2021.04.02更新

大和魂病院:

<大和魂病院>    大橋信昭
 小生は、石ころが散在している土煙が視界を遮断する、今時、舗装されてない雑草だらけの、細道を歩いていた。その道はかなり急こう配の坂になっており、
その頂に、木造の平屋の3件の長屋を一つにした大きさの病院があった。小生は村人に腹痛がするから,病院は無いかと問うたら、あの小高い頂に名医がいるからという言葉を信じ、この坂道を登っているのである。やっと病院に着いたが、玄関が、網戸で覆われた板塀が重なっており、御用の方は開門とお叫びくださいと、大きな字で、すぐそばに丁寧な字で彫ってあった。「開門」と、腹痛にこたえる大声を出すと、中から、紋付き袴の無表情の男が、外開きの玄関をこじ開けて「中にどうぞ」と言った。その男は、硯から筆を取り出し、厚い台帳を取り出し、指定する箇所に郵便番号、住所、電話番号、氏名を書くように横柄に支持した。今時、筆を使ったことがないから、困っていると、保険診療で医療を原則で試行しているからと保険証も確認した。その男の案内する部屋に、たどり着くには長い板塀の廊下を歩かされた。すると、真っ青になった和服姿の女性がその部屋から飛び出し、小刀で自分の頸部を刺そうとするから、一緒だったその男が素早く阻止した。「申し訳ありません。院長に私の医療行為を叱咤され、自害して詫びようと思いまして。」とうなだれた看護師と思われる女性の頬を、男は思いっきりひっぱたいた。かなりの鈍い音と,女性の悲鳴が廊下に響きわたったが、静寂が重苦しく続いて、小生は無理やり診察室と刻印された部屋に通された。重厚な雰囲気を持った頬髭が豊かだが、前額部の禿げあがった男が院長であった。
「当院の大和魂も困ったものだ。病人の患者さんの名前を読めないと言って、一々自害されては困る。どうされた?」と小生に問われた。あまりにも現実離れした病院に驚かされ、腹痛も忘れてしまった。しかし、台帳に腹痛精査と書いてしまったらしく、もう一人いた看護師らしき和服姿の女性に、無理やり診察台に寝かされた。その女性は、魂と書かれた鉢巻をしており、けわしい表情で院長の診察の介助を☟した。院長の触診は、見事の手さばきで、小生の腹痛を呼び戻した。「急性胃炎」と一言で診断したその医者は、筆で処方箋を書き始めた。その時、廊下を「鬼畜米英、大和魂は永遠」と張り裂けぶ青年の集団をみた。その行列は映画で見た学徒出陣を思い起させるものであった。見習いの医学生達であるそうである。小生が内服薬をもらって帰途に向かうのに、幾時も経たなかった。
小生は読者を感動させて、この短編を終わらせようと思ったが、見事に失敗に終わった。短編小説もまともに書けないから、小生も医業に専念する。つまらないから、ブログに乗せるか迷ったが、乗せることにした。無視してもらっても構わないし、立腹された方には謝るしかない。(完)

おおはし

投稿者: 大橋医院

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