大橋院長の為になるブログ

2020.12.28更新

武田薬品、新型コロナワクチンを2種、同時発売

 武田薬品工業は、2種類の新型コロナウイルスワクチンを同時開発する。先ごろ海外で接種が始まった米モデルナのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、米ノババックスの組み換えタンパクワクチンを国内導入し、年明けから臨床試験に着手する。モデルナ品は海外の治験結果などを生かしてスピード開発し、最短で来年5月頃の承認取得が期待される。ノババックス品は武田薬品が原液から国内製造する「国産ワクチン」と位置づけ、来年秋以降の供給開始を目指す。

 武田薬品は、モデルナ、ノババックスが開発している新型コロナワクチンを日本向けに開発、流通する契約を結んでおり、年明けから国内第1/2相臨床試験(P1/2)をそれぞれ開始する。モデルナ品は1月20日頃、ノババックス品は2月に症例登録を始める予定。例数は各200例程度で、安全性や免疫原性などを評価。問題がなければ、海外のP3結果も活用して承認申請に持ち込む。

 モデルナ品は、先ごろ日本で承認申請された米ファイザー・独ビオンテックのワクチンと同様の申請スキームを狙う。ファイザーらのワクチンは、海外のP3結果でまず申請され、2月に出る国内治験の速報結果を待って承認が判断される見込み。審査期間が大幅に短縮される「特例承認」の適用も求めている。武田も同じ流れでモデルナ品を申請する考えで、海外P3を根拠に申請し、特例承認制度による早期承認を目指す。国内P1/2の速報結果は、最短で5、6月頃に出そうという。6月までに4000万回、9月までに1000万回分を供給することで日本政府と契約している。

 両ワクチンともmRNAワクチンに分類され、数万人が参加した海外P3では、有効率95%前後と高い予防効果を記録している。いずれも米国などで緊急使用許可が出て、接種が始まっている。ファイザー品はマイナス70度C前後の輸送環境が必要だが、モデルナ品はマイナス20度C環境の保管・流通体制が計画されている。市販の冷凍庫や冷蔵庫で対応でき、ドライアイスは不要という。

 ノババックス品は、来年度下期の実用化を目指す。米国では治験薬製造の遅れでP3開始が遅れているが、日本の開発スケジュールに影響はないと見ている。同ワクチンは日本向けの製造も武田が担当する。原液製造から、輸入したアジュバントを組み合わせた最終製剤、包装工程までを同社の光工場(山口県)で行う。

 厚生労働省の新型インフルエンザワクチン生産整備事業で立ち上げたパンデミック・ワクチン用の製造設備があり、これを拡充して生産体制を準備する。厚労省の助成金約300億円を活用し、年明けにも設備改修や技術移転に着手する。現状の生産収率や必要な抗原量を踏まえると、年間2億5000万回分以上の生産能力は確保できるとみている。具体的な供給契約については日本政府と協議中。

 光工場は今年、米国向けの医薬品製造でcGMP違反があったとして、米国食品医薬品局(FDA)からワーニングレター(警告文)を受けている。FDAの指摘事項に対応するチームとは別に、コロナワクチン担当者のみを集めた特別チームを立ち上げているため、ワクチン開発の遅れは生じていないという。

 武田自身もワクチンを研究開発する機能はあるが、自社のコロナワクチン開発はしなかった。まず重視した期限が、来年の東京五輪に間に合うかどうか。今川昌之・日本ワクチン事業部長は、「国内の研究機関などからも声はかかったが、スピードを重視するなら自社でワクチンを開発するのは無理だと判断した」と話す。

 複数のワクチンを他社から導入して同時開発することも決めた。どのワクチンが短期間で開発成功するかわからない以上、モダリティが異なる複数のワクチンを同時開発する「ポートフォリオ・アプローチ」が必要と考えた。いち早く実用化されそうなワクチンを検討した結果、世界1番手で臨床試験が始まったモデルナのmRNAワクチンが候補に浮上。日本国内で生産される「国産ワクチン」も重要と考え、光工場の設備を活用できそうなノババックスのワクチンを製造から手がけることも決めた。開発が順調なインフルワクチンと同じ製造技術、アジュバントを使っていることも決め手になった。同社のコロナワクチンは、富士フイルムやAGCの子会社などが海外製造にかかわっている。

おおはし

投稿者: 大橋医院

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