を失ったご家族へ2024/06/20 — 大切な人を喪失する体験によって起こる、さまざまな心理的・身体的症状を含む情動的(感情的)反応を「グリーフ」と言います。日...UMIN PLAZAサービスすべて表示

投稿者: 大橋医院

2026.05.27更新

拡張期血圧(下の血圧)を下げるいい方法とは?

血圧の話は日々の診療でも悩ましいテーマですよね。ここでは拡張期血圧を「安全に少しでも下げやすくする一般的な方法」にしぼって整理します。

投稿者: 大橋医院

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