大橋院長の為になるブログ

2021.12.31更新

消化器内科 先生 の回答
一般的には、絞扼性イレウス=腸管血流障害があるイレウスは外科対応になると思います。 では、造影CTなしに絞扼性イレウスを除外できるかという問題になりますが、結論から言えば、「身体所見、血液検査、単純CTで絞扼性イレウスを”完璧には”除外できません」

 

教科書的には、絞扼性イレウスの適応として下記の所見があります。

・症状:発熱、激しい腹痛、腹膜刺激症状、ソセゴンで緩和できない疼痛

・採血:炎症反応高値、筋逸脱酵素上昇、アシドーシスの進行、大量腹水

・単純CT:大量腹水、closed loop、腸間膜脂肪織濃度上昇、腸管気腫・門脈内ガス

ただし、これらの所見は感度が低く、これらの所見を認めない絞扼性イレウスは珍しくありません。また、症状、採血の所見は、絞扼性イレウスの初期には出現せず、血流障害の進行とともに(つまり腸が腐ってから)出現することが多いです。

当直時の対応としては、絞扼性イレウスを疑う所見があれば、当直中に外科医に相談し、指示を仰ぐのが安全です。翌日まで経過観察して腸管が壊死したため裁判となった事例もあります。

絞扼性イレウスは診断の難しさや、1日で腸管壊死に至る進行の早さもあり、裁判によく出てくる疾患の一つです。

絞扼性イレウスの可能性が低ければ、消化器内科対応でよいかと思われますが、各病院でどのような取り決めになっているかを確認するのが適切かと思われます。

とはいえ、造影CTなしにイレウス対応をすることは、腸管血流障害の程度が十分に評価できないので、リスクがあるという意識は必要だと思います。

「身体所見、採血、単純CTで絞扼性イレウスは除外できる!」という考えは危険ですし、たまたま診断に難渋するイレウスに遭遇してこなかっただけです。参考になれば幸いです。

【消化器内科 / 30代 / 地域医療支援病院(200床以上)】

No.2

消化器内科 先生 の回答
消化器内科医です。

イレウスに対しては、手術でなければ内科で良いと思っています。うちの病院では見極めなど特になく、消化器内科が呼ばれて救急外来で一度診察して、緊急OPEの症例は外科で、保存が可能であれば内科が取ることになっています。ただ、イレウスを入院させるときには外科に連絡を入れています(何かあれば手術になるため)。

ただ、造影CTなしで外科か内科か判断はできないので、イレウスと診断した場合には造影CTを施行しています。

【消化器内科 / 30代 / 特定機能病院(400床以上) / 消化器病専門医】

No.3

消化器内科 先生 の回答
私も、以前同様の案件で苦労したことがあり、いろいろ検討した結果、イレウスで入院してきた場合、翌日まで保存療法ではもたない症例の多くは、腸管虚血がある程度以上ある、いわゆる絞扼性イレウス症例のようです。

画像ではなかなか鑑別が難しかったですが、血ガスで乳酸が測定でき、この値が基準値より高いと虚血が起こっていることが分かるので、当時 外科の先生も対応してくれるようになりました。

乳酸は、糖が分解されるときに、嫌気状態ではTCA回路に入らずに乳酸に分解されるため、体内の虚血状態を判定でき、いろんな病態の判定に使えますが、イレウス症例では、腸管虚血の有無の診断に有用でした。

投稿者: 大橋医院

SEARCH

ARCHIVE

CATEGORY