大橋院長の為になるブログ

2023.06.13更新

CAR-T細胞療法とは

がんの治療において免疫療法が一躍主要な治療選択肢の一つとなってきたところです。現在実臨床にて主に行われているのは免疫チェックポイント阻害薬であり、こちらはわかりやすく言うとがんに対する免疫系のブレーキを外すことで抗腫瘍免疫を高めることで治療に結びつけるというものです。しかし、この手法だけでは抗腫瘍免疫が十分でない疾患も多いのが現実です。

そのような場合に一つ考えられるのが、抗腫瘍免疫を発揮する免疫担当細胞を体外で増幅して体内に戻すというやり方です。単に体外で増幅するだけでは体内に戻しても効果が十分発揮されない場合がほとんどであるため、免疫担当細胞の機能をさらに高める為の一つの手段としてキメラ抗原受容体 (Chimeric antigen receptor、略してCARと呼ばれる)をT細胞に導入するという手法があります1。

          
キメラ (chimera) とは、同一個体内に異なった遺伝情報を持つ細胞が混じっていることと言われるように、CARはいくつかの遺伝子を人工的に組み合わせた受容体になります。一般的に言われるCARにおいては細胞外部分はがんに発現する抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体由来のシングル-チェーン変異部断片 (single-chain variable fragment、scFvと呼ばれる)、そして細胞内部分はT細胞の活性化シグナルを伝達するドメインが組み込まれています。

FDAにて承認済 CD19 CAR-T細胞療法

CAR-T細胞療法で最も研究が進んでいるのが、CD19 CAR-T細胞療法です。再発・難治性の急性リンパ芽球性白血病(acute lymphoblastic leukemia、ALL)においては治療選択肢が限られ、その予後は不良と言わざるを得ない状況でした。ALLの中でもB細胞性のALL(B-ALL)においてはCD19という表面抗原がほぼ全例で発現しています。その抗原を標的としたCD19 CAR-T細胞療法の開発が進んでいます。これまでにいくつかの臨床試験にて再発・難治性のB-ALLにおいて驚くべき有効性が報告されています2。まだまだ長期的な成績は臨床研究での評価が行われている段階ではありますが3、これまでの非常に高い有用性からFDAでも早期に承認に至ったようです。

CAR-T細胞療法の問題点

CAR-T細胞療法は非常に高い有効性を示しますが、問題点もあります。

<特徴的な合併症>

まず、cytokine release syndrome(CRSと略される)が挙げられます。CAR-T細胞が一気に活性化しサイトカインを放出すると高熱、低血圧、酸素化低下などを起こします。それに対しては抗IL-6受容体抗体やステロイド投与などが行われます。

その他にはCD19陽性細胞全てが除去されるような形になるので正常の抗体産生が抑制されてしまうということもあります。

<コスト>

もう1点重要な問題点としてはコストの問題が挙げられます。1回の治療が数千万円ということでアメリカ以外の国でどのように承認されるのかが関心を持たれています。

CAR-T細胞療法の今後の展望

現時点で実用化がされているのはCD19 CAR-Tのみですが、その他の疾患・抗原に対するCAR-T細胞療法の開発が進んでおり、例えば多発性骨髄腫などに対するCAR-T細胞療法も有用性が報告されていたりします4。

また、CAR-Tの改良も盛んであり、細胞内ドメインに関しても当初はCD3ζ-チェーンから得たものが用いられていましたが、さらに活性化シグナルを改良する為に第二世代CARではCD28や4-1BBなどが組み込まれています。各々をさらに複数組み合わせたような第三世代の開発も行われています。このような構造を有するCARをT細胞に導入することで、抗原を発現するがんをCARが認識した際に非常に強いT細胞の活性化・増幅が起こり、がんを排除するということになります。

その一方で高コストを改善すべく遺伝子導入の手法の開発なども進んでいます。CAR-T細胞療法は効果の面で非常に期待される治療法ですが、コストの面が改善されなければ数多くの疾患に対するCAR-Tが全て保険適応となることは困難とも予想され、低コスト化が進むことが望まれるところです。

 

投稿者: 大橋医院

2023.06.12更新

アトピー性皮膚炎患者は静脈血栓塞栓症に注意すべき?


アトピー性皮膚炎(AD)の疾病負荷としては、痒みや皮疹によるQOL(生活の質)の低下が注目されやすい。

しかし、AD患者では炎症マーカーや血小板活性化マーカーが上昇することも知られている。この所見は静脈血栓塞栓症(VTE)の病態生理でも重要だが、ADがVTEの発症に繋がるかどうかについては一致した見解が得られていなかった。


 本研究では、ADとVTEの関連について、台湾の健康保険研究データベース(National Health Insurance Research Database;NHIRD)を用いた過去起点のコホート研究が行われた。この大規模なデータベース研究により、ADとVTEの関連について有用な情報が得られるものと期待された。

 

投稿者: 大橋医院

2023.06.12更新

腸捻転症(チョウネンテンショウ)の原因
手術後の腸管の癒着や、潰瘍性大腸炎、腸チフスなどの炎症性の病気によっておこることが多い。
腸捻転症(チョウネンテンショウ)の症状
激しい腹部痛、吐き気や嘔吐、便秘など。なんらかの原因で腸管膜を軸として腸がねじれてしまうもの。
腸捻転症(チョウネンテンショウ)の治療
大腸内視鏡による減圧・整復がおこなわれるが、再発も多く、最終的に外科的処置がおこなわれることが少なくない。
受診科目
消化器内科

外科

 

投稿者: 大橋医院

2023.06.12更新

HFpEF*とは、心臓が拡張する機能が低下しているものの、心臓が血液を全身に送り出すポンプ機能は保たれた心不全のことです。“拡張性心不全”と呼ばれることもあります。

*HFpEF は、1)臨床的に心不全症状を呈し,2) 左室駆出率が正常もしくは保たれている,3)左室拡張能障害を 有する,の3点を特徴とする心不全のことです。日米欧のガイドラインでは左室駆出率が50%以上を基準値として用いています。

【急性・慢性心不全診療ガイドラインより引用】

これまで、心不全は心臓のポンプ機能が低下することによって引き起こされる病気と考えられてきましたが、さまざまな研究によって心不全患者の約半数はポンプ機能が保たれていることが分かってきました。そのため、現在ではポンプ機能が低下した心不全とポンプ機能が保たれている一方で拡張する機能が低下した“HFpEF”を分けて考えるのが一般的です。

この病気は、高血圧に併発することが多く、高齢の女性が発症しやすいとされています。

心臓は筋肉でできており、その筋肉が収縮することで全身に血液を送り出します。一方で、心臓は収縮と拡張を一定のリズムで繰り返しており、拡張すると血液が心臓に戻っていきます。HFpEFを発症すると心臓へ戻る血液が少なくなるため、むくみなどの症状を引き起こします。HFpEFは早い段階では症状が出にくいものの、進行すると肺に水がたまるなど重篤な状態になりやすいのが特徴です。また、ポンプ機能が低下した心不全と異なり、HFpEFでは有効な薬物治療が確立されていませんでしたが、2021年以降いくつかの有効な内服薬が使用できるようになりました。

原因
HFpEFは心臓の“左心室”が硬く広がりにくくなることによって引き起こされる心不全のことです。

心臓には左心房・左心室・右心房・右心室という4つの部屋があり、左心室は大動脈に連なって全身に血液を送り出すポンプ機能を担う部位です。HFpEFでは、左心室が収縮する力は保たれているためポンプ機能は正常ですが、左心室が硬くなって拡張(血液が静脈から心臓に戻ることで起こる)する力が弱まることで、血液が心臓に流れ込みにくくなります。

HFpEFは高齢の女性に多い病気とされています。もっとも多い原因は高血圧ですが、糖尿病、肥満などの生活習慣病や慢性腎臓病、弁膜症や心筋梗塞などの心臓の病気も発症のリスクを高めると考えられています。

症状
HFpEFでは、心臓が全身に血液を送り出す力は保たれているため、ほかのメカニズムで発症する心不全よりも症状が現れにくいのが特徴です。

しかし、進行すると心臓に血液が戻る力が弱くなって肺から心臓へスムーズに血液が流れなくなり、肺に水がたまる“肺うっ血”を引き起こします。その結果、息切れや呼吸困難などの症状が現れるようになります。また、左心室だけでなく、心臓のほかの部位にも多くの負担がかかって機能が低下していくため、全身に血液が停滞しやすくなってむくみを引き起こすことも少なくありません。ポンプ機能が保たれているとはいえ、HFpEFは発症すると予後が悪いとされています。

検査・診断
HFpEFが疑われる場合は、以下のような検査が行われます。

心エコー検査
心臓の動きや大きさだけでなく、“左室駆出率”などの心機能も評価できる検査です。簡便に行うことができるため心臓の機能を評価するのに広く用いられます。HFpEFでは心臓が血液を送り出す能力を示す左室駆出率が50%以上に保たれていることが診断基準の1つとなります。

血液検査
HFpEFの確定診断を血液検査のみで下すことはできませんが、心臓へかかっている負担の指標である“BNP”という心臓の筋肉からでるホルモン量の測定などが診断に役立ちます。また、心臓の筋肉へのダメージなどを評価するためにも血液検査が必要となります。

画像検査
心臓の大きさの異常などを評価するためにX線やCTなどの画像検査を行うことがあります。しかし、HFpEFは心臓の大きさなどに異常をきたしにくいため、画像検査では異常がはっきり分からないことも少なくありません。

心臓カテーテル検査
足の付け根や腕・手首などの比較的太い動脈や静脈から挿入したカテーテル(医療用の細い管)を心臓まで至らせ、造影剤を注入して血管の状態や心臓の動きを調べたり、心室や心房の圧力や心拍出量を測定することで心臓の機能を調べたり、心臓の筋肉を少し採取(心筋生検)することもできる検査のことです。心エコー検査ではできない評価も行えますが、体への負担が小さくはない検査であるため、全身の状態によっては行えないこともあります。

治療
HFpEFには、近年まで有効な内服治療が確立しておらず、治療は肺のうっ血やむくみなどを改善するための利尿薬や血管拡張薬などを用いた対症療法が主体でした。

また、肺のうっ血が強くなると呼吸困難などの症状が現れるようになるため、酸素吸入や人工呼吸器などによる呼吸管理が必要になるケースもあります。しかし、2021年以降いくつかの内服薬の有効性が証明され、急性・慢性心不全診療ガイドラインでも使用が推奨されるようになりました。

予防
HFpEFは明確な発症メカニズムが不明な点もありますが、高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病によって発症リスクが高まると考えられています。そのため、HFpEFを予防するには、食事、運動習慣、ストレス、喫煙などの生活習慣を見直すことが必要です。

また、この病気は早期の段階では症状が現れにくいですが、運動時に息切れしやすくなったなど何らかの異常を感じたときは軽く考えず、早めに医師に相談するようにしましょう。

投稿者: 大橋医院

2023.06.12更新

#メリスモンとは:プラセンタとは
プラセンタとは、お腹の中の赤ちゃんに栄養や酸素を運ぶ「胎盤」のことです。胎盤は、細胞を活性化させて成長させるたんぱく質やアミノ酸、ビタミン、核酸などが豊富に含まれています。プラセンタエキスは、ヒト胎盤から抽出した有効成分エキスです。プラセンタエキスは、更年期障害の治療薬として認可を受け、幅広い症状に効果が期待できます。当院では、厚生労働省から認可されているメルスモンを使った治療をしています。日本国内の産婦人科において、正常分娩した健康な母親の胎盤を使用しているので、ご安心ください。
更年期障害について
更年期は、一般的に45~55歳くらいで、閉経前の5年と閉経後の5年といった10年間を指します。女性は、40歳代から閉経に向けて女性ホルモンの分泌が低下し、身体のあらゆる不調を起こします。主な症状は、異常な発汗(ホットフラッシュ)・ほてり・のぼせ・イライラ・不安・睡眠障害・頭痛・めまい・慢性的な肩こり・頻尿・尿失禁・性交痛などが見られます。女性が閉経すると、さらに女性ホルモンの分泌量が低下し、骨粗鬆症や脂質異常症の発症リスクが高まります。更年期の過ごし方は、これらの症状に付き合いながら、疾患の発症や進行を予防する非常に重要とされています。
更年期障害の症状
更年期に日常生活に支障のあるような不快症状がある状態を更年期障害と言います。症状には個人差が大きく、下記の症状が一般的に悩まれる症状として挙げられます。更年期における症状で気になることがありましたら、当院にお気軽にご相談ください。
• 突然、異常に汗をかく(ホットフラッシュ)
• 顔がほてる
• 急に暑さを感じる
• 手足や腰が冷える
• 動悸や息切れがある
• 怒りっぽくなり、すぐにイライラする
• 不安になり、憂鬱になる
• 寝つきが悪くなる、すぐに目が覚めて眠れない
• 頭痛・肩こり・腰痛・めまい・吐き気・手足の痛みがある
• 疲れやすい・疲労感・強い倦怠感がある
メリスモン療法:プラセンタ療法
医療機関で使用されるプラセンタとは一般に、母体が健康で満期出産のヒト胎盤から抽出された水溶性物質のことを指します。現在、日本の厚生労働省により認可されているプラセンタの注射剤は『ラエンネック』と『メルスモン』のみとなります。
ラエンネックは「慢性肝疾患における肝機能の改善」に、メルスモンは「更年期障害、乳汁分泌不全」にそれぞれ保険適応がございますので、診察時に御相談下さい。
また、保険適応外(自費診療)にはなりますが、アンチエイジングや美肌効果、血行促進、抗アレルギー・抗炎症効果を期待して、美容目的での使用も可能です。
① 免疫賦活作用
抵抗力・免疫力を高めます。
② 活性酸素除去作用
活性酸素を除去してアンチエイジングに有効です。
③ 強肝・解毒作用
肝臓機能を強化します。
④ 乳汁分泌促進作用
乳汁分泌促進します。
⑤ 疲労回復作用
疲労回復に有効です。
⑥ 美肌促進作用
美白効果が期待できます。シミ、しわ、にきびなどを抑制します。
⑦ 抗アレルギー作用
アレルギーを抑制します。

 

投稿者: 大橋医院

2023.06.10更新

SGLT2IはHFPET患者において利尿剤を減らす。Loop利尿剤の効果を増大。

急性心不全に対して、SGLT2阻害剤は、急性心筋梗塞の発症を減らす。

投稿者: 大橋医院

2023.06.10更新

右手を痛がる女児を肘内障と診断するも、翌日の診察で骨折だと判明
 1990年代前半、大学院を修了した私は地方の救急病院に赴任した。卒後6年目で29歳。基本的に何でも断らない救急病院だったので、月5-6回の当直をこなしながら忙しい毎日を送っていた。

 ある日の当直の夜に「急に右手を動かさなくなった3歳の女児」が、心配そうな母親に連れられて受診した。ベテラン看護師が「肘内障かな?」と言いながら、女児を診察室に誘導。女児は泣きながら、痛い右手を左手で支えて診察室に入室した。

 母親に、女児の手を引っぱったのかと質問したが「引っぱっていない」と返答。さらに、転倒したかどうかも質問したが「いつもそばにいるわけではないので不明」と返答された。肘内障は明らかな牽引動作がなくても発症することがあり、今回のケースも年齢と痛い右手を左手で支えながら診察室に入室するなどの特徴的な肢位から肘内障と判断した。

 念のため衣服の袖を上げてもらい両上肢を観察したが、腫脹・皮下出血などの外傷の痕跡は認めない。そこで肘内障の徒手整復をトライしたが、明らかなクリックを認めなかった。

 その後何回か徒手整復をトライしたが整復感は得られず、女児の苦痛は改善しなかった。そこで私は女児の右上肢を三角巾で固定し、明日もう一度整形外科の来院を指示した。その後も次々と救急患者が来たのだが、その女児がどうなったのか気になりながら眠りについた。

 翌日、その女児が再診された。「昨日帰ってから右肩を痛がる」と母親が訴えた。主訴が変わったので、私は右肩を診察する目的で女児が上半身裸になるよう、母親に服を脱がせてもらった。

 上半身と両腕を観察すると右鎖骨が少し腫れていた。まさかと思い、両鎖骨のレントゲンを撮影すると、右鎖骨骨幹部に軽度の変形を認めた。診断は「右鎖骨骨幹部骨折」だった。母親に外傷の既往を改めて問診し直したが、不明とのことだった。

 私は「外傷による右鎖骨骨幹部骨折で、軽度のずれがあります。三角巾で3週間固定すれば治ります」と説明。3週後のレントゲンで仮骨形成が見られ、痛みは消失していたので治療終了となった。

こうすればよかった
 受傷機転が不明な小児は、より広範囲を見て診察すべき
 当直帯は外来と違いどんな患者が来るかわからないので、過去の経験則が重要となる。当時私は卒後6年目で、肘内障の経験は10例程度だった。

 本症例において、一番「こうすればよかった」と思うポイントは「小児の受傷機転が不明な上肢の痛みに対しては、上半身裸にして診察すること」に尽きると考える。それを励行していれば、初診時に右鎖骨骨幹部骨折の診断がついていただろう。

 当直帯に来た患者は「翌日必ず通常の外来に受診するよう指示する」という原則を守ったので、何とか面目を保てたケースだったが、他院で診断されたら周囲に「整形外科医失格」と烙印を押されても仕方のない対応だった。

 整形外科医は骨折を絶対に見逃してはいけない、と当時教わっていた。それは今でも変わらない。認知症患者が増え、発見が難しい骨折が増えたが、それでも骨折を見逃さないよう細心の注意を払っている。

本症例から学べたこと
 経験不足だとしても、責任を持って診察しよう
 言い訳となってしまうが、本症例で初診時に右鎖骨骨幹部骨折と見抜けなかったのは、ベテラン看護師が初見で言った「肘内障かな?」という言葉の影響も大きかった。それまで私は大学院生として大学病院にいたので、救急病院での勤務は初めてだった。その地域の特徴や患者の性格・家族構成などはベテラン看護師が良く知っており、いろいろ教えてもらった。

 とはいえ診察の主役は医師であり、その地域の事情に精通したベテラン看護師の言葉は参考程度にし、自分が責任を持って診察しなければいけない。

 また「後医は名医」である。要するに、後で診察したほうが最初に診察するよりも易しいという意味で、本症例もまさにその通りになった。

 当直帯で自分が診た患者に、次の日にもう一度通常の外来に来るよう指示するのは、今も昔も変わらない鉄則である。約30年前の症例であるが、印象に残っているので今回紹介した。

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投稿者: 大橋医院

2023.06.09更新

腹部内のがんに対して手術を受ける患者235例(年齢中央値65.0歳、男性60.0%)を対象に、専門家による緩和ケアの早期介入の有効性を単施設無作為化試験で検討。手術はがんの治癒または持続的コントロールを目的とした。術前相談および術後の緩和ケア介入を行った。Functional Assessment of Cancer Therapy-General(FACT-G)試験転帰指数(TOI)を用いて、術後90日時点の身体的および機能的QOLを通常ケアと比較した。

 その結果、FACT-G TOIの調整後スコア中央値に両群で差は認められなかった(介入群:46.77[95%CI 44.18-49.04] vs. 通常ケア群:46.23[同43.08-48.14]、P=0.46、オッズ比1.17[95%CI 0.77-1.80])。FACT-Gスコアで評価した全体のQOL(オッズ比1.09[95%CI 0.75-1.58])、在宅生存日数(同0.87[0.69-1.11])、または1年総生存率(ハザード比0.97[95%CI 0.50-1.88])にも、緩和ケアによる改善は認められなかった。

 

投稿者: 大橋医院

2023.06.09更新

メルスモンの作用機序は、まだ充分明らかではない が、細胞呼吸促進、創傷治癒促進、抗疲労などの諸作 用が認められており、これら多種多様の生物学的活性 作用が広汎な生体過程への賦活作用を示し、組織細胞 の新陳代謝を高め、身体の異常状態を正常化するもの と推測される。

投稿者: 大橋医院

2023.06.09更新

亜急性甲状腺炎は、甲状腺に炎症が生じる病気です。「亜急性」は、急性よりも長く続きますが、慢性的に続くわけでもないことを指します。ウイルスの感染が原因と考えられていますが、明らかにはなっていません。症状としては、甲状腺の痛み・発熱・血液中の甲状腺ホルモンの上昇があります。男性に比べて女性の発症率が高く、特に30〜40代の女性に発症しやすいといわれています。

亜急性甲状腺炎は基本的には一過性の病気であり、症状は1~2か月ほどの経過で落ち着きます。似ている病気にバセドウ病がありますが、両者の治療方法は全く異なるため、不要な薬剤の使用を避けるためにも両者の見極めは非常に重要です。

原因
甲状腺は首の前方に位置する小さな臓器で、甲状腺ホルモンと呼ばれるホルモンを分泌します。甲状腺ホルモンは代謝を促進させることで、体を活発にします。また、甲状腺ホルモンは脈を速めるなど交感神経を刺激し、体の活動状態を調整します。つまり、甲状腺ホルモンは、体のアクセルを踏む、体を元気にするような役割を果たしています。甲状腺ホルモンが出すぎている(甲状腺機能亢進症)と、代謝が高まるため体温が上昇し、多くの汗をかきます。また、交感神経が活性化されるので脈が速くなり、活気が出ます。

正常だと甲状腺ホルモンの分泌量は厳密に調整されますが、亜急性甲状腺炎では、炎症により調節機能とは無関係に、大量の甲状腺ホルモンが血液中に放出されてしまいます。その結果、甲状腺ホルモンに関連した症状が過剰に現れてしまいます。風邪の後、ウイルスが甲状腺に入ることで炎症を起こすのではないかと考えられています。

症状
亜急性甲状腺炎は、上気道感染症に引き続き発症することがあります。初発症状は甲状腺周辺の首の痛みで、徐々に増強することもあれば急激な痛みとして発症することもあります。亜急性甲状腺炎に関連した痛みは激烈なことが多く、首を触られるだけでも嫌だというケースも多いです。また、あご・耳・肩などにも痛みが生じることがあります。首をのけぞる、咳をするなどの動作がきっかけとなって症状が増悪することもあります。その他、発熱や食欲不振、筋肉痛もよくみられる症状です。

亜急性甲状腺炎のおよそ半数の患者さんに、甲状腺機能亢進に関連した症状が出現します。甲状腺ホルモンが大量に放出された状況は、患者さんにとって常時走っているような状態に類似しています。そのため、

脈が速くなる
心臓がドキドキする
疲れやすい
眠れなくなる
などの症状がみられることもあります。

亜急性甲状腺炎に関連した痛みは一過性であることが多く、2〜8週間ほどの経過で改善します。甲状腺ホルモンが出過ぎた後で甲状腺ホルモンが逆に低下する方もいますが、多くの場合は時間経過と共に甲状腺機能は正常に回復します。一部の患者さんでは、永続的な甲状腺機能低下症を続発したり、亜急性甲状腺炎が再発したりすることもあります。

検査・診断
亜急性甲状腺炎では、血液検査や超音波検査などが行われます。血液検査では体内で炎症反応が強く出現していることを反映して、CRPや赤沈せきちんと呼ばれる炎症項目が異常高値を示します。また、亜急性甲状腺炎では大量の甲状腺ホルモンが血液中に分泌されている状態であり、甲状腺ホルモン(T4やT3と呼ばれます)が高くなっています。甲状腺ホルモンはTSHと呼ばれるホルモンの調整を受けているのですが、亜急性甲状腺炎ではTSHが低下していることも特徴のひとつです。

亜急性甲状腺炎では、甲状腺の腫れがみられたり、炎症に関連した所見を認めたりすることがあります。時にラジオアイソトープ検査が行われることもあります。

治療
治療の基本は、痛みに対する疼痛管理と甲状腺機能亢進に関連した症状に対する対症療法が中心です。亜急性甲状腺炎の痛みは激烈であることが多く、その場合は解熱鎮痛薬が適宜使用されます。痛みの症状が強い場合には、炎症の沈静化を期待してステロイドが処方されることもあります。甲状腺機能亢進症状は、基本的には一過性であり、また許容できる範疇であることも多いため、無治療で経過をみることもあります。動悸や手足の震えなどが強い場合は、β遮断薬と呼ばれる薬剤を使用することがあります。

亜急性甲状腺炎の急性期治療において重要なのは、抗甲状腺薬が必要なバセドウ病との鑑別を誤らないことです。亜急性甲状腺炎は一過性の甲状腺機能亢進症であり、抗甲状腺薬は不要です。長期的には甲状腺機能低下症を発症する方もいます。その場合には、適宜甲状腺ホルモンの補充療法も検討されます。

医師の方へ
亜急性甲状腺炎の詳細や論文等の医師向け情報を、Medical Note Expertにて調べることができます。

投稿者: 大橋医院

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