大橋院長の為になるブログ

2021.12.21更新

日本で"value trial"(コストとバリューを重視した臨床研究)を推進するためのプロジェクトを設立。そのウェブサイト⇒SATOMI臨床研究プロジェクト
 前回の最後に、経口薬の最大の問題点はadherenceであると、今回の内容を「予告」しておきましたが、その前に、これも前回ご紹介した、というよりご紹介しかかった、慢性骨髄性白血病(CML)に対するBCR-ABL蛋白(第9染色体と第22染色体が相互転座した異常染色体:フィラデルフィア染色体形成によるbcr-abl融合遺伝子により生成)のチロシンキナーゼ活性阻害剤(tyrosine kinase inhibitor、TKI)に関する「低用量試験」をまず提示します。

 BCR-ABLに対するTKIとして最初に開発されたimatinibによってCMLの予後は劇的に改善したのですが、「第一世代」imatinibのあとに出てきた「第二世代」TKIはさらに強力にBCR-ABLを抑制します。その一つ、dasatinibは、in vitroではimatinibの325倍の効果があるそうで、imatinibと比較した臨床試験(DASISION試験)でもimatinibより高い効果が証明されました。

 さて、dasatinibの用量に関しては、100mg/dと140mg/dが比較されており、効果は同等で100mgの方が毒性は低いということが分かっていました。加えて、上記のDASISION試験で、(毒性に際しての減量規定によって)用量を100mgよりもさらに落とした集団でも有効性は保持されるようだというデータが出されました。この知見に鑑み、University of Texas/MS Anderson Cancer Centerにて、dasatinib 50mg/dつまり「通常量」の半量での第二相試験が行われました。試験はMD Andersonなどの研究費で行われ、製薬企業は関与していないようです。

 結果は早期結果・長期結果の二報が出ていますが、いずれも非常に良好で、2年時点のoverall survival・event-free survivalはいずれも100%、また12カ月時点でのcomplete cytogenetic response (CCyR) rateとMajor molecular response (MMR) rateはそれぞれ94%と81%でした。これがどのくらい良いのかというと、DASISION試験では12カ月時点のCCyR rateがdasatinib 100mg群で83%・imatinib群で72%、同じくMMR rateがdasatinib 100mg群で46%・imatinib群で28%ですから、これらをいずれも上回っています。

 

投稿者: 大橋医院

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