2024.04.12更新

【症例】8歳の女児。3年前に喘鳴があり、吸入・点滴で改善なく、気管支喘息で入院。吸入ステロイド薬を開始し、経過良好で減量し、1年前に吸入ステロイド薬を中止していた。1カ月以上咳嗽が続き、咳による睡眠障害もあって受診。発熱、喘鳴はなし。鼻の症状、頭痛なし。3種混合(DPT)ワクチンは追加接種まで済んでいる。

気管支喘息かも?
 気管支喘息での入院歴があり、咳嗽が慢性的に続き、QOLの低下が見られます。気管支喘息の急性発作を繰り返している可能性があります。喘鳴を聴取しないことから、気道過敏性の咳嗽の可能性があります。Waters法でははっきりした副鼻腔炎は認められません。

気管支喘息と鑑別を要する疾患
 『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023』1)によれば、気管支喘息の鑑別疾患として、鼻炎、副鼻腔炎、クループ、気管支炎、急性細気管支炎、肺炎、気管支拡張症、肺結核などの感染症があります。発熱なく、咳がひどい感染症としては、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルス、マイコプラズマ、クラミジア、百日咳などの病原体の関与が疑われます。この症例では、ワクチンの接種歴があるものの、こうした病原体の抗体を測定しました。

「診断:百日咳」
 その当時の診断基準での血液検査で東浜株、山口株に対する抗体が1280倍と高値であったことから百日咳と診断されました。現在であれば、百日咳菌LAMP法(loop-mediated isothermal amplification)やPCR検査で診断可能です。また、百日咳の培養は Bordet-Gengou血液寒天培地や市販のボルデテラCFDN寒天培地など、専用の分離培地が必要になり、疑って培養検査をする必要があります。

 血液検査ではPT-IgGを測定し、ワクチンの接種歴を確認の上、その測定値によって百日咳と診断されます。本症例は痙咳期になっているので、クラリスロマイシンを内服しましたが、軽快するのには時間がかかりました。しかし、感染拡大の予防のために抗菌薬は必要になります。

 気管支喘息の既往歴のある患児に再び咳が続いた場合、気道過敏性が残っている可能性もあり、気管支喘息の再燃・再発と考え、気管支喘息の長期管理をしていくことになります。しかし、吸入ステロイド薬などの治療効果が乏しいときには、こうした慢性咳嗽を起こす病原体を診断し、必要な場合は抗菌薬を使用することで、症状が軽快したり、感染拡大を防いだりすることができるので、しっかりとした問診とフォローが大切になります。

投稿者: 大橋医院