大橋院長の為になるブログ

2021.03.23更新

卵アレルギーはインフルエンザ予防接種のリスクを上げるか:

インフルエンザワクチンは有効である(生後6カ月以上でNNT 22、2歳以上でNNT 5)。いっぽうで、卵アレルギー児に対するインフルエンザワクチン投与後のアナフィラキシーの発生率は、1,000,000回あたり約1回であり、卵を含まない他のワクチン接種の副反応率と変わらない。インフルエンザワクチンによって得られるメリットは高く、有害事象の発生率は低い。したがって、卵アレルギー児もインフルエンザの予防接種をすべきである。
 卵アレルギーは生後12カ月の子どもの8.9%が有し1)、小児科ではありふれた食物アレルギーである。そして、インフルエンザも保育園や学校を中心に蔓延し、小児科ではありふれた感染症である。インフルエンザのワクチンは鶏卵の尿膜腔で増殖させたインフルエンザウイルスを原材料として製造されている。高度に精製されてはいるが、ワクチン内に数ngの卵白蛋白が残存する可能性がある。そのため小児科外来で、卵アレルギーの子どもがインフルエンザの予防接種を受けていいかどうかという問題に遭遇することはよくある。保護者に本質問をされた場合、自信を持って答えられるようになって欲しい。

ワクチンは小児のインフルエンザ罹患率を30%から11%に下げる
 卵アレルギーのリスクについて説明する前に、まずはインフルエンザワクチンのベネフィットを把握しておく必要がある。

Note  筆者の持論だが、リスクとベネフィットは天秤にかけられて初めて正しく解釈できる。
 2018年のコクランレビューでは、予防接種によって小児のインフルエンザ罹患率が30%から11%に減ることが示された2)。これはNNT 5に相当し、「5人にインフルエンザ予防接種をすれば1人のインフルエンザ発症を未然に防げる」という驚異的な結果である。しかし、この研究はおおむね2歳以上で行われており、2歳未満での効果はコクランでは言及されなかった。いっぽうで、2017年にバングラデッシュで二重盲検ランダム化比較試験が実施され、生後6カ月以上2歳未満の小児でもインフルエンザワクチンが有効であることが示された(インフルエンザ罹患率が14.5%から10.0%に減少)3)。以上から、筆者は生後6カ月からインフルエンザ予防接種を推奨している。おおはし

投稿者: 大橋医院

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