大橋院長の為になるブログ

2022.01.17更新

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が最初に確認されて2年目を迎えた2021年。2020年12月頃から2021年2月にかけての第3波、4月から6月頃までの第4波、そして7月から9月頃までの第5波を経験するなど、COVID-19による社会的インパクトは引き続き大きかった。2021/2022シーズンも【withコロナ時代の医療2021】と題して各領域で診療・研究の第一線に立つ医師とともに1年の状況を振り返っていく。小児科編では、大阪府富田林市で小児科クリニックを運営する藤岡雅司氏(大阪小児科医会副会長、「VPDを知って子どもを守ろう」の会副理事長、富田林医師会理事)に話を聞いた。デルタ株出現以降、国内における子どものCOVID-19患者の発生はやや多くなったものの、ほとんどは軽症から無症状と報告されている。一方、これまでにないスピードで導入されたCOVID-19に対するmRNAワクチン(以下、原則「ワクチン」と表記)を、どのようにして迅速かつ適切に多くの人に接種するかが、藤岡氏にとって2021年のハイライトの一つだったようだ。(聞き手・まとめ:m3.com編集部・坂口恵/2021年11月9日取材、全5回連載)

2021年のハイライトは「集団接種」
個別接種を全く実施しなかった理由
――2021年の診療活動におけるハイライトを教えてください。

 2020年に引き続き、私のいる地域でも必要に応じて小児の検査を行いましたが、陽性例はほとんどなく、学校などでのクラスターも起こりませんでした。一方、2020年12月に米国でCOVID-19に対する初のmRNAワクチンが緊急使用承認され、2021年2月頃から医療従事者、高齢者への優先接種が始まる見通しが政府から示されました(https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine_supply.html)。私の所属する富田林医師会では、2021年1月下旬から、医師会側から自治体担当者に対して、住民接種の体制についての提案を行いました。

――富田林市では集団接種が中心だったのでしょうか。

 富田林医師会がカバーしている富田林市、河南町、太子町、千早赤阪村では、2021年10月までは個別接種は行わず、集団接種のみとしました。集団接種だけというのは大阪府内では富田林医師会管内だけでした。

――個別接種を併用しなかったのはなぜでしょうか。

 2009年の新型インフルエンザ発生の際に富田林医師会では、1歳から小学校3年生の小児に対して、1時間180接種、1日900接種の集団接種を行いました。当時は臨時接種ではなく、任意接種として実施されました。医療機関は国と直接契約しワクチンが供給される仕組みでしたが、接種対象の小児人口に対応するため、当初から市と協議して集団接種を計画していました。接種の順位や時期を決める権限は都道府県にありましたが、大阪府では急に接種時期が前倒しされたため、小児科診療所に保護者からの問い合わせが殺到し、受付業務が混乱しました。市は集団接種の前倒しに反対したため、医師会単独で集団接種を実施せざるを得ませんでしたが、ウェブ予約で多数の接種希望者を受け入れることで、一般診療への影響を収束させることができました。今回のワクチンでは、2009年の時よりも多くの人が接種対象になるので、個別接種を実施すれば、診療業務に混乱が起こるだろうと考えました。

「かかりつけ医での接種が安心」に疑問
 そして、今回、世界初のワクチンということで当初、接種後短時間に起こる副反応、特にアナフィラキシーが懸念されました。国立病院機構の医療従事者への先行接種に関する副反応の報道でもアナフィラキシーに関するものが多く、個別接種で起こったら大変なことになると思いました。医師、看護師が集まって対応する集団接種であれば、アナフィラキシーなどが起こっても適切に対応しやすいですし、予診や接種も滞ることはないと考えました(図)。高齢者へのワクチン接種の準備をしている頃、「かかりつけ医での個別接種が安心、安全」という報道がありました。このワクチンは重症化リスクの高い基礎疾患を有する人こそ接種が必要なので、基礎疾患を理由に接種できないケースはほとんどありません。当医師会では、接種後のアナフィラキシーや体調不良に対して、十分な人員で適切に対処できる体制の方が重要と考え、往診による接種以外での個別接種は実施しないことを自治体に対して提案しました。

図. 富田林医師会における(高齢者対象)集団接種会場の考え方

(提供:藤岡氏)
――確かに、アナフィラキシーなどへの対応は個別の医療機関によっては難しそうですね。

 富田林医師会の関与する自治体ではこれまでに10万接種以上を集団接種で行いましたが、アナフィラキシーの発生は1例もありませんでした。ただ、体調不良の方は年齢により異なりますが、比較的若年者を中心に数百人に1人くらいの頻度で起こっています。たいていが医師1人の個別接種で接種後の体調不良例に対応しながら予防接種を進めるのはかなり難しいのではないでしょうか。「かかりつけ医の方が患者さんのことをよく知っているから安心」というのは、予防接種後のアナフィラキシー等を考慮していないと思います。

集団接種、「大阪モデル」で門前払い
――大阪府など一部の自治体では4-5月頃までワクチン供給に遅れが出て、未接種の医療従事者が高齢者に接種を行うなど、感染リスクの高まる中で混乱や不安も大きかったと思います。

 最初に配布されたワクチンの量はかなり限定的だったこともあり、富田林医師会ではまず、診療所の医療従事者より先にクラスターが発生しやすい介護施設や高齢者施設への巡回接種を行いました。大阪府では、医療従事者はディープフリーザーのある基本型接種施設に予約して接種を受けるという「大阪モデル」が提唱されていました。診療所のスタッフも全員、基本型接種施設でしか接種を受けられないという体制でした。しかし、第3波が起こってしまい、基本型接種施設の接種枠が当初の予定数ほど提供されず、医療従事者の予約が取れない状況でした。私たちは富田林市を通じて大阪府に「住民への集団接種のシミュレーションをしたいので、医師会主導で医療従事者の集団接種をやらせてほしい」と申し入れましたが、門前払いでした。

第3波で一転、知事・市長らが「医師会で集団接種を」
 その後、4月28日に開かれた、大阪府医師会の地区医師会の感染症担当理事のリモート会議で、大阪府の医療従事者の接種がとても遅れていること、大阪府知事と大阪市長から「医師会で集団接種をやってほしい」と大阪府医師会長に直接電話があったことを聞きました。5月1日に地域選出の府議会議員さんを通じて大阪府の担当の方に対して、集団接種を行うので医療従事者向けにワクチンの提供をお願いしました。5月3日午前にワクチン500バイアルを届けてもらう確約ができましたので、3連休中に医師会館内で3000接種できる体制を準備しました。医師会、歯科医師会、薬剤師会を通じて連絡を流し、最終的に2000接種を実施しました。医師会館の会議室で1時間に80回接種、計25時間で完了しましたが、住民接種に向けての良いシミュレーションができました。

投稿者: 大橋医院

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