大橋院長の為になるブログ

2021.12.26更新

withコロナの医療2021】呼吸器科編は日本赤十字社医療センター呼吸器内科部長の出雲雄大氏に登場いただく。国内で最初の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者発生の頃から中等症・重症患者の診療に当たってきた出雲氏。2021年の第3波から第5波では、それ以前とは違った大変さがあったと振り返る。(聞き手・まとめ:m3.com編集部・坂口恵/2021年11月12日取材、全5回連載)

2021年のCOVID-19
「一般的なウイルス性肺炎の疾患に」
――昨年に続き、2021年の先生ご自身のCOVID-19との関わりを振り返っていただけますか。

 COVID-19に関しては2020年の4月頃が一番大変だったと思います。なぜかというと、相手(ウイルス)が何者かよく分からなかったからということです。今年(2021年)1月頃にはだいたいウイルスの性質が分かってきました。そして、レムデシビル(商品名:ベクルリー)やステロイド製剤、バリシチニブ(同オルミエント)といった重症化した段階での治療法が確立してきました。また、2021年前半の段階で感染防御の方法もだいぶ分かってきたので、僕にとっては一般的なウイルス性肺炎を起こし得る疾患と位置付けられるようになりました。

――そうなのですね。

 診療面ではインフルエンザ肺炎や、ウイルス性ではありませんがマイコプラズマ肺炎と同じような感じです。2020年4月にはCOVID-19の性質が分かっていなかったので、心の余裕がないという点での大変さが最も大きかったかと思います。第1波の頃は重症の患者さんがわれわれの施設で最大10人くらい入院しているという感じだったのですが、第5波の時は、一番多いときで重症病床12床が満床、中等症病床も44床満床で、全体で60人近く入院患者さんを受け入れ続けたので、診療体制の維持が大変でした。ただ、治療法や対応が手探りだった第1波の頃と違い、標準的な治療法が確立されたので、精神的な大変さは少なかったですね。もう何回もアップデートして、複雑になってしまっていますが。COVID-19患者さんを受け入れながら、肺がんや間質性肺炎、気管支喘息などの呼吸器疾患による患者さんの診療も通常通り維持していたので、身体的な強度の面で大変だったというのが正直なところです。



(提供:出雲氏)
第5波は全科持ち回りで患者受け入れ
――第5波の頃、報道番組で先生が中等症病床で対応されている様子を拝見しました。その頃の診療体制はどのような感じでしたか。

 第4波までは基本的に感染症科、救急科、呼吸器内科での3診療科で対応する診療体制でしたが、2021年9月頃からは全診療科で診療する体制に切り替えました。入院が必要な患者さんを全診療科で順番に受け入れる。だいたい1診療科当たり1、2人といった規模です。患者数が激増したため、3つの診療科ではとても受け入れられる状態になかったことと、先ほど申し上げたように有効な感染対策や治療方針が確立して、どの診療科でも対応できるようになったことが大きいですね。

――それまでCOVID-19患者さんを診ていなかった診療科でも受け入れる体制にしたのですね。現場のスタッフの方からは抵抗感のようなものはなかったのでしょうか。

 最初はあったかもしれないですね。新しいことをやろうとすると、どこでも起こることです。ただ、全体で受け入れといっても診療科ごとに1-2人の規模ですし、「この波を乗り越えるために一緒に取り組みましょう」というところでしょうか。

――むしろ、それまで診たことがなかった先生も診療されて「あ、こういう感じで治療していけるんだな」となったようなことはあるのでしょうか。

 そうかもしれないですね。先ほど挙げた3診療科以外では軽症から中等症Iくらいの患者さんを診ていただくことが多くて、重症化しそうだと判断したら、3診療科による中等症病床での対応に切り替える体制です。

最初からコロナに全振りしなかった理由
「一度紹介を断ると、ゼロになる」
――本当にこの1年でCOVID-19診療が大きく変わったのですね。

 やはり第5波は患者さんの数が相当増えましたし、他の疾患の患者さんの診療も続ける必要がありますし、そうせざるを得なかったのです。感染症には流行期と非流行期が必ずある。つまり、その感染症だけに医療機関のリソースを全振りすると、流行の波が終わった後に必ず患者さんがいなくなります。呼吸器内科で言うと、肺がんや間質性肺炎といった入院で診ることの多い患者さんもゼロになってしまう。感染症流行期に「その疾患の患者さんは診られません」と紹介を断ってしまうと、その後も紹介されなくなるということは東京都のように大きな病院がたくさんある地域だと起こり得ます。もちろん、自治体の方針でコロナ専門病院に指定されるということはありますが。

――昨年の取材でも、呼吸器内科の通常診療を続けながらCOVID-19患者さんを受け入れて、それを公表したとおっしゃっていました(「災害に強い日赤、新型コロナでつらい時期も」参照)。当時は「この病院ではコロナ患者さんを診ているのですか」という患者さんに「誰がCOVID-19にかかっても不思議ではありません。うちの病院ではCOVID-19患者さんは診ませんという立場を取ったら、かかりつけの患者さんでも別の病院を探さないといけなくなりますよね」と説明されていたと伺いました。多くの患者さんは「その方が安心ですね」との反応だったと。

 COVID-19は呼吸器感染症ですから、呼吸器内科が主に診療するというのは確かなのですが、今までのウイルスなどの感染症の歴史を見ても、その流行が100年も続くことはあり得ないですよね。COVID-19が発生した当初から、呼吸器内科の責任者としてこの感染症に単独で全精力を注ぐということは全く考えませんでした。

投稿者: 大橋医院

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