大橋院長の為になるブログ

2021.09.25更新

再生医療とは、ヒトの組織が欠損した場合に体が持っている自己修復力を上手く引き出して、その機能を回復させる医療である。すでに再生医療は、骨や皮膚、歯科の分野においては組織移植として実用化されており、その発展はまさに日進月歩といえる。近年では、従来の治療法では治療困難である疾患や臓器障害に対して、多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)を利用することに期待が集まっている。さらには2012年に山中伸弥先生がiPS細胞の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、日本の医療界に夢と希望を与えた。


リハビリテーション医療における再生医療の活用

 リハビリテーション医療に関して最初に行われた再生医療は、熱傷における自家培養表皮であり、関節拘縮の改善に成績を上げた。2009年には自家培養表皮が保険収載となり広範囲熱傷の治療は大きく変化したといえる。現在では、皮膚科や形成外科領域で重症熱傷患者に対して皮膚移植を行うことで、関節拘縮改善だけでなく運動機能や外見を良くし、生活の質(QOL)を向上することが知られている。もちろん皮膚移植後には早期リハビリテーション治療が必須で、併用による相乗効果が見込まれる。

 

 皮膚移植ののち中枢神経疾患、骨関節疾患、心血管疾患、呼吸器疾患などで再生医療の臨床応用、研究が進められてきている。リハビリテーション医療の対象の主軸というべき脳卒中、脊髄損傷、神経難病などは再生医療でも対象疾患の中心と考えられ、その治療に期待が寄せられている。当初は、再生医療は後遺症を残さない単独の新しい治療法と考えられていたが、動物実験や臨床試験が進むにつれて、細胞移植後のリハビリテーション治療の重要性が増している。しかしながら、細胞移植とリハビリテーション治療の併用について示した報告はまだ少なく、有効性の程度は明らかでない。

再生医療におけるリハビリテーションの役割

 再生医療におけるリハビリテーション医療の役割は、移植効果の促進と併用効果にある。中枢神経疾患を例に挙げると、シナプスのネットワーク再編成、幹細胞自身の神経分化、血管新生、炎症抑制、栄養因子の放出によるアポトーシスの抑制などにより運動機能の改善が促進される。どのようなリハビリテーション(運動刺激)が効果的にそれらを引き出すかが興味のあるところである。

 

 最近では、ニューロリハビリテーションの概念が広まり、神経科学分野が飛躍的に発展している。脳卒中の機能的改善(麻痺をよくする)には、非麻痺側上肢抑制療法(CI療法)や促通反復療法、目的志向型運動、ミラー療法などがエビデンスの高いガイドラインで推奨されるリハビリテーション治療である。また、経頭蓋磁気刺激(TMS)や経頭蓋直流電流(tDCS)、リハビリテーションロボットといった最新テクノロジーを取り入れることでさらなる機能的改善が得られると考えられる。

再生医療における課題

 前述のように再生医療の近年の目覚しい伸展は臨床応用への期待を高めるのだが、下記のような課題も残している。

臨床応用や産業化・実用化に向けての法制度の整備
細胞摂取、細胞ソースに関する倫理上の問題
安全性(腫瘍化など)の問題
リハビリテーション医療に限った課題としては、

その効果のメカニズムが明らかでない
どの訓練の何が効果に影響を及ぼしている、なぜ機能改善が得られるのかが不明
有効な効果が得られる条件(対象の背景、介入条件、併用の組み合わせなど)が不明
今後の研究が進み、リハビリテーション治療の効果のメカニズムが明らかにされることで、再生医療とリハビリテーション治療の適切な関わりがさらに明らかにされるであろう。

リハビリテーションの現場が今すべきこと

 リハビリテーション医療の現場では、個々の治療水準の違い(腕や能力の違い)、地域・施設ごとの力量の差が顕著になるかもしれない。現在進行形の再生医療について勉強するだけでなく、地域連携や人材育成、工学的知識の充実を図る必要がある。患者個々に合わせた最適なリハビリテーション治療の提供のためにも臨床現場は今のうちにエビデンスが高い治療を身につけておくことも必要である。おおはし

投稿者: 大橋医院

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