CKM症候群とは
AHAが新しい疾患概念として提唱した背景
AHAが新たに提唱したCKM症候群とは、どのような疾患概念なのでしょうか。AHAがこの概念を提示した背景とともに教えてください。
CKM症候群(心血管・腎・代謝症候群)とは、その名の通り、「心血管疾患、腎疾患、代謝疾患は別々に起きているのではなく、相互に増悪し合いながら進行する連関した病態である」として、改めて整理し直した概念です。名前の順と逆に考えると分かりやすいと思います。生活習慣の乱れを起点とした内臓脂肪の蓄積を中心とするメタボリックシンドロームがあり、高血圧や高中性脂肪、高血糖などが起こってきます。そのうち、病気として発症はしないものの動脈硬化が進行し、腎機能も低下してきます。そして、最後に心血管疾患になっていきます。このように長いスパンの全身性の病態として捉えて、早期から介入、継続管理していくことが重要なのです。
AHAが2023年にこの概念を提唱した背景には、肥満・代謝異常保有者の増加に伴って、心疾患などのイベントリスクが増加している中で、診療が臓器別に分断されていると、早期のリスクが見逃されやすくなるという懸念が挙げられると思います(Circulation. 2023; 148: 1606-1635.)。また、早期に介入して生活習慣の乱れを改善することで将来のリスク軽減が可能なことに加えて、リスクを抱えた人に臓器横断的に作用する薬物が登場してきたことも大きいと思います。
心血管疾患、腎疾患、代謝疾患をそれぞれ個別ではなく、重複した病態として扱うことの臨床的な意義はどのような点にあるのでしょうか。
個別疾患ではなく、CKM症候群として診療を行う最大の意義は、診療時の検査値だけでなく、将来の進行を見据えた予防医療につなげられる点です。
例えば、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬は服薬開始時に腎機能が少し低下しますが、あくまでも一時的なもので、経過とともに回復します。このため、腎機能が保たれている早期の段階であれば、必要な患者さんに問題なく処方できます。しかし、すでに腎機能がかなり低下してしまった段階になると、少しのeGFR(推算糸球体濾過量)の低下でも透析に直結することになるため、有効な治療手段と考えられても処方を躊躇することになります。
先日診察した外来患者さんにもいらっしゃいましたが、「気が付いた時には病態が進行した状態」といったケースが、CKM症候群という連関した病態として扱うことで減少することが期待できます。
軽度の肥満や境界型糖代謝異常であっても、腎機能や血圧、脂質などの悪化が組み合わさると、動脈硬化性疾患や心不全、心房細動のリスクは加速度的に高まります。現状では保険適用上の問題がありますが、CKM症候群としてまとめて捉えることで、体重管理、生活習慣の指導、血圧・脂質・糖代謝を是正して、心・腎・代謝を同時に守る戦略を立てやすくなると考えています。
2023年にAHAが出した論文の中でも、ライフスパンで捉えることや、若年時からリスク評価を行い、患者教育をしていくことの重要性が強調されており、長い時間軸で病態を捉えることがCKM症候群のポイントです(Circulation. 2023; 148: 1606-1635./Circulation. 2023; 148: 1982-2004.)。


