大橋院長の為になるブログ

2020.10.10更新

Marfan症候群:

マルファン症候群は幅広い表現型を持つ,全身性の結合組織障害である.マルファン症候群の特徴的症状は視覚器系,骨格系,循環器系に現れる. FBN1遺伝子の変異が,マルファン症候群の単発的な症候から,新生児期に認められる多臓器にわたる重症で急速に進行する症候にまで広範な表現型の発現に関わっている.近視はマルファン症候群の最も一般的な眼の症状であり,約60%の患者に見られる水晶体偏位は,特徴的な所見である.マルファン症候群の患者は網膜剥離,緑内障,早期白内障の発症リスクが高い.骨格系の症状は骨の過形成と関節の弛緩によって特徴づけられる.四肢は体幹に対して不均衡に長くなる(クモ状肢).肋骨の過形成は胸骨を押し込んだり(漏斗胸),押し出したりする(鳩胸).脊柱側彎症は一般的な症状であり,軽度な場合も重度で進行性の場合もある.マルファン症候群の病状と早期死亡の主要な病因は,循環器系に関係したものである.循環器系の特徴的症状にはバルサルバ洞を含む上行大動脈の拡張,大動脈の断裂や破裂,血液の逆流を伴う事もある僧帽弁逸脱,三尖弁逸脱,近位の肺動脈拡張などがある.適切な治療により,マルファン症候群の患者の平均余命は一般人の平均余命に近いものになる.

診断・検査 

マルファン症候群は家族歴と多臓器における特徴的所見に基づいて臨床的に診断される.マルファン症候群の臨床的な診断基準はすでに確立されている.診断の4大所見はバルサルバ洞レベルの大動脈拡張もしくは解離,水晶体脱臼,硬膜拡張,8つの骨所見のうち4つを有すること,である.マルファン症候群に関与している唯一の遺伝子であるFBN1の分子遺伝学的検査は臨床的に利用可能で,70-93%の患者で変異が同定される.

臨床的マネジメント 

マルファン症候群の臨床的マネジメントには遺伝医学,循環器,眼科,整形外科,胸部外科の専門科によるチームアプローチが必要である.多くの眼症状は眼鏡によって調整できる.水晶体脱臼に対しては水晶体摘出が必要となる.成長が完了していれば人工水晶体の植え込みを行う.側彎症に対しては脊柱の外科的固定が必要となる.漏斗胸も外科的治療を要する場合がある.矯正具やアーチサポート(訳注:土踏まずの部分がふくらんだ靴底)は偏平足による下肢疲労や筋痙攣を改善する.大動脈壁の血行動態によるストレス負荷を軽減する薬剤,たとえばベータ遮断薬が診断時もしくはたとえ診断が確定していない場合でも大動脈拡張の進行を抑制するために投与される.ベータ遮断薬が使用できないときはベラパミルが用いられる.成人や年長小児で大動脈径が5 cmを超える場合,拡張速度が1 cm/年に達する場合あるいは大動脈弁逆流が進行する場合は外科的修復が必要となる.うっ血性心不全をきたしている場合は後負荷を軽減する薬剤が奏功する.定期観察では上行大動脈の状態を把握するための超音波検査を毎年行う.

成人で大動脈基部の径が4.5 cmを超える場合,拡張速度が0.5 cm/年を超える場合,明白な大動脈弁逆流を生じた場合はより頻繁な観察が必要となる.マルファン症候群を疑わせる所見を持つ場合や発端者における症状が軽微な場合は親族に対する超音波検査が必要となる.

罹患者は身体接触を伴う競技や競争,アイソメトリックな運動を避け,中等度の有酸素運動にとどめるべきである.充血除去剤やカフェインを含む,心血管系を刺激する薬剤も避け,再発性気胸の危険がある場合には気道抵抗に対抗するような呼吸や陽圧呼吸管理も避けるべきである.歯科治療に際しては,亜急性細菌性心内膜炎の予防を行う.

遺伝カウンセリング 

マルファン症候群は常染色体優性の遺伝形式をとる.マルファン症候群と診断された人の約75%は両親のどちらかがマルファン症候群に罹患している.残りの約25%の人たちは新生突然変異による遺伝子変異の結果として発症している.発端者の同胞のリスクは両親の状況に依存している.もし親が罹患者であれば,その子が病気になるリスクは50%である.もしマルファン症候群の子が臨床的に非罹患の健康な両親から生まれたら,その子は家系内において新規の変異を有したのであって,同胞が持つリスクは50%よりもはるかに少ないと考えられるが,一般のリスクよりは高い.なぜならば,体細胞や生殖細胞系列のモザイクの存在が報告されているからである.マルファン症候群を罹患している親から生まれた子が,変異アレルや疾患を受け継ぐリスクは50%である.

マルファン症候群の出生前診断は,リスクのある妊娠において(両親のいずれかが罹患している事が判明している場合),病気を起こす遺伝子変異がその家系の罹患者により明らかにされている場合や,連鎖(解析の結果)が出生前診断に先立って確認されている場合には,連鎖解析と遺伝子変異の分析のいずれを用いても(技術的には)可能である.しかしマルファン症候群のような,主に成人になってから発症し,知能や寿命に影響しない疾患の出生前診断の依頼はあまり一般的ではない.

診断

臨床診断

マルファン症候群は家族歴や多臓器における特徴的症状の観察にもとづく臨床的診断名である.マルファン症候群の臨床的診断のための基準が確立されている.

家族歴 マルファン症候群の家族歴がない場合,2つの器官に主症状と,他にもう1つ副症状が観察されなければならない.
発端者にマルファン症候群の診断が下されたら,一度近親の診断に必要なのは1つの器官系の主症状と,他にもう1つ副症状が観察されることである.これらの診断基準は,これはすでにマルファン症候群に関連するFBN1遺伝子の変異や,マルファン症候群の家系内で同定されたFBN1遺伝子変異を持っていると判明した人にも適応できる.このように,病気に対する遺伝的素因の記録が存在する場合でさえ,マルファン症候群と診断するためには臨床的な徴候を観察しなければいけない.おおはし

投稿者: 大橋医院

2020.10.09更新

Coffieは大腸癌発症抑製

おおはしコーヒーを飲むことで、大腸がんの進行を遅らせることができる可能性が、米メイヨー・クリニックのChristopher Mackintosh氏らによる研究で示唆された。研究結果の詳細は、「JAMA Oncology」9月17日オンライン版に発表された。

 この研究は、未治療の局所進行性または転移性大腸がん患者を対象に実施された、がんの治療に関する大規模臨床試験の参加者の一部を対象にしたもの。同研究への参加者は、研究への登録時に質問票により、日々摂取する食事や飲料について報告していた。本研究で解析に含められたのは総計1,171人で、694人(59%)が男性、年齢中央値は59歳だった。

 追跡期間中央値5.4年の間に、死亡またはがんが進行した患者は1,092人(93%)だった。解析の結果、コーヒーの摂取量が多いほど、がんの進行と死亡のリスクが低下することが明らかになった(コーヒー摂取が1日1杯増加するごとのハザード比はそれぞれ、0.95、0.93)。また、コーヒーを1日2~3杯摂取する人では、コーヒーを摂取しない人と比べた全生存期間(OS)のハザード比は0.82(95%信頼区間0.67~1.00)、無増悪生存期間(PFS)のハザード比は0.82(同0.68~0.99)であった。コーヒーを1日4杯以上摂取している人では、得られるベネフィットはさらに大きく、コーヒーを摂取しない人と比べたハザード比は、OSで0.64(同0.46~0.87)、PFSで0.78(同0.59~1.05)であった。さらに、こうしたコーヒーの有益性は、カフェイン入りのコーヒーだけでなく、カフェインレスのコーヒーでも認められた。

 Mackintosh氏によると、原発巣からがんが転移した転移性大腸がんのほとんどは、治癒は難しいという。それでも同氏は「食事や運動などのさまざまな生活習慣の要因が、転移性大腸がん患者の生存期間の延長に関連していることが明らかにされている」と指摘。その上で、「われわれの研究では、化学療法で治療中の進行性または転移性大腸がん患者のうち、コーヒーを飲む習慣がある人は、がんの進行が遅く、生存期間が長いことが示された」と述べている。

 ただし、Mackintosh氏らは、「この研究によって、コーヒー摂取と、死亡リスクの低下や、がんの進行抑制との因果関係が証明されたわけではない」と強調。また、この研究結果を受けて、大腸がん患者がいきなりコーヒーを大量に飲むことのないよう注意を呼び掛けている。

 その上でMackintosh氏は、「コーヒーにより予後が悪化することはないので、コーヒー好きの大腸がん患者は、安心して飲み続けても良いことを示唆する研究結果ではある。ただし、そのような判断は、必ず個別に医療の専門家と相談して下すべきものではあるが」と述べている。

 今回の報告を受けて、米国立がん研究所(NCI)代謝疫学部門のErikka Loftfield氏は、「コーヒーには、抗酸化作用や抗炎症作用を有するポリフェノールなど、さまざまな成分が含まれている。また、カフェインは腸の運動性を高める可能性がある」と説明し、こうしたコーヒーの含有成分の作用がMackintosh氏らの研究で示された結果の背景にあるのではないかとの見方を示している。

投稿者: 大橋医院

2020.10.09更新

Coffieは大腸癌発症抑製

おおはしコーヒーを飲むことで、大腸がんの進行を遅らせることができる可能性が、米メイヨー・クリニックのChristopher Mackintosh氏らによる研究で示唆された。研究結果の詳細は、「JAMA Oncology」9月17日オンライン版に発表された。

 この研究は、未治療の局所進行性または転移性大腸がん患者を対象に実施された、がんの治療に関する大規模臨床試験の参加者の一部を対象にしたもの。同研究への参加者は、研究への登録時に質問票により、日々摂取する食事や飲料について報告していた。本研究で解析に含められたのは総計1,171人で、694人(59%)が男性、年齢中央値は59歳だった。

 追跡期間中央値5.4年の間に、死亡またはがんが進行した患者は1,092人(93%)だった。解析の結果、コーヒーの摂取量が多いほど、がんの進行と死亡のリスクが低下することが明らかになった(コーヒー摂取が1日1杯増加するごとのハザード比はそれぞれ、0.95、0.93)。また、コーヒーを1日2~3杯摂取する人では、コーヒーを摂取しない人と比べた全生存期間(OS)のハザード比は0.82(95%信頼区間0.67~1.00)、無増悪生存期間(PFS)のハザード比は0.82(同0.68~0.99)であった。コーヒーを1日4杯以上摂取している人では、得られるベネフィットはさらに大きく、コーヒーを摂取しない人と比べたハザード比は、OSで0.64(同0.46~0.87)、PFSで0.78(同0.59~1.05)であった。さらに、こうしたコーヒーの有益性は、カフェイン入りのコーヒーだけでなく、カフェインレスのコーヒーでも認められた。

 Mackintosh氏によると、原発巣からがんが転移した転移性大腸がんのほとんどは、治癒は難しいという。それでも同氏は「食事や運動などのさまざまな生活習慣の要因が、転移性大腸がん患者の生存期間の延長に関連していることが明らかにされている」と指摘。その上で、「われわれの研究では、化学療法で治療中の進行性または転移性大腸がん患者のうち、コーヒーを飲む習慣がある人は、がんの進行が遅く、生存期間が長いことが示された」と述べている。

 ただし、Mackintosh氏らは、「この研究によって、コーヒー摂取と、死亡リスクの低下や、がんの進行抑制との因果関係が証明されたわけではない」と強調。また、この研究結果を受けて、大腸がん患者がいきなりコーヒーを大量に飲むことのないよう注意を呼び掛けている。

 その上でMackintosh氏は、「コーヒーにより予後が悪化することはないので、コーヒー好きの大腸がん患者は、安心して飲み続けても良いことを示唆する研究結果ではある。ただし、そのような判断は、必ず個別に医療の専門家と相談して下すべきものではあるが」と述べている。

 今回の報告を受けて、米国立がん研究所(NCI)代謝疫学部門のErikka Loftfield氏は、「コーヒーには、抗酸化作用や抗炎症作用を有するポリフェノールなど、さまざまな成分が含まれている。また、カフェインは腸の運動性を高める可能性がある」と説明し、こうしたコーヒーの含有成分の作用がMackintosh氏らの研究で示された結果の背景にあるのではないかとの見方を示している。

投稿者: 大橋医院

2020.10.09更新

【独自】70代男性、コロナ感染後「大血管炎」...成人で「世界初」事例〔読売新聞〕
2020年10月07日 11:23
3名の先生が役に立ったと考えています。
 国立国際医療研究センター(東京)は、70歳代の男性が新型コロナウイルスに感染後、大動脈など太い血管に炎症が起きる「大血管炎」を発症したことを明らかにした。小児では感染後、全身の血管に炎症が起きる「川崎病」の発症例がある。同センターは、成人が新型コロナに感染後、大血管炎を起こした事例は、世界で初の報告になるとしている。

 報告によると、男性は今春、発熱とせきの症状を訴えて入院。新型コロナの感染が確認された。

 CT(コンピューター断層撮影法)検査などをしたところ、腹部から左右の脚にかけて動脈に炎症を起こしている様子がみられた。

 男性はこれまでに血管炎を患ったことがなかった。こうしたことから、同センターは新型コロナの感染後の発症と判断した。非ステロイド性抗炎症薬を投与すると熱は下がり、大血管炎は確認されなくなった。

 同センターの大曲貴夫・国際感染症センター長は「新型コロナに感染して発熱が続く場合は、大人でもこの血管炎の事例のように合併症などを起こしている可能性があり、注意が必要だ」と指摘している。おおはし

投稿者: 大橋医院

2020.10.08更新

高齢者の股関節骨折:

股関節を骨折した高齢患者では自殺リスクが高いという韓国の研究報告が、「The Journal of Bone & Joint Surgery」6月17日号に掲載された。

 乙支大学(韓国)のSuk-Yong Jang氏らは、韓国健康保険制度高齢者コホート(60歳以上)を用い、股関節骨折後の自殺のハザード比の変化を調査。股関節骨折患者1万1,477例と、傾向スコアが一致した2万2.954例(対照群)のデータを用いた。

 平均4.59年の追跡(15万8,139人年)の結果、170例の自殺があった。180日目、365日目までの比較では、股関節骨折患者は対照群に比べ自殺リスクが高く、骨折群では180日間に14例の自殺が認められた(10万人年あたり266.1)。自殺リスクは、骨折群のほうが対象群より高かった(ハザード比2.97)。

 「一般集団で高齢者の自殺率が高いことを考慮しても、股関節を骨折した高齢者の自殺リスクは非常に高い。過去の研究における他の疾患に関連した自殺率と比べても、高齢股関節骨折患者の自殺率は高い」と著者らは述べている。おおはし

投稿者: 大橋医院

2020.10.07更新

睡眠:

睡眠は、乳幼児期には脳の構築と強化を助けるが、2歳半以降では、その役割は脳の維持と修復に切り替わるとする研究結果を、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)統合生物学・生理学教授のGina Poe氏らが報告した。人間でも動物でも、慢性的な睡眠不足は健康面に深刻な悪影響を及ぼしかねない。しかし、なぜそれほど睡眠が重要なのか。この問題を解明するための大きな手がかりとなり得る本研究は、「Science Advances」9月16日号に掲載された。

 Poe氏らは今回、人間と動物の睡眠に関する60以上の研究データを基に、成長過程における睡眠に関するデータ〔総睡眠時間、レム(REM)睡眠の時間、脳や体のサイズなど〕を解析した。その上で、数学的モデルを構築し、このモデルで、脳と体のサイズの変化に伴う睡眠の変化を説明できるかを検証した。

 睡眠は、急速眼球運動と筋活動の低下を特徴とし、鮮明な夢を見るレム睡眠と、筋肉活動は低下しないが、脳が眠っている状態のノンレム睡眠に大別される。本研究では、乳幼児の脳では、レム睡眠中にシナプス(情報を出力する側のニューロンと入力する側のニューロンの接合部)が構築され、強化されていることが分かった。それゆえPoe氏は、「レム睡眠中に乳幼児を起こしてはならない。眠っている乳幼児の脳内では、大切な仕事がなされているのだから」と述べている。

 しかし、レム睡眠の時間は、ヒトだけでなく、ウサギ、ラット、ブタなど多くの動物で、人間の年齢で2歳半頃に達したときに、劇的に減少することが明らかになった。また、レム睡眠の長さは、成長に伴い脳のサイズが大きくなるにつれ、短くなることも分かった。例えば、新生児では睡眠時間の約50%がレム睡眠であるのに対し、10歳までにレム睡眠は約25%にまで減少する。その後、加齢に伴い減少が続き、50歳を超えると、レム睡眠は睡眠全体の15%程度になるという。さらに、2歳半を過ぎたあたりから、睡眠の主な役割も、脳の構築から脳の保持に切り替わり、それが生涯続くことも判明した。

 こうした結果についてPoe氏は、「われわれの研究結果から、2歳半頃にレム睡眠が劇的に減少するのと時を同じくして、睡眠の機能が大きく変化することが明らかになった」と説明している。

 研究チームによると、全ての動物は通常、覚醒時間中にある程度の神経学的ダメージを受ける。ダメージによりニューロン内に蓄積した遺伝子やタンパク質などの破片は、脳の疾患の原因となり得る。このダメージを修復し、残骸を取り除いてくれるのが睡眠だ。本研究論文の上席著者で、UCLA生態学・進化生物学および計算医学教授のVan Savage氏は、こうした脳の修復のほぼ全ては、睡眠中に行われると説明する。しかし、今回の研究結果は、同氏にとっても予想外のものだったらしく、「短期間でこれほど大きな睡眠の変化が見られることにも、また、変化がこれほど早い時期に起こることにも、衝撃を受けた。水が氷に変わるのにも似た遷移だ」と驚きを示している。

 脳を良好な状態に保つには、夜間に十分な睡眠を取ることが大事だと研究グループは指摘する。Poe氏は、「睡眠は、食物と同じくらい重要である。睡眠が神経系のニーズにいかに適合しているかは、奇跡的と言っていいくらいなのだから」と述べている。おおはし

投稿者: 大橋医院

2020.10.06更新

食事の多様性が認知を予防:

多様性に富んだ食習慣の人ほど、加齢による脳の海馬の萎縮が抑制されることが明らかになった。国立長寿医療研究センターの大塚礼氏らによる日本人対象の縦断研究の結果であり、詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」9月2日オンライン版に掲載された。

 大塚氏らは以前、多様性の豊かな食習慣が認知機能テスト(Mini-Mental State Examination)のスコア低下を抑制することを報告している。今回の研究では、より客観的に、MRI検査によって計測した海馬と灰白質の容積を指標とした検討を行った。海馬や灰白質は加齢に伴い萎縮していくが、アルツハイマー病などの認知症では早期から萎縮することが知られている。

 検討対象は、国立長寿医療研究センターが行っている、地域住民を対象とした老化に関する長期縦断疫学研究の参加者のうち、2008年7月~2012年7月に実施した2時点の調査に参加した、認知症の既往者などを除く40~89歳の1,683人(男性50.6%)。2時点の調査でMRI検査を施行し海馬と灰白質の容積を計測。またベースライン時点では、3日間にわたって食事内容を記録してもらい、それを基に食事多様性スコア(Quantitative Index for Dietary Diversity)を算出した。

 食事多様性スコアは、摂取した食品を13のグループに分けて評価した。このスコアが高いほどより多彩な食品を摂取していることを表す。ベースライン時の食事多様性スコアを性別の五分位に分けると、スコアの高い群ほど高齢で身体活動量が少なく、高血圧や糖尿病、脂質異常症の割合が高かった。また、穀類の摂取量は少ない一方、他の12のグループの食品摂取量が多かった。

 ベースラインから2年後に再度MRI検査を行い、海馬と灰白質の容積を計測すると、海馬は平均(±標準偏差)1.00(±2.27)%減少し、灰白質は0.78±1.83%減少していた。

 海馬や灰白質の萎縮に影響を及ぼす可能性のある因子(年齢、性別、教育歴、喫煙・飲酒・身体活動状況、脳卒中・脂質異常症・糖尿病・高血圧・心疾患の既往。モデル1)で調整の上、食事多様性スコアの五分位群で比較すると、海馬(傾向性P=0.004)、灰白質(傾向性P=0.018)ともに、スコアの高い群ほど容積の減少が少ないという有意な関係が認められた。調整因子にベースライン時の海馬または灰白質の容積を追加した解析(モデル2)でも、海馬(傾向性P=0.003)、灰白質(傾向性P=0.028)ともに、やはり同様の有意な関連が維持されていた。

 2年間での海馬容積の変化率(モデル1の因子で調整)で比較すると、第1五分位群(食事多様性が最も少ない群)が1.31±0.12%の減少、以下、第2五分位群が1.07±0.12%、第3五分位群が0.98±0.12%、第4五分位群が0.81±0.12%の減少を示し、最も食事多様性に富む第5五分位群は0.85%±0.12%の減少にとどまっていて、食事多様性スコアが高いほど萎縮が抑制されていた(傾向性P=0.003)。また灰白質も、同様の関係が認められた(傾向性P=0.017)。

 この結果について著者らは、「食事の多様性の高さが海馬や灰白質の萎縮と負の関連があることが示された。海馬の平均的な萎縮は2年間で1.00%であるのに対して、食事の多様性の違いによって萎縮度の差が最大0.5%に及ぶという顕著な違いが認められた。よって、さまざまな食品を食べることは、海馬の萎縮を防ぐ新しい効果的な栄養戦略になり得る」と研究の成果を強調している。おおはし

投稿者: 大橋医院

2020.10.05更新

BCG接種歴は新型コロナを減少させるか?

BCG接種歴のある人は、結核以外の呼吸器感染症になりにくい。それは白血球のIL-1Bを上昇させるためである。

BCG接種歴のある人の65歳以上の新型コロナ感染が少ない、オランダ、ブラジルで論文が出ている。おおはし

投稿者: 大橋医院

2020.10.03更新

心臓リハビリテーションの有用性:

フレイルを合併する心不全患者多数、有効な治療法を探索
 日本医療研究開発機構(AMED)は9月29日、入院した心不全患者全般、特にフレイルや心臓の収縮能が保たれた心不全患者において、多職種の心臓リハビリテーションが有効である可能性を示したという研究成果を発表した。これは、日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院の磯部光章院長が代表を務める研究グループによるもの。研究成果は「Circulation Heart Failure」に掲載されている。

 心不全は高齢化に伴い急増する症候群であり、日本では毎年約1万人のペースで増加し、2030年には約130万人が罹患すると推計されている。心不全は増悪に伴う再入院を繰り返し、そのたびに体力や心臓の機能が低下し、最終的に死亡する。

 心不全患者にはフレイルを合併する患者が多いが、このような患者に対する有効な治療は確立されていない。加えて、特に高齢の心不全患者では心臓の収縮機能が保たれている患者が半数以上を占めているが、このような患者には有効性が証明された治療方法は薬物療法を含めて確立しておらず、全世界的に大きな課題となっている。そこで研究グループは、運動療法や生活指導、カウンセリングなどを多職種で包括的に行う心臓リハビリテーションが、病気の経過に関与するかを調査した。

リハビリを行った患者で、退院後の死亡および再入院のリスクが23%低下
 国内15の多施設共同研究で、合計4,339例の心不全による入院患者を対象として、後ろ向きに5年間追跡して得られたデータの解析をした。その結果、心臓リハビリテーションを行った心不全患者では、統計的にさまざまな影響の要因を調整した上でも、退院後の死亡および再入院のリスクが23%低かったことがわかった。また、フレイル心不全患者や心臓の収縮機能が保たれている患者においても、心臓リハビリテーションの実施は良好な予後と関連していることが明らかとなった。

おおはし

投稿者: 大橋医院

2020.10.03更新

アジアで新型コロナ感染者が少ないのは?

アジアで感染少ない理由 たんぱく質タイプの差が一因か
20/10/02記事:朝日新聞提供:朝日新聞閲覧数:179次へ
 新型コロナウイルスによる感染者数や死亡者数がアジアの国々で欧州と比べて少ないのは、血圧の調整などにかかわるたんぱく質の遺伝子タイプが関係しているかもしれない。国立国際医療研究センター研究所などのチームがそんな研究をまとめ、遺伝子医学の専門誌で発表した。

 新型コロナによる人口あたりの感染者や死亡者は、台湾や韓国、中国や日本などで比較的少なく、ベルギーやスペイン、英国などで多いことが報告されている。マスクなどの衛生習慣や医療環境などの違いのほか、それぞれの地域に住む人たちの遺伝的な特徴も関係しているのではないかといわれている。

 チームは気道や心臓、腎臓などにある「ACE(エース)」と呼ばれるたんぱく質の遺伝子タイプとの関係に注目した。二つあるACEのうち、「ACE2」というたんぱく質は新型コロナが細胞に感染するのにかかわっているとされるからだ。

 すると、ACE2とのかかわりは特にみられなかったが、構造が似ていて血圧調整などに関係している「ACE1」というたんぱく質の遺伝子タイプと関連が見つかった。

 これまで計25カ国・地域について報告された論文などをもとに約1万5千人のデータで分析したところ、ACE1の遺伝子が「I/I(アイアイ)」というタイプの人の割合が欧州では少なく、アジアでは多い。割合が多くなるほど感染者数や死亡者数が少なくなる傾向が、統計学的に認められたという。

おおはし

投稿者: 大橋医院

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