2019.03.04更新

「小生の食事」     大橋医院    大橋信昭

 

 小生の食事は、24時間365日、朝食、昼食、夕食、3食とも家内に
管理されている。朝食は、ご飯に納豆とみそ汁、昼食はカレーライスか、サンドイッチか、夕食は、一日の疲れを休めなさいという家内の考えか、何品か副食がある。しかし、ご飯、時にうどん、蕎麦、夏には冷や麦、を主食にし、魚が最後のメインディッシュで、血の滴るステーキは、めったに出てこない。夕食はわたしにしては豪華なものだ。前菜が出て、野菜炒めか、肉じゃがか、あったかいスープか、65歳の私の胃袋が満足であると訴える。最後に果汁として、みかんかバナナか、メロンはめったに出ない。実に質素で、低カロリー、一日の疲れも吹っ飛ぶ。
 しかし、家内は気の毒である。朝は家族一番に起きて、家の周りを掃除して、シャッターを上げ、駐車場の掃き掃除,表玄関、裏玄関の清掃と錠をあけ、私が診療しやすいように、短時間で済ませている。小生は午前7時におきたら早起きとおもい、8時手前におきる。8時を回って起きたら、家内の「あなた!いつまで寝ているの!患者さんが待合室に一杯よ!」と罵声が鳴り響く。小生も9時開始の診療時間に遅刻してはいけないので、これからが忙しくなる。朝起きたら、仏壇の前に、正座し、奥のご先祖様に、今日一日、無事に診療ができますようにと、お祈りをする。その隣には恵比寿様と大黒様が飾ってあり、患者さんが一杯で、繁盛しますように、二例、二拍手、一礼をする。暇があれば玄関の隅に塩を盛るが、その暇は正月しかない。慌てて、洗顔、ひげをそり、家内の愛情のこもった朝食を取り、それから歯を磨く。昼食も夕食も歯磨きは丁寧にやる。それが歯医者の治療から遠ざかる秘訣である。朝の白衣、見つけるものはワイシャツから靴下まで、家内が用意してハンガーにぶらさがっているので、それを着て、慌てて、診察室の椅子に座る。待っていた患者が、先生、遅いじゃないのと睨みつける。朝一番の患者から、丁寧に診察をし、夢中になっているとあっという間に正午が来る。小生の診療所はこじんまりと少人数のスタッフでやっているので、家内は貴重な事務員である。緊急の往診電話がはいるときは家内が、地図で方向音痴の小生をナビゲートしてくれる。幼稚園、小学校、中学校、グループホーム、産業医と昼は山ほど仕事がある。特に大垣市の郊外の病院に、循環器内科医として応援に行く日は、昼ごはんは味わっている暇がない。しかし、いつの間にか、家内が、カレーライスかサンドイッチとコーヒーが用意してあり、往診カバンをもって現場に向かう。雑用をかたづけると午後3時半になっており、午後の患者さんの診察をする。午後6時半までが7時近くなることがあり、夕食の家内のあっという間にできるDinnerはありがたい。見取り患者がいれば、夕食後もご容態を観察に行かねばならない。
このように家庭医として、活躍できるのも家内のまめな援助がなければ成立しない。感謝の気持ちで一杯だが、何故か、暇な夫婦の会話になると、けんかになる。口喧嘩は、私は家内には、すぐに降参し、自分の書斎に逃げ隠れる。
 夜になると、何故か、夕食をしっかり摂取したにも関わらず、腹が減ってくる。間食のチョコレート、寝る前のパンやビスケットの摂取は、「こんな時間にそんな甘いものを食べて、お腹の周りがまた膨らむわよ!」と眉間にしわを寄せて叱られる。小生は女房の子どもみたいなものである。見つからないように、泥棒になったつもりでも、お菓子のつまみ食いは、何故か見つかってしまう。

家内の食事は、一流料亭のフルコースよりおいしいし、行列の並ぶレストランより、体にいい料理になっている。
低カロリー、繊維の多い、脂質もバランスが取れて、動脈硬化は進まない。小生は家内に胃袋をつかまれたみたいである。多少、家内の隠しカメラより鋭い監視下で毎日を送っているが、家内には感謝したい。本人には恥ずかしくて言えないが「ありがとう、我が妻よ!」本心である。

 

投稿者: 大橋医院