大橋院長の為になるブログ

2021.05.19更新

万能コロナワクチンの開発成功は近い:

新型コロナウイルスや他のコロナウイルスに対しても万能の防御効果を持つ可能性を秘めた、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンが、現在、開発段階にある。しかも、このワクチンにかかるコストは、1回分当たりわずか1ドル(約109円)足らずだという。

 このワクチンの開発に関わっている、米バージニア大学小児感染症学教授のSteven Zeichner氏によると、動物を用いた研究で、このワクチン投与により、ブタに感染するコロナウイルスである豚流行性下痢ウイルス(PEDV)からブタを守ることができたことから、新型コロナウイルスを含む幅広いコロナウイルスに有効である可能性が示されたという。この研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」5月4日号に掲載された。

 今回、Zeichner氏らが報告したワクチンは、新型コロナウイルスが人間の細胞内に侵入する際に重要な役割を果たすスパイクタンパク質の中にある、“ウイルス融合ペプチド”と呼ばれる領域を標的としたもの。ウイルス融合ペプチドは、基本的に全てのコロナウイルスに存在し、変異することもほとんどないとみられている。

 開発中のワクチンは、遺伝子組み換え技術により人間の健康に悪影響を与える部分を取り除いた大腸菌を用いたもの。大腸菌の表面に、標的とするコロナウイルスの融合ペプチドを発現させた上で大腸菌を不活化させ、人間あるいは動物に注射する。すると、免疫システムがそれを侵入者と認識して防御反応が起きる。つまり、人間の細胞から産生される物質ではなく、注射した細菌そのものが免疫反応を引き起こすのだ。

 Zeichner氏によると、PEDVとCOVID-19の原因となる2種類のコロナウイルスは、「互いにつながりはあるが、遠い親戚のようなもの」だという。そのため、同氏は「この新型コロナウイルスワクチンが、PEDVに対して効果があったということは、さまざまな新型コロナウイルスの変異株に対しても幅広く効果を発揮する可能性がかなり高いということだ」との見方を示している。ただし、今回の研究では、このワクチンはブタを重症化から守ることはできたが、感染を予防することはできなかったという。結果は有望ではあるが、Zeichner氏は、「今後、さらなる研究が必要だ」としている。

 また、コストの低さもこのワクチンの利点の一つだ。COVID-19に対して現在使用されているmRNAワクチンは、1回分当たり約10ドル(約1,090円)のコストがかかる。この価格は、発展途上国の人々にとっては大きな負担になり得る。一方、Zeichner氏によると、このワクチンのコストは1回当たり1ドル足らずであり、大きな発酵槽を使って製造すればコストをさらに下げられる可能性もあるという。さらに、こうした全細胞性の不活化ワクチンは、冷却管理を要するだけなので、超低温での管理が必要なmRNAワクチンよりも輸送が容易だ。

 今回の研究報告を受けて、米ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センターのAmesh Adalja氏は、「一般的な風邪は、その約25%が新型コロナウイルス以外のコロナウイルスを原因としたものだ。それらもまた、感染症による大きな脅威となりつつある」と指摘。その上で、「コロナウイルスを生物学的な脅威とみなす必要がなくなれば、メリットは大きい。それを達成するにはユニバーサルワクチンが最善の方法になるだろう」との見方を示している。おおはし

投稿者: 大橋医院

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