<虚血性心疾患における心電図 U 波の臨床的意義>
要旨 : 心電図 U 波は,T 波に引き続く小さな波形で,成因もまだ解明されていない.従来,U 波が陰転する 陰性 U 波は,虚血性心疾患の診断に有用であるとの報告があるが,詳細な検討がなされていなかった.そこで, 虚血性心疾患における陰性 U 波および陽性 U 波(異常陽性 U 波)の臨床的意義について,①責任冠動脈狭窄 枝の推定が可能か ? ②左前下行枝の近位部狭窄と遠位部狭窄の鑑別が可能か ? ③左室後壁の虚血を示す,右冠 動脈狭窄と左回旋枝狭窄の鑑別が可能か ? ④経皮的冠動脈形成術(PCI)の治療効果判定に有用か ? の4点につ いて検討をした結果,陰性 U 波および陽性 U 波が臨床的に極めて有用であった.
心電図 U 波は,T 波に引き続く小さな波形で, 1903年に Einthoven(心電図の父と呼称されてい る)により命名された1~2) .U 波は T 波より小さ く,その電位の大きさは,T 波の4~25% の範囲 内にあり,V2~ V4誘導で最も電位(波高,振幅) が大きい. 正常 U 波の極性は T 波の極性と同方向で, aV R 誘導以外のすべての誘導で陽性であり, 加齢の影響受け,50歳代以降の出現率は減少し, U 波の電位は小さくなる. U 波の電位は,徐脈あるいは運動時では増高 し,頻脈時には,U 波は次の P 波と融合するため, その波形が明らかに認められないことがある. 従来,U 波の臨床的意義としては,低カリウム 血症における U 波の増高,虚血性心疾患におけ る陰性U波の有用性についてのみ述べられていた. 著者らは表1に示したように,各種の疾患で U 波 の検討を行い,陰性U波,陽性U波(異常陽性U波) の臨床的意義の高さを示した3~5) .すべての疾患 についての有用性を論ずるのは紙面に限りがある ので,今回は虚血性心疾患に絞って,今までの研 究で得られた知見を述べる.
心電図 U 波は,T 波に引き続く小さな波形で, 1903年に Einthoven(心電図の父と呼称されてい る)により命名された1~2) .U 波は T 波より小さ く,その電位の大きさは,T 波の4~25% の範囲 内にあり,V2~ V4誘導で最も電位(波高,振幅) が大きい. 正常 U 波の極性は T 波の極性と同方向で, aV R 誘導以外のすべての誘導で陽性であり, 加齢の影響受け,50歳代以降の出現率は減少し, U 波の電位は小さくなる. U 波の電位は,徐脈あるいは運動時では増高 し,頻脈時には,U 波は次の P 波と融合するため, その波形が明らかに認められないことがある. 従来,U 波の臨床的意義としては,低カリウム 血症における U 波の増高,虚血性心疾患におけ る陰性U波の有用性についてのみ述べられていた. 著者らは表1に示したように,各種の疾患で U 波 の検討を行い,陰性U波,陽性U波(異常陽性U波) の臨床的意義の高さを示した3~5) .すべての疾患 についての有用性を論ずるのは紙面に限りがある ので,今回は虚血性心疾患に絞って,今までの研 究で得られた知見を述べる.U 波の成因については,著者も確証を得ていな いが,次のように考えている. ①大動脈弁逆流,高血圧などの心筋ストレッチに よる陰性 U 波の成因は心室筋後電位説で説明 ができる. a)成犬で大動脈弁逆流を作成すると,陰性 U 波 が出現し,それに一致して心室筋後電位が記録 された. E)大動脈弁逆流,高血圧では,Initial 陰性 U 波 が高頻度に出現し,三羽の仮説14) で説明が できる.三羽は Initial 陰性 U 波の成因として, 高血圧でみられる陰性 U 波は拡張障害心室筋 のストレッチによって誘発された後電位によっ て心内外膜側左室心筋間の活動電位勾配の逆転 により生じるとしている14~15) . ②虚血心疾患の陰性 U 波は 7erminal 陰性 U 波で あり,三羽の心室筋 M 細胞説で説明できる. 三羽は 7erminal 陰性 U 波の成因として,心筋 虚血で M 細胞層内での活動電位持続時間短縮 の貫壁性の不均一性とそれに基づく電位勾配の 逆転が陰性 U 波の成因に関連していると考え ている14~15) . ③心筋の肥厚による陰性 U 波の成因は長谷川ら の臨床経験からも心室筋再分極遅延(乳頭筋や 心室中隔など)説で説明ができる27) . 現在においても正常 U 波,異常 U 波の成 因はいまだはっきり確定していない.陰性 U 波の成因は病態においても同一とはかぎらず, 各々の病態により異なった機序の可能性もある. 陰性 U 波の成因がどのような機序であっても, 臨床的には異常所見であり,陰性 U 波が出現 する誘導部位が,異常部位であることが明らか であり,臨床上,大変有用であると考えている. 3.異常 U 波 1)異常 U 波には,陽性 U 波(異常陽性 U 波) と陰性 U 波がある. 2)陽性 U 波は以下の場合とする. a)U 波の電位(波高,振幅)が T 波の電位より 高電位の場合 E)T 波の減高を伴う前壁胸部誘導の U 波の増高 c)胸部誘導で m9 以上の場合,肢誘導で m9 以上の場合 3)陰性 U 波では,T‒P 線上で低電位でも明らか に陰性であれば,陰性 U 波とする. 陰性 U 波の出現は aV R を除いて,すべて異常 である. 4)陰性 U 波には,Initial 陰性 U 波および 7erminal 陰性 U 波がある(図2). 5)虚血性心疾患における陰性 U 波は,ST 上昇, 陰性 T 波と同様に陰性 U 波の出現している 誘導部位で虚血が生じている. 6)陰性 U 波が消失した場合には,心筋虚血が 改善された場合と病態が高度に悪化し,心筋の 壊死や線維化に進展した場合の二通りがある. 4.「前壁胸部誘導の T 波減高を伴う陽性 U 波の 増高」が,なぜ後壁の虚血をあらわすのか ? 1)陽性 U 波は後壁の虚血の心電図変化を reciSrocal change として捉えている28) (図3). ①後壁の虚血の心電図変化を後壁で見ると,T 波が増高し,陰性 U 波が出現する. ②この変化を前壁胸部誘導で見ると,reciSrocal change として捉えられ,T 波の減高を伴う陽性 U 波増高が認められると考える. ③陽性 U 波が前壁胸部誘導で増大,明瞭に出現 する理由としては,もともと存在する陽性 U 波と後壁の虚血性陰性 U 波の 5eciSrocal change として反映している陽性 U 波が重複して出現 するためと考えられる. 2)食道誘導心電図による証明29) (図4) 狭心症発作(胸部圧迫感)時に前壁胸部誘導 および食道誘導心電図が同時記録できた1例に おいて,陽性 U 波と同時相に食道誘導(E40, 45)で陰性 U 波が記録されたことより,陽性 U 波は「後壁」虚血の表現と考えられた. 3)冠動脈のバルーンによる拡張術(POBA)中 の冠動脈内心電図による証明28) (図5) ①右冠動脈狭窄例(seg. ③)の同部位 POBA 直後 の心電図である. ②冠動脈 POBA 中に冠動脈内心電図(ic ECG) を同記すると Eallooning の終了直後,すなわち deÀation 直PCI を施行した冠動脈狭窄例91例を対象とし, PCI 前・後における冠動脈造影所見と運動負荷心 電図との関連を検討した.運動負荷における NU, PU の出現態度は PCI の治療の成功,不成功をよ く反映しており,治療評価に極めて有用な指標と 考えられた.とくに NU,PU は PCI 後に再狭窄 した冠動脈枝の部位診断に有用で
2023.06.16更新
U波の臨床的意義
投稿者:
2023.06.15更新
青少年、SNS,犯罪
<青少年、SNS,犯罪> 大橋信昭
10歳から17歳のスマートフォン所有率が6割を超えるとともに、 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及(ふきゅう)により、インターネット空間で多くの人とつながることができるようになりました。
また、SNSの世界では、お互いの名前、年齢など素性(すじょう)を明かす必要がないため、家族や友人に相談しづらいことも気軽に打ち明けることができるかもしれません。
しかし、名前や年齢を明かす必要がないことから、年齢、性別や性格を偽って(いつわって)青少年に悪意を持って接触(せっしょく)を図ろうとする大人も多数おり、犯罪に巻き込まれる青少年も後を絶ちません。SNSなどのコミュニティサイトでは、友達や同じ趣味を持つ人との交流や情報交換など、たくさんの楽しみがあります。
ですが、そこには「危険」もたくさん潜んでいます。
SNSを通じて犯罪の被害にあう児童・生徒は増加しており、令和元年には過去最多の2,082人が被害に遭い、令和2年・令和3年・令和4年中も1,800人前後で推移し、被害者数は高止まりしています。
実際の被害事例
• 未成年者誘拐被害
SNSで知り合った人に悩みを相談していたら「慰めてあげる」など言葉巧みに誘い出され、直接会いに行ったところ、そのまま相手の自宅に連れ込まれてしまった。
• 児童ポルノ被害
女子生徒は交際相手に裸の写真を求められ、「送ってくれないなら別れる」と迫られてSNSで自分の裸の写真を送信してしまった。
その後、相手との交際を断ったところ逆恨みされ、インターネット上に自分の裸の写真を拡散されてしまった。
• ストーカー被害
お気に入りのお店を友達に教えてあげようと思い、お店を撮影した写真をSNSに投稿したところ、写真の背景などから撮影場所を特定されて、知らない人に付きまとわれるようになってしまった。
被害にあわないために
• SNSで知り合った相手と気軽に会わない
SNSでのやり取りだけでは、相手の本当の姿は分かりません!SNSをはじめインターネット上では簡単に他人になりすますことができます。
ネットで知り合った相手と気軽に会うと、犯罪などの深刻な被害につながることがあります。
• 撮らない・撮らせない・送らない
人に見られては困る写真を他人に送ってしまうと、それをネタにして更にひどい要求や被害を受けることもあります。
裸や下着姿の写真は、どんな理由をつけられても絶対に「撮らない・撮らせない・送らない」!
• 写真の画質やSNSの公開範囲の設定を適切に
SNSに投稿した写真からは、写真に写りこんだ景色や文字などの情報から、撮影場所が特定されてしまうこともあります。
投稿する写真の画質を落としたり、関係ない人が見られないようにSNSの公開範囲を制限するなどの設定が必要です。
投稿者:
2023.06.15更新
独裁者プーチン、その政権運営スタイルについての思想
ウクライナ侵攻に至る迄の,プーチン大統領の政治指導ぶりを,各種マスコミの映像で観察していると,おかしなことだらけ。
例えば,初期,フランス大統領を迎えての会談では,二人は,異常に長い長方形の机の両端に座っていた。この種の,距離感を感じさせる席配置は,プーチン大統領と側近たちとの会談でも,大統領とロシア議会の議員たちとの会談でも,全く同じ。
不自然さは,閣議の場でも看取された。それは,対面ではなく,リモート形式での会議だったりするからだ。それぞれが遠隔地にいるわけでもなく,恐らく全員がモスクワにいる。そんな場合でも,リモート会議形式を採用する。そして,この大統領と他の参加者たちとの間を,不自然に隔てるやり方こそ,プーチンの独裁者ぶりを象徴し,且つ,自身が一段と高みに立とうとする意思を化体する。自らの専制の立場を確保し,部下たちには横連携させず,己の意向を組織内に一方的に落とし込む,そんな秩序の創設が具現化されている。
プーチンは,自らを強い指導者と位置づけたがる,そんな性癖の持ち主のようだ。それが,柔道を好み,水泳で筋肉を誇り,バイクを走らせる等の,マッチョなイメージ創りと結びつく。そうしたイメージは亦,精神的タフさを売り込むことで補強される。更に,そんな志向は当然に,偉大なロシアの再現を目指す対外政策と結びつく。つまり,プーチン大統領にとっては,指導者としての自己イメージの確立と,自分が指導するロシアの対外姿勢とが一体化しているのだ。言い換えると,強い指導者としての自己の力で,ロシアの勢力圏と見做す,旧ソ連邦諸国をロシア中心の秩序の中に再び呼び戻し,以て,安全保障面で,それら諸国をロシアの外壁と位置付けようとする。そんな発想の根底では,ソ連崩壊後のロシアの惨めな姿が,トラウマとなって彼の愛国者魂に火をつけている。
筆者には今回のプーチン大統領のウクライナ侵攻が,第二次大戦中のヒットラーの,独ソ不可侵条約を一方的に破棄してまでの,ソ連侵攻の意思決定ぶりとダブって見える。あの当時,ドイツ国防軍内には一つの共通認識があった。それは,西部戦線と東部戦線,この二つを同時には追求しないというもので,第一次大戦の敗北から得た重大な教訓だった。それを,ドイツ国防軍は簡単に廃棄してしまう。ヒットラーはどんな手で,軍内の共通認識をいとも簡単に捨てさせ得たのか…。
答えは簡単だった。総統と軍幹部との関係を,あくまでも一対一に位置づけ,軍組織全体との協議にしなかったのだ。例えば,ある案件に関し,ヒットラーは特定のAという将軍に下命する。別の案件は,Bという将軍にという按配。決して,軍組織全体としての精査を加える余地を与えない。AなりBの将軍の立場に立てば,総統だけが知っている秘密情報があって,勝てると総統が判断したからこその,この下命だ,との認識となり,自己免責の精神が生まれる。つまり,ヒットラーは,情報の非対称性をうまく活用したのだ。
今回,プーチン大統領も,恐らくは同じ様な手法を使ったのだろう。大統領から侵攻のための動員を命じられた将軍の胸には,「ウクライナは侵攻すれば直ぐに音を上げる。以前のグルジアの場合も,クリミアの場合も,抵抗らしい抵抗もせず,直ぐに白旗を上げたではないか…。大統領の手元には,そんなウクライナの自己崩壊の予兆情報がたくさん集まっている…。そんな情報に基づいて,大統領は決断した」と…。ところが,実際はそうならなかった。侵攻計画に緻密性を欠き,亦,想定外のウクライナの抵抗に遭ってロシア軍の補給路が乱れ,軍の増強もままならないのは,そもそもの出兵計画が,軍組織を挙げての検討を経ず,大統領と一部取り巻きの側近達の粗野な計画に基づいていたからではないのか…。
煎じ詰めれば,ウクライナ問題の決着は,戦場の勝利で決まる。ウクライナが持ち堪えれば,プーチンの優位は減価する。ウクライナのゼレンスキー大統領はそれ故,自軍に不利な戦場で,なんとか時間を稼ぎ,その間に民間人の避難や欧米からの武器を含む各種増強を得ようとする。対してプーチン大統領は,欧米の関与を出来るだけ拡大させないよう,威圧を繰り返す。
そんな眼鏡で見ると,3月24日のNATO,EU,G-7の一連の首脳会議も,少なくともその前後の期間,ロシアはウクライナを全面攻撃できない…,そんな欧米側の政治的計算も見えてきてしまう。亦,各種の対ロ制裁も,時間が経つほどに効果が出てくるはずだ,とも…。
だが,逆も亦,真なり。ロシアの側も,同じような計算で動いている。時間が経ってくれば,国連でロシア批判票を投じた時の雰囲気も薄れ,考えを改めざるを得ない国も出てくるはず。ロシアが早々とG-20出席を公表したのも,G-20諸国にそんな踏み絵を踏ませる,との計算があったからに他なるまい。
結局,冷徹に言えば,神は自ら助くる者しか,助けないのだ。ウクライナが今後とも,抵抗を続け続けるためには,キエフ政府は倒れてはならないし,ゼレンスキー大統領がロシアの捕虜になってはならない。そのため,NATOや欧米は,最低限これ以上,窮地にあるウクライナ現政府を見放してはならないのだ。一方,プーチン大統領は,そんな欧米の足下を割ることに,最大注力し続ける。勝利の神は,時間を自陣営に有利に働かせた方に微笑むのだから…。
察ナ侵攻に至る迄の,プーチン大統領の政治指導ぶりを,各種マスコミの映像で観察していると,おかしなことだらけ。
例えば,初期,フランス大統領を迎えての会談では,二人は,異常に長い長方形の机の両端に座っていた。この種の,距離感を感じさせる席配置は,プーチン大統領と側近たちとの会談でも,大統領とロシア議会の議員たちとの会談でも,全く同じ。
不自然さは,閣議の場でも看取された。それは,対面ではなく,リモート形式での会議だったりするからだ。それぞれが遠隔地にいるわけでもなく,恐らく全員がモスクワにいる。そんな場合でも,リモート会議形式を採用する。そして,この大統領と他の参加者たちとの間を,不自然に隔てるやり方こそ,プーチンの独裁者ぶりを象徴し,且つ,自身が一段と高みに立とうとする意思を化体する。自らの専制の立場を確保し,部下たちには横連携させず,己の意向を組織内に一方的に落とし込む,そんな秩序の創設が具現化されている。
プーチンは,自らを強い指導者と位置づけたがる,そんな性癖の持ち主のようだ。それが,柔道を好み,水泳で筋肉を誇り,バイクを走らせる等の,マッチョなイメージ創りと結びつく。そうしたイメージは亦,精神的タフさを売り込むことで補強される。更に,そんな志向は当然に,偉大なロシアの再現を目指す対外政策と結びつく。つまり,プーチン大統領にとっては,指導者としての自己イメージの確立と,自分が指導するロシアの対外姿勢とが一体化しているのだ。言い換えると,強い指導者としての自己の力で,ロシアの勢力圏と見做す,旧ソ連邦諸国をロシア中心の秩序の中に再び呼び戻し,以て,安全保障面で,それら諸国をロシアの外壁と位置付けようとする。そんな発想の根底では,ソ連崩壊後のロシアの惨めな姿が,トラウマとなって彼の愛国者魂に火をつけている。
筆者には今回のプーチン大統領のウクライナ侵攻が,第二次大戦中のヒットラーの,独ソ不可侵条約を一方的に破棄してまでの,ソ連侵攻の意思決定ぶりとダブって見える。あの当時,ドイツ国防軍内には一つの共通認識があった。それは,西部戦線と東部戦線,この二つを同時には追求しないというもので,第一次大戦の敗北から得た重大な教訓だった。それを,ドイツ国防軍は簡単に廃棄してしまう。ヒットラーはどんな手で,軍内の共通認識をいとも簡単に捨てさせ得たのか…。
答えは簡単だった。総統と軍幹部との関係を,あくまでも一対一に位置づけ,軍組織全体との協議にしなかったのだ。例えば,ある案件に関し,ヒットラーは特定のAという将軍に下命する。別の案件は,Bという将軍にという按配。決して,軍組織全体としての精査を加える余地を与えない。AなりBの将軍の立場に立てば,総統だけが知っている秘密情報があって,勝てると総統が判断したからこその,この下命だ,との認識となり,自己免責の精神が生まれる。つまり,ヒットラーは,情報の非対称性をうまく活用したのだ。
今回,プーチン大統領も,恐らくは同じ様な手法を使ったのだろう。大統領から侵攻のための動員を命じられた将軍の胸には,「ウクライナは侵攻すれば直ぐに音を上げる。以前のグルジアの場合も,クリミアの場合も,抵抗らしい抵抗もせず,直ぐに白旗を上げたではないか…。大統領の手元には,そんなウクライナの自己崩壊の予兆情報がたくさん集まっている…。そんな情報に基づいて,大統領は決断した」と…。ところが,実際はそうならなかった。侵攻計画に緻密性を欠き,亦,想定外のウクライナの抵抗に遭ってロシア軍の補給路が乱れ,軍の増強もままならないのは,そもそもの出兵計画が,軍組織を挙げての検討を経ず,大統領と一部取り巻きの側近達の粗野な計画に基づいていたからではないのか…。
煎じ詰めれば,ウクライナ問題の決着は,戦場の勝利で決まる。ウクライナが持ち堪えれば,プーチンの優位は減価する。ウクライナのゼレンスキー大統領はそれ故,自軍に不利な戦場で,なんとか時間を稼ぎ,その間に民間人の避難や欧米からの武器を含む各種増強を得ようとする。対してプーチン大統領は,欧米の関与を出来るだけ拡大させないよう,威圧を繰り返す。
そんな眼鏡で見ると,3月24日のNATO,EU,G-7の一連の首脳会議も,少なくともその前後の期間,ロシアはウクライナを全面攻撃できない…,そんな欧米側の政治的計算も見えてきてしまう。亦,各種の対ロ制裁も,時間が経つほどに効果が出てくるはずだ,とも…。
だが,逆も亦,真なり。ロシアの側も,同じような計算で動いている。時間が経ってくれば,国連でロシア批判票を投じた時の雰囲気も薄れ,考えを改めざるを得ない国も出てくるはず。ロシアが早々とG-20出席を公表したのも,G-20諸国にそんな踏み絵を踏ませる,との計算があったからに他なるまい。
結局,冷徹に言えば,神は自ら助くる者しか,助けないのだ。ウクライナが今後とも,抵抗を続け続けるためには,キエフ政府は倒れてはならないし,ゼレンスキー大統領がロシアの捕虜になってはならない。そのため,NATOや欧米は,最低限これ以上,窮地にあるウクライナ現政府を見放してはならないのだ。一方,プーチン大統領は,そんな欧米の足下を割ることに,最大注力し続ける。勝利の神は,時間を自陣営に有利に働かせた方に微笑むのだから…。
投稿者:
2023.06.15更新
脳と神経伝達物質
はじめに
大学受験や人前でのスピーチを目前に控えているときは、多少なりとも冷静さを失って不安を抱くでしょう。プレッシャーを感じると思考能力が鈍ったり、思考が停止してしまったりする場合もあります。この状態は、「緊張する」、「あがる」、「頭が真っ白になる」、「凍りつく」、「パニックになる」、最近では「テンパる」などと表現され、誰しも経験することです。これまでの生物学的知識では、ストレスを受けると脳の底部にある進化的に古い視床下部が反応して、下垂体と副腎からのホルモン分泌が促進され、心拍数の増加、血圧の上昇、食欲の低下などが生じると理解されています。これらの変化は、脳に生じる原始的な反応であるといえます。
ストレスと前頭前野
最近、ストレスは霊長類で最も発達している大脳皮質前頭前野(前頭前野:図1)にも影響を及ぼし、高度な精神機能を奪ってしまうことが分かってきました。ストレスは、感情や衝動を抑制している前頭前野の支配力を弱めるため、視床下部などの進化的に古い脳領域の支配が強まった状態になり、不安を感じたり、普段は抑え込んでいる衝動(欲望にまかせた暴飲暴食や薬物乱用、お金の浪費など)に負けたりするというのです。
前頭前野は脳の中で進化的に最も新しく、高度に進化した領域です。ヒトでは大脳皮質の約1/3を占めています。この領域は他の脳部位よりゆっくりと成熟し、20歳代になってようやく完成します。前頭前野には抽象的な思考に関わる神経回路があり、集中力を高めて作業に専念させる役割を果たすとともに、ワーキングメモリー(計算をする場合などに情報を一時的に記憶すること)として働きます。また、精神の制御装置としての役割を担っており、状況にそぐわない思考や行動を抑制しています。このような働きによって、集中や計画、意思決定、洞察、判断、想起などができるのです。
この神経の高次中枢は、三角形をした錐体細胞という神経細胞同士が接続した大規模なネットワークを介して働きます。錐体細胞は、感情や欲求、習慣を制御する脳領域とも接続しています。このネットワーク内の回路は、日々遭遇する不安や心配に対して敏感に反応し、非常に脆弱であることが分かってきました。ストレスがかかると、脳全体に突起を伸ばしている神経からノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質が放出されます(図2)。これらの濃度が前頭前野で高まると、神経細胞間の活動が弱まり、やがて止まってしまいます。ネットワークの活動が弱まると、行動を調節する能力も低下します。視床下部から下垂体に指令が届き、副腎がストレスホルモンであるコルチゾールを血液中に放出して、これが脳に届くと事態はさらに悪化します。こうして、自制心はバランスを崩していくのです。
脳の深部に生じる主な変化としては、まず、ドーパミンが古い脳領域である大脳基底核に到達します。大脳基底核は、線条体(図1)などから構成されており、欲求や情動および運動の調節や運動の記憶に関わっている一連の深部脳構造です。別の古い脳領域である扁桃体(図1)は、ノルアドレナリンとコルチゾールの濃度が高まると、危険に備えるよう他の神経系に警告を発したり、恐怖などの情動に関わる記憶を強めたりします。
ストレスに対する脆弱性
ヒトを対象とした研究により、ストレスに対する脆弱性は遺伝的背景や過去のストレス経験などが原因であることが分かっています。ドーパミンとノルアドレナリンによって高次認知に必要な前頭前野の回路が停止しても、通常はこれら神経伝達物質の分解酵素が働くため、機能停止は長くは続かず、ストレスが軽減すれば元の状態に戻ります。しかし、遺伝的にこれらの酵素の力が弱い人はストレスに弱いようです。さらに、慢性的なストレスにさらされると、扁桃体の樹状突起(神経細胞から枝状に伸びて信号を受け取っている突起)が拡大する一方、前頭前野の樹状突起は萎縮します。ストレスがなくなれば、前頭前野の樹状突起は再生しますが、ストレスが非常に強い場合には回復能力が失われます。前頭前野の萎縮は、過去のストレス体験と関連していることも分かってきました。ストレスによる脳内変化が生じると、以後のストレスに対してさらに脆弱になり、うつ病や依存症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの不安障害につながると考えられています。
ストレス研究の課題
「ストレスがどのように前頭前野の自己制御領域を変化させるのか」についてはまだよく分かっていません。現在、ノルアドレナリンやドーパミン以外の神経伝達物質の作用についても研究が行われています。例えば、うつ病患者の脳ではセロトニンレベルが低下していることから、セロトニンが前頭前野に作用(図2)してストレスと不安を調節している可能性が解析されています。しかし、ヒトを対象とした実験の場合には特に倫理基準が厳しいため、被験者に不安をかきたてるような映画を見せたり、自身の強いストレス経験を思い浮かべてもらったりして、ストレスの影響をシミュレートする方法がとられていますが、脳の高次機能を対象とすることから、一つの事象を明らかにするのは非常に困難です。
「なぜ脳が最も高度な認知機能を弱めるようなメカニズムをもっているのか」という疑問についても未だ答えは得られていません。このメカニズムが進化の過程で獲得されたものであることを考えると、こうした原始的な反応が外敵からヒトの命を救ってきたのかもしれません。脳の高次機能のネットワークが働かないとき、原始的な脳の経路が私たちの動きを止めたり、逃げる準備をさせたりするメカニズムは、現代社会でも危機に直面する際に必要かもしれません。ただし、この状態が長く続くと、前頭前野の機能は弱まってしまいます。
また、ストレスに応答することが知られている脳内因子の他にも重要な因子が存在する可能性は否定できません。我々は最近、動物にストレスを負荷した後、44,000種類の遺伝子発現を解析した結果、脳と血液の両方から、新たにストレスに応答因子候補を複数みつけています。現在、それらの機能を調べるとともに、ヒトの血液解析を行っています。
ストレス研究の意義
脳のストレス応答を明らかにすることは、生物学的に興味深い課題であると同時に、脳の働きを正常に保つ方法の開発に役立つでしょう。例えば、避難訓練は生き残りに必要な反射的な反応を脳に教え込むことであると考えることが出来ます。心理的制御の感覚を一度習得すると、ストレスを感じた際に動揺しなくなるでしょう。そして、人前で話すことが快いものになれば、聴衆の前で自信満々でいられます。実際、幼少期に軽度のストレスに直面して何度もうまく乗り越えた経験がある動物は、ストレス対処能力に優れた個体に育つことが明らかにされています。ヒトの研究でも、困難な状況への対応に成功した経験は立ち直る力を強め、対処につまずいた場合は成長してからストレスの重荷や落ち込みやすさを感じやすくなると報告されています。
ストレスによるさまざまな障害の治療法に関する研究・開発も進められています。例えば、ノルアドレナリンの作用を妨げる薬剤によって前頭前野のネットワークを強めると、障害が抑制されることが分かってきました。さらに、休養や深呼吸、瞑想などによる対処法でストレス反応を抑えられることも多くの研究者によって示されています。我々も最近、コーヒー豆やラベンダーなどの香りがストレス抑制効果をもつことを科学的に証明しています(生物学の新知識, 2010年7月)。また、我々がみつけたストレス応答因子候補がヒトの血液で証明できれば、血液解析でストレスレベルの客観的評価が可能になります。健康診断でストレスレベルを計測することは、精神障害の予防につながります。
おわりに
脳がどのようにストレスに反応するのかについて学んでおくと、自分の行動を自分でコントロールできるという感覚が高まるかもしれません。今度テストを受けるときや人前で話すときに緊張した場合、「私の脳が、私を危機から救おうとしている。」と自分に言い聞かせてみて下さい。落ち着きを取り戻して、能力を最大限発揮できるようになるでしょう。
投稿者:
2023.06.15更新
私は原子爆弾を憎む
私の妹は、2023年4月17日に突然死した。先天性心房中隔欠損症(ASD)の突然死であり、妹が死んだのを確認したのは4月20であった。私は、無感情でいた。私もASDであるからである。
1979年,なぜか大垣市でASDを発見され、名古屋国立附属病院で、妹は助けられた。その2年後に、私も同じASDで手術を受けなければならない運命にあるとは思わなかった。私は、その頃、研修医であったが、研修は中止し、私のASDの手術に立ち向かわねばならなかった。1年間は肉体的な痛み、その後、現在に至るまで心が苦しんでいる。つまり、私と妹は、長崎市の1945年、8月9日に核爆弾を落とされた、親の原爆者2世なのである。21歳ごろまで、私はASDに気が付かず、その頃より始まった全身倦怠感、労作後の動悸、全身に広がる浮腫であった。私は幸運にも医学部の学生であったので、直ぐに循環器内科教授に診察を御願いした。教授が言うには「君はASDである。しかし、今はそのことは、忘れて、医師国家試験に向かって、まっしぐらだ!」と励ましてくれた。勇気がわいた。ところが、クラスに入ると、噂は速いのか、昭和54年卒の同僚は、私をあざ笑った。面白い患者を診ているようだ。医師というのは、患者の心和らいで、あるいは患者の苦悩に共感し、正確に病気を治すものだ。軽蔑するものではない。しかし、私は、医師になり、医学博士、循環器専門医、産業医も取得し、平成元年より、大垣市の元住んでいたところで、開業している。死に物狂いであった。患者の悲しみ、痛みはよくわかり、やれることはすべてやった。時間外、深夜往診、看取り、緊急往診、在宅医療、看取りの時は、家族の悲しみがある程度静まるまで抱擁した。私は、ASDの手術から元気な医師に戻ったとき、苦しむ患者には出来ることはすべてした。笑顔は、温かい心は忘れなかった。原子爆弾は怖いものである。本人が即死するなら、何年にもか、けて、癌、白血病を併発し、遺伝子は患者の子、孫まで伝わる。2世の私は、妹共にASD,外耳道湾曲症、脊椎変形、、、、これらの病気と闘いながら、患者には全力を尽くした。1979年のクラスメートは大変、憎んでいる。私の心がどん底に陥ったときあざ笑った連中である。クラス会はいかない。私を立派な医師にさせてもらった名古屋市立大学附属病院は土下座をして感謝する。核爆弾で、世界中の国が脅し逢うのは、絶対、心底いけない。「最後の核爆弾による被は1945年8月7日が最後である。二度とあってはいけない!!!(完)
投稿者:
2023.06.15更新
私は原子爆弾を憎む 大橋信昭
私の妹は、2023年4月17日に突然死した。先天性心房中隔欠損症(ASD)の突然死であり、妹が死んだのを確認したのは4月20であった。私は、無感情でいた。私もASDであるからである。
1979年,なぜか大垣市でASDを発見され、名古屋国立附属病院で、妹は助けられた。その2年後に、私も同じASDで手術を受けなければならない運命にあるとは思わなかった。私は、その頃、研修医であったが、研修は中止し、私のASDの手術に立ち向かわねばならなかった。1年間は肉体的な痛み、その後、現在に至るまで心が苦しんでいる。つまり、私と妹は、長崎市の1945年、8月9日に核爆弾を落とされた、親の原爆者2世なのである。21歳ごろまで、私はASDに気が付かず、その頃より始まった全身倦怠感、労作後の動悸、全身に広がる浮腫であった。私は幸運にも医学部の学生であったので、直ぐに循環器内科教授に診察を御願いした。教授が言うには「君はASDである。しかし、今はそのことは、忘れて、医師国家試験に向かって、まっしぐらだ!」と励ましてくれた。勇気がわいた。ところが、クラスに入ると、噂は速いのか、昭和54年卒の同僚は、私をあざ笑った。面白い患者を診ているようだ。医師というのは、患者の心和らいで、あるいは患者の苦悩に共感し、正確に病気を治すものだ。軽蔑するものではない。しかし、私は、医師になり、医学博士、循環器専門医、産業医も取得し、平成元年より、大垣市の元住んでいたところで、開業している。死に物狂いであった。患者の悲しみ、痛みはよくわかり、やれることはすべてやった。時間外、深夜往診、看取り、緊急往診、在宅医療、看取りの時は、家族の悲しみがある程度静まるまで抱擁した。私は、ASDの手術から元気な医師に戻ったとき、苦しむ患者には出来ることはすべてした。笑顔は、温かい心は忘れなかった。原子爆弾は怖いものである。本人が即死するなら、何年にもか、けて、癌、白血病を併発し、遺伝子は患者の子、孫まで伝わる。2世の私は、妹共にASD,外耳道弯曲湾曲症、脊椎変形、、、、これらの病気と闘いながら、患者には全力を尽くした。1979年のクラスメートは大変、憎んでいる。私の心がどん底に陥ったときあざ笑った連中である。クラス会はいかない。私を立派な医師にさせてもらった名古屋市立大学附属病院は土下座をして感謝する。核爆弾で、世界中の国が脅し逢うのは、絶対、心底いけない。「最後の核爆弾による被は1945年8月7日が最後である。二度とあってはいけない!!!(完)
投稿者:
2023.06.14更新
尿失禁
<尿失禁>
概要
尿失禁症(尿失禁)とは、自分の意志とは関係なく尿が漏れ出てしまう病気のことです。
尿失禁が引き起こされる原因はさまざまであり、膀胱や排尿をつかさどる神経の機能が加齢などによって低下することが原因のケースもあれば、前立腺がんなど深刻な病気が原因のケースもあります。治療法も原因によって異なり、加齢などの生理的な機能低下が原因の場合は明確な治療方法がない場合も少なくありません。
尿失禁という症状自体は命に関わるものではありません。しかし、日常生活に大きな支障をきたすことも多く、精神的なダメージや社会性の低下を伴う場合もあるため、適切な治療や対策が必要となります。
原因
尿失禁の原因は多岐にわたります。
尿は腎臓で生成され、膀胱に蓄えられます。膀胱は伸縮性のある筋肉でできているため、成人であれば500mlほどの尿をためることが可能です。そして、一定以上の尿がたまって膀胱の筋肉が伸展すると、その刺激が脊髄(せきずい)から脳に伝わって尿意が引き起こされます。しかし、ヒトは尿意を感じたとしても、すぐに排尿が生じるわけではありません。尿意を感知した脳からは“尿意を我慢する”よう尿の流出を防ぐ司令が膀胱や尿道に伝えられます。
尿失禁はこれらの仕組みに何らかの異常が生じることによって引き起こされる病気です。
具体的には次のような原因が挙げられます。
骨盤底筋の緩み
膀胱や尿道など排尿に関わる器官は骨盤底筋と呼ばれる筋肉に支えられています。加齢による筋力の低下、肥満や妊娠などによる筋肉へのダメージなどが生じて骨盤底筋が緩むと、咳やくしゃみをしたり、重たい物を持ったりして腹圧がかかった際に尿失禁が生じることがあります。
膀胱や神経機能の異常
加齢などによって膀胱の機能が低下し、膀胱が過剰な収縮を生じることで突然強い尿が生じ、尿失禁を引き起こすことがあります。
また、やパーキンソン病など神経の病気によって、排尿をコントロールする神経に異常が生じると突然尿が生じて尿失禁につながることも少なくありません。
排尿障害
前立腺肥大症や前立腺がん、糖尿病などによって排尿障害が生じると、膀胱内に多量の尿がたまるようになるため、たまった尿が少しずつ漏れ出るように失禁することがあります。
身体機能・認知機能の低下
加齢などによる身体機能や認知機能の低下は、移動に時間がかかってトイレまで間に合わない、適切な場所で排尿することができないといった症状を引き起こすため、尿失禁の原因になることがあります。
症状
尿失禁は、自分の意志とは関係なく尿が漏れ出る“尿失禁”が生じる病気です。
尿失禁が生じる原因は上でも述べたように多岐にわたり、症状の現れ方も原因によって異なります。
骨盤底筋の緩みが原因の場合は、お腹に力が入ったタイミングで前触れなく尿失禁が生じます。前触れがないため、自分の意志で排尿を制御することは困難です。
一方、膀胱や神経の機能異常による尿失禁は、少量の尿しかたまっていないにもかかわらず膀胱が過度に収縮するため、突然の強い尿意が生じる“尿意切迫感”を伴うことが特徴であり、尿の回数も増加します。
また、排尿障害による尿失禁は、残尿感(尿が出切らない感覚)や排尿の勢いの低下などの症状を伴い、少量ずつじわじわと尿が漏れ出ます。そして、身体機能や認知機能の低下による尿失禁は、排尿に適さない場所や状況で排尿行為が生じることが特徴です。
検査・診断
尿失禁の原因は多岐にわたり、加齢や病気による後遺症など改善が困難な原因が背景にあるケースも少なくありません。
しかし、一般的には尿失禁が疑われる場合は膀胱や前立腺などに何らかの異常がないか調べるために次のような検査が行われます。
尿検査
尿の成分を顕微鏡などで詳しく調べ、尿の中に細菌や血液、がんの細胞などが含まれていないか評価する検査です。尿失禁を引き起こす病気の有無を簡易的に評価することができます。
画像検査
膀胱や前立腺などに病気がないか調べるため、CTやMRI、超音波などを用いた画像検査が行われることが一般的です。その結果、尿道や膀胱に何らかの病気が疑われた場合は、尿道から内視鏡を挿入して尿道・膀胱の内部をさらに詳しく観察する膀胱鏡検査や、膀胱内に造影剤を注入して膀胱造影検査を行うことがあります。
尿流動態検査
尿道から膀胱に水を注入し、膀胱の大きさや膀胱に水分が蓄えられている際の感覚などを調べる検査です。体への負担を伴う検査ですが、膀胱の機能を評価するのに優れています。
パッドテスト
骨盤底筋のゆるみによって生じる尿失禁の有無を調べるために行う検査です。
水分を摂取した後に60分間所定の動作を行います。検査前に装着した尿パッドにどれだけ尿が漏れ出ているか調べることで、診断をしたり重症度を判定したりすることができます。
治療
前立腺がんなどの病気が原因の場合は、それらの病気の治療が優先的に行われます。
一方で、尿失禁は加齢による生理的な機能低下や病気の後遺症などによって引き起こされるケースも多く、さらに原因が分からないこともあるため明確な治療法がない場合も少なくありません。しかし、尿失禁は生活の質を下げる症状でもあるため、それぞれの原因に適した治療やトレーニングが行われています。
骨盤底筋のゆるみによる尿失禁には、骨盤底筋を鍛えるトレーニングが有用とされていますが、セルフケアのみでは症状が改善せず日常生活に大きな支障をきたしているような場合には、骨盤底筋を支えるメッシュなどの医療機器を挿入するための手術が行われることもあります。
一方、尿意切迫感を伴う尿失禁には抗コリン薬などの薬物療法も有用ですが、尿意を我慢する“膀胱訓練”なども行われています。
予防
尿失禁の原因は多岐にわたり、なかには明確な予防法が確立していないものもあります。
しかし、女性によく見られる骨盤底筋のゆるみによる尿失禁は骨盤底筋を鍛える運動を行い、肥満の場合は減量することで発症を予防することが可能です。膀胱や神経の機能低下による尿失禁にも効果がある場合もありますので、日ごろからトレーニングを取り入れるとよいでしょう。
投稿者:
2023.06.14更新
便失禁
<便失禁>深刻な病気 便失禁
500万人以上が悩まされている「便失禁」。便失禁は、自分の意思に反して、便がもれる症状のことです。命に関わる病気ではありませんが、「トイレまで間に合わない」「外出できなくなる」「うつ状態になる」など、便失禁の症状は深刻です。
このグラフは、60歳以上の重症疾患を抱える患者さんを対象に、便と尿合わせた「失禁」「人工呼吸器」「寝たきり」「要介護」「車椅子」が、死の問題と比べてどうかを5段階評価したデータです。失禁の問題が最も深刻で、約7割の人が「死と同じかそれよりも悪い問題」と回答しています。
便失禁の原因
肛門括約筋の「衰え」や「損傷」などによって、便失禁が起こります。
肛門括約筋が衰える原因の1つが加齢です。高齢者や介護を必要とする人に多いと報告されています。肛門を締める力が加齢などによって弱くなると、便失禁を生じます。
肛門括約筋の損傷は、分べん、痔や大腸がんなど肛門や直腸の病気やその手術後、また、過敏性腸症候群や糖尿病などの病気でも便失禁を起こすこともあります。
便失禁の治療
食生活を見直す
積極的にとった方がよいものは、不溶性食物繊維です。便を硬めにする効果があります。便が軟らかいと便失禁が起こりやすくなります。大麦や玄米などの穀類、さつま芋、ごぼう、にんじん、小松菜、大豆、豆腐などに多く含まれています。
避けた方がよいものは、コーヒーや紅茶などに含まれるカフェイン、アルコール、柑橘系の果物、香辛料の多い食品などです。これらは腸の動きを活発にし、下痢を引き起こしやすくします。
規則正しい排便習慣をつける
便意を感じたときに速やかにトイレに行って排便することが大事です。また、自分でトイレの場所をあらかじめ把握しておくことも大切です。直腸に便がたまっていなければ便がもれることはないため、外出時や就寝前には排便する習慣をつけましょう。
弱った肛門括約筋を鍛える
骨盤底筋訓練が有効です。骨盤底筋とは肛門の筋肉などを含む骨盤周辺の筋肉です。底筋を収縮させて筋力をつけることで、便失禁の症状の改善を図ることが期待できます。
1. 腟(女性の場合)と尿道、肛門を締める。お尻の穴をすぼめるイメージで行う。女性の場合では、腟を締めるように行うと、上手くできることがある。お尻の筋肉に力が入ってないことを確認して行う。
2. 骨盤底の筋肉を頭のほうへ引き上げるように、5~8秒間保つ。強く締めるのを3回行い、締めたときと同じくらいの時間休む。
【ポイント】
腹筋に力を入れると腹圧が上昇して、便がもれるおそれがあるため、腹筋には力を入れない(収縮させない)。お腹に片方の手を当てて、腹筋に力が入ってないことを確かめながらやるとよい。
【目安】1セット:10~20回 1日3~5セッット
便失禁の薬
薬は、便失禁の原因となっている下痢を改善する薬が使用されます。下痢があると便がもれやすいので、便を適度な硬さにしておくことが、便失禁を防ぐのに効果的です。主に3種類の薬が使われています。
・ポリカルボフィルカルシウム
便の水分を吸収し、大きな固まりにすることで便のもれを防ぎます。主に、軟らかい便を伴う便失禁に対して使われます。
・ロペラミド塩酸塩
ぜん動運動や大腸の水分吸収をおさえて下痢を止める薬で、ポリカルボフィルカルシウムを使っても便が硬くならない場合に使われます。
・ラモセトロン塩酸塩
神経伝達物質に作用する薬で、過敏性腸症候群による下痢に効きます。
新しい治療法「仙骨神経刺激療法」
背骨の一番下にある、仙骨にあいた穴(仙骨孔)から出ている神経が仙骨神経です。その神経の一部が肛門や膀胱、直腸の方に伸びていき、直腸や肛門の感覚や運動に関係しています。仙骨神経に電気刺激を送ることで、肛門括約筋の動きや直腸の知覚などを回復することができ、便失禁を抑えることができます。
電気信号を送る装置は、背中側の筋肉に埋め込みます。おしりの皮膚を数cm切るだけで治療ができ、期待する効果が得られない場合には、機械とリード線を抜くことで手術前の状態に戻すことができます。およそ10年で装置のバッテリー交換必要で、再手術が必要です。
便失禁は治療で改善が期待できる病気です。悩みを抱え込まず、内科、婦人科、肛門科、消化器外科などの医師に相談しましょう。
投稿者:
2023.06.13更新
尿管結石
<尿管結石>
概要
尿管結石とは腎臓と膀胱をつなぐ尿の通り道である“尿管”に結石が生じ、強い痛みなどの症状が現れることをいいます。腎臓、尿管、膀胱、尿道に生じる結石は総称して“尿路結石”と呼ばれることもあり、なかでも腎臓、尿管の結石を“上部尿路結石”、膀胱、尿道の結石を“下部尿路結石”といいます。
『尿路結石診療ガイドライン 第2版 2013年版』によれば、尿管結石を含む上部尿路結石は、尿路結石全体の96%ほどを占めるといわれています。また尿路結石全体を通じて男女比は2.4:1と男性に多いことが分かっています。
種類
尿管結石の原因となる結石の成分は複数あり、それぞれ発生頻度や原因、治療方法などが異なります。
カルシウム結石
結石の中でももっとも頻度が高いことで知られています。シュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムがあります。
尿酸結石
高尿酸血症や高尿酸尿、痛風などのある方に生じることがあるほか、尿酸の排泄を促す治療薬によって生じる場合もあります。
感染結石
リン酸マグネシウムアンモニウムやカーボネイトアパタイトなどがあり、尿路感染症を原因に生じることが一般的です。
シスチン結石
腎臓の遺伝性疾患の1つ“シスチン尿症”によって生じることがあります。
原因
尿管結石は腎臓内で結石が生じ、それが尿管に移動してくることで生じます。結石は尿中でシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸などが飽和状態になり、結石の前段階である“結晶”が生じることをきっかけに発生します。結晶はごく小さなものですが、その表面にさらにシュウ酸やリン酸、カルシウムが付着していくと、徐々に大きくなり、固まることで結石が形成されます。
結石が生じる原因
結石が生じる過程には体質、代謝異常、内分泌疾患、生活習慣など、さまざまな要因が関係していると考えられています。たとえば腎臓から尿管、膀胱、尿道までを指す“尿路”に変形などがあると、尿が停滞しやすくなるため結石ができやすくなるといわれています。また、入院などで寝たきりの状態が続く方は尿が停滞しやすいほか、骨の吸収も促進されやすいため、結石ができやすくなります。そのほかにも、高カルシウム尿症、高シュウ酸尿症のような代謝異常のある方、尿がアルカリに傾いている方、痛風や高尿酸血症の方なども結石ができやすいと考えられます。
生活習慣については食生活が影響していると考えられており、特に肉や糖質の取り過ぎ、カルシウム不足、お酒の飲みすぎなどが関与していると考えられます。そのほか、以下のような治療薬が原因で結石が生じる方もいます。
結石発生の原因となる主な治療薬
• アセタゾラミド(緑内障の治療薬)
• プロベネシド(痛風の治療薬)など
症状
尿管結石では、腎臓で発生した結石が尿管へ移動し、尿の通り道を塞(ふさ)いでしまうことにより、腰や背中、脇腹、下腹部などに激しい痛みが生じることがあります。このような痛みの発作を“疝痛(せんつう)発作”といいます。疝痛発作は朝方や就寝中に起こりやすく、痛みとともに吐き気や嘔吐を伴う方もいます。そのほか、結石が尿管の粘膜と擦れることによって、血尿が生じることもあります。
結石が尿管から膀胱へ落ちていく過程で疝痛発作は生じなくなり、その代わりに下腹部の痛みや頻尿・残尿感が現れることがあります。結石が完全に膀胱に落ちると、これらの症状も消失することが一般的です。
検査・診断
尿管結石が疑われる症状がある場合、まずは尿検査と超音波検査が行われることが一般的です。尿検査では血尿の有無や結石の成分、尿路感染の有無などが分かるほか、尿の成分を測定することによって結石の原因を見極められる可能性があります。また超音波検査では腎臓を観察し、尿管が詰まることによって腎臓が腫れる“水腎症”が生じていないかどうか確認します。なお、腎臓にある結石は超音波検査で確認が可能ですが、尿管にある結石を超音波検査で確認するのは困難です。
これらに加えて、全身状態や尿管結石の原因、位置などを確認するために、“血液検査”“画像検査”“結石成分分析”などが行われることもあります。
また、症状がない場合でも健診の尿検査などをきっかけに発見される場合があります。
血液検査
血液検査を行い、腎臓の機能を確認するために血清クレアチニン値などを測定します。そのほか、結石の原因の1つである“副甲状腺機能亢進症”が生じていないか確認するために、ホルモン検査が行われることもあります。
画像検査
尿管結石が疑われる場合、腹部のX線検査やCT検査、造影剤を用いたX線検査などが行われることがあります。近年はあらゆる結石を見つけやすいCT検査が行われる傾向にあります。
結石成分分析
結石が尿とともに自然に排出された場合や、手術などで結石を摘出した場合には、結石の成分を調べる検査を行うことがあります。成分が明らかになることで、原因究明や再発の予防に役立つ場合があります。
治療
尿管結石は、結石の大きさによって治療方法が異なります。
結石が小さい場合
結石が4~5mm以下と小さく、自然に排出される可能性が高いと判断された場合には、まず生活指導によって結石を排出させることが指導されます。また5~10mm以下の尿管結石も一定の確率で1か月以内に自然に排出されることが期待できます。
生活指導として、具体的には水分を1日に2L程度取って尿量を増やしたり、適度な運動をして結石の移動を促したりすることなどが挙げられます。またアルコールや刺激物を取ると、痛みの発作が生じやすくなることもあるため、結石が排出されるまでは控えることが望ましいでしょう。
そのほか尿酸結石やシスチン結石などの場合には、薬物療法で結石を溶かせる可能性があります。
結石が大きい場合
結石の大きさが10mm以上の場合、自然に排出される可能性は低くなります。また、5~10mm以下の結石の中には、1か月経過しても自然に排出されないものもあります。そのため患者の状況や要望にもよりますが、結石が大きい場合や症状が現れてから1か月以内に結石の排出がみられない場合には、合併症を避けるためにも積極的な治療が検討されることが一般的です。
検討される治療方法としては、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や経尿道的尿管結石砕石術(TUL)があります。
体外衝撃波結石破砕術(ESWL:Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy)
X線検査や超音波検査で結石のある場所を特定し、そこへ向けて体の外から衝撃波を当て、結石を細かく砕く治療方法です。
経尿道的尿管結石砕石術(TUL: Transurethral Uretherolithotripsy)
尿道から尿管鏡を挿入して結石のある位置まで進め、超音波やレーザーなどで結石を砕いて摘出する治療方法です。尿管鏡には、材質が硬いものと細いものがあり、結石のある位置によって使い分けます。
予防
尿管結石は、一度結石が排出された後も高確率で再発するといわれています。そのため再発予防として、水分をよく取ること、肥満を予防すること、食生活を見直すことが大切です。また必要に応じて薬物療法による再発予防が検討されることもあるため、定期的に通院し、健康管理に努めるようにしましょう。
食生活の注意点
• 食事の時間をゆっくり取り、“早食い”“大食い”は避ける
• 葉野菜、たけのこ、紅茶などシュウ酸を多く含む食品の取り過ぎに注意する
• ビールなどプリン体を多く含む食品の取り過ぎに注意する
• 食塩の過剰摂取を控える
• カルシウムを適度に取る(1日に600~800mg程度) など
投稿者:
2023.06.13更新
<食事性Mg摂取量が脳容積の大きさと>関連:認知症予防へ向けて
本論文は、認知症発症の予防法の模索を背景として、食事性マグネシウム(Mg)の摂取量と脳容積および白質容積との関連を、性別に焦点を当てて検討したものだ。
認知症の有病率は、世界的に急速な増加が予測されているが、確立された治療法がない中で、本論文は有効な予防方法を見つけるための重要な知見のひとつになりうるものだと考えた。
これまでの研究で、Mgは加齢に伴うさまざまな脳疾患の病因・病態に関与していることが示されており、脳組織内の高いMgレベルは、酸化ストレスと炎症反応を抑制し、シナプスの可塑性や神経変性のプロセスに保護的に作用すると考えられている。また、血圧上昇を抑制するMgの作用も認知症予防に有益ではないかという仮説もある。
食事性Mg摂取量と脳容積、白質容積との関連を分析した本研究では、Mg摂取量の多さは男女ともに大きな脳容積と関連していたが、特に女性における脳容積が大きいことと有意に関連していたと述べられている。
以下のような研究上の限界や解釈の注意点もあるが、脳容積の測定結果も含まれた大規模データによる研究結果は貴重であり、認知症予防への公衆衛生学的な介入方法同定のプロセスとして重要な一歩となる可能性があるだろう。
<研究上の限界や注意点>
• データベースを用いた観察研究に伴う選択バイアスや誤分類などの可能性
• 質問票を用いたMg摂取量カウントに伴うリコールバイアス
• 他栄養素の摂取量など未測定交絡因子の影響
日常臨床への生かし方
周産期領域では、妊娠32週未満の早産児における脳保護目的に硫酸Mg水和物の母体投与が実施される場合がある。
成人でも脳機能保護効果が実証され、リアルワールドデータで認知症予防効果が厳密に検証されるのはまだ先のことだと予想されるが、認知症予防は世界中で期待されているテーマであり、今後の研究に期待したい。
投稿者:
SEARCH
ARCHIVE
- 2023年09月 (7)
- 2023年08月 (6)
- 2023年07月 (6)
- 2023年06月 (64)
- 2023年05月 (25)
- 2023年04月 (13)
- 2023年03月 (23)
- 2023年02月 (19)
- 2023年01月 (16)
- 2022年12月 (41)
- 2022年11月 (5)
- 2022年10月 (27)
- 2022年09月 (54)
- 2022年08月 (27)
- 2022年07月 (23)
- 2022年06月 (37)
- 2022年05月 (12)
- 2022年04月 (25)
- 2022年03月 (25)
- 2022年02月 (6)
- 2022年01月 (21)
- 2021年12月 (23)
- 2021年11月 (11)
- 2021年10月 (9)
- 2021年05月 (34)
- 2021年04月 (48)
- 2021年03月 (122)
- 2021年02月 (70)
- 2021年01月 (44)
- 2020年12月 (39)
- 2020年11月 (30)
- 2020年10月 (43)
- 2020年09月 (33)
- 2020年08月 (30)
- 2020年07月 (6)
- 2020年06月 (23)
- 2020年05月 (63)
- 2020年04月 (14)
- 2020年03月 (13)
- 2020年02月 (31)
- 2020年01月 (3)
- 2019年12月 (11)
- 2019年11月 (12)
- 2019年10月 (8)
- 2019年09月 (15)
- 2019年08月 (25)
- 2019年07月 (23)
- 2019年06月 (11)
- 2019年05月 (15)
- 2019年04月 (4)
- 2019年03月 (7)
- 2019年02月 (25)
- 2019年01月 (11)
- 2018年12月 (14)
- 2018年11月 (48)
- 2018年10月 (32)
- 2018年09月 (24)
- 2018年08月 (10)
- 2018年07月 (15)
- 2018年06月 (11)
- 2018年05月 (6)
- 2018年04月 (1)
- 2018年03月 (13)
- 2018年02月 (17)
- 2018年01月 (17)
- 2017年12月 (7)
- 2017年11月 (20)
- 2017年10月 (14)
- 2017年09月 (12)
- 2017年08月 (1)
- 2017年07月 (43)
- 2017年06月 (50)
- 2017年05月 (6)
- 2017年04月 (13)
- 2017年03月 (107)
- 2017年02月 (84)
- 2017年01月 (29)
- 2016年12月 (22)
- 2016年11月 (87)
- 2016年10月 (88)
- 2016年09月 (55)
- 2016年08月 (8)
- 2016年07月 (48)
- 2016年06月 (29)
- 2016年05月 (5)
- 2016年04月 (6)
- 2016年03月 (14)
- 2016年02月 (12)
- 2015年12月 (8)
- 2015年11月 (19)
- 2015年10月 (23)
- 2015年09月 (21)
- 2015年08月 (23)
- 2015年07月 (14)
- 2015年06月 (25)
- 2015年05月 (13)
- 2015年04月 (37)
- 2015年03月 (35)
- 2015年02月 (32)
- 2015年01月 (12)
- 2014年12月 (13)
- 2014年11月 (21)
- 2014年10月 (24)
- 2014年09月 (15)
- 2014年08月 (23)
- 2014年07月 (34)
- 2014年06月 (18)
- 2014年05月 (14)
- 2014年04月 (17)
- 2014年03月 (34)
- 2014年02月 (24)
- 2014年01月 (30)
- 2013年12月 (22)
- 2013年11月 (24)
- 2013年10月 (21)
- 2013年09月 (14)
- 2013年08月 (26)
- 2013年07月 (23)
- 2013年06月 (41)