2026.06.02更新

1)対応に悩む言動があったら、まず「せん妄」を考える
認知症または認知症の可能性がある入院患者に興奮や徘徊(歩き回る)、幻覚・妄想などをみとめた際、BPSD だけでなく、せん妄の可能性が十分考えられる。
BPSD とせん妄には、共通する症状がきわめて多い(表1)。
実臨床でせん妄は高頻度にみられるだけでなく、直接因子や促進因子の除去によって改善が見込めることから、安易にBPSDと考えず、まずはせん妄の評価を確実に行う必要がある。
表1 対応に悩む言動とその鑑別

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実臨床において、入院患者に何らかの精神症状をみとめた際には、鑑別診断の筆頭に「せん妄」をおくことが何よりも重要です。

(2)せん妄とは?
せん妄とは、身体疾患や薬剤、手術などを原因として、軽度から中等度の意識障害をきたした病態である。
注意障害、記憶障害、見当識障害、睡眠・覚醒リズム障害、幻視、感情の障害といった多彩な症状がみられる。
認知症との違いは、これらの症状が短期間のうちに出現し(急性発症)、夕方から夜間にかけて増悪すること(日内変動)である。
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もしご家族から「うちのお父さん(患者)、急に認知症になったのでしょうか?」と聞かれた場合、どのように返事をしますか? ご家族は、普段と様子が違うからこそ心配しているはずなので、この質問自体が急性発症、つまりせん妄であることを教えてくれているのです。

(3)せん妄への適切な対応とは?
せん妄は、準備因子・直接因子・促進因子の3因子で発症する。
せん妄を焚き火で例えると、準備因子(起こりやすい素因)が「薪」、直接因子(引き金となるもの)が「ライター」、促進因子(誘発・悪化・遷延化につながるもの)が「油」となる。
せん妄を治すには、ライターにあたる直接因子の除去が必須である。
薬物治療はあくまでも対症療法にすぎないため、直接因子が除去されたら、速やかに薬物の減量・中止を試みることが大切である。
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せん妄を3因子で理解しておくことは、効果的・効率的なアプローチにつながります。ちなみに、直接因子の同定・除去には医師と薬剤師が、同じく促進因子については看護師が主な役割を担います。

coffee break せん妄あるある
①見当識を確認している際、隣のベッドの患者さんが代わりに返事をしてしまう
 耳が遠い患者さんに大声で話しかけると、このようなことがよく起こります。
ちなみに、「3月13日」が全然違う日にちのこともあり、むしろ隣の患者さんの方が気になってしかたありません…。

②「虫がいる!!」と患者さんが天井を指差すので確認すると、本当に虫のように見える模様である


 あなたの病院の天井はいかがでしょうか?

 一般病院の約9割は、このような模様になっています(筆者推測)。防音効果があるそうなのでしかたないのですが、ベッド上で1 日中天井を眺めていると、この模様がだんだん虫に見えてきそうです…。

(4)せん妄のサブタイプとは?
せん妄は、患者が示す運動症状によって、①過活動型せん妄、②低活動型せん妄、③混合型せん妄の3つに分けられる(表2)。
過活動型せん妄では興奮や暴言・暴力などがみられる一方、低活動型せん妄は覚醒度の低下や活動性の減少が主たる症状である。
表2 せん妄のサブタイプ別の症状

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医療者にとって、興奮や暴言・暴力などをきたす過活動型せん妄は対応に困る一方、低活動型せん妄は見逃されやすいことが知られています。低活動型せん妄でも患者さんはつらい思いをしているため、適切な介入が求められます。

Advice 「低活動型せん妄に気づくポイントとは?」
 低活動型せん妄は、過活動型せん妄に比べて症状が目立ちにくく、かつ医療者が対応に悩むことも少ないため、臨床現場で見逃されやすいことが知られています。そこで、「低活動型せん妄の可能性を疑うこと」が何よりも重要です。

 低活動型せん妄の患者さんは、1日中ベッド上で過ごし、こちらの問いかけに対しても静かにうなずくなど、一見するとこちらの言うことを理解しているように見えます。このような場合でも、まずは低活動型せん妄の可能性を疑い、その一挙手一投足を注意深く観察する必要があるのです。

 具体的には、

話をしている最中にもかかわらずテレビの方に視線が移る
些細な言葉の言い間違いや聞き間違いがある
質問に対する返事に時間がかかる
 など、低活動型せん妄で高頻度にみられる注意障害を見逃さないことが大切です。なお、医療者が話しかけたりリハビリテーションを行ったりしている最中にもかかわらず、患者の目がトロンとしてくるなども、低活動型せん妄を強く疑う所見と言えるでしょう。

 低活動型せん妄では、「口数が少ない」「周囲に対する無関心」「活動性の低下」「臥床傾向」など、うつ病に似た症状がきわめて多いため、誤診に注意が必要です。低活動型せん妄とうつ病の違いは表3の通りです。発症・経過などは重要な鑑別ポイントですが、なかでも幻視は自ら訴えないことも多いため、積極的に尋ねてみるのがよいでしょう。

表3 低活動型せん妄とうつ

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投稿者: 大橋医院