大橋院長の為になるブログ

2020.10.07更新

睡眠:

睡眠は、乳幼児期には脳の構築と強化を助けるが、2歳半以降では、その役割は脳の維持と修復に切り替わるとする研究結果を、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)統合生物学・生理学教授のGina Poe氏らが報告した。人間でも動物でも、慢性的な睡眠不足は健康面に深刻な悪影響を及ぼしかねない。しかし、なぜそれほど睡眠が重要なのか。この問題を解明するための大きな手がかりとなり得る本研究は、「Science Advances」9月16日号に掲載された。

 Poe氏らは今回、人間と動物の睡眠に関する60以上の研究データを基に、成長過程における睡眠に関するデータ〔総睡眠時間、レム(REM)睡眠の時間、脳や体のサイズなど〕を解析した。その上で、数学的モデルを構築し、このモデルで、脳と体のサイズの変化に伴う睡眠の変化を説明できるかを検証した。

 睡眠は、急速眼球運動と筋活動の低下を特徴とし、鮮明な夢を見るレム睡眠と、筋肉活動は低下しないが、脳が眠っている状態のノンレム睡眠に大別される。本研究では、乳幼児の脳では、レム睡眠中にシナプス(情報を出力する側のニューロンと入力する側のニューロンの接合部)が構築され、強化されていることが分かった。それゆえPoe氏は、「レム睡眠中に乳幼児を起こしてはならない。眠っている乳幼児の脳内では、大切な仕事がなされているのだから」と述べている。

 しかし、レム睡眠の時間は、ヒトだけでなく、ウサギ、ラット、ブタなど多くの動物で、人間の年齢で2歳半頃に達したときに、劇的に減少することが明らかになった。また、レム睡眠の長さは、成長に伴い脳のサイズが大きくなるにつれ、短くなることも分かった。例えば、新生児では睡眠時間の約50%がレム睡眠であるのに対し、10歳までにレム睡眠は約25%にまで減少する。その後、加齢に伴い減少が続き、50歳を超えると、レム睡眠は睡眠全体の15%程度になるという。さらに、2歳半を過ぎたあたりから、睡眠の主な役割も、脳の構築から脳の保持に切り替わり、それが生涯続くことも判明した。

 こうした結果についてPoe氏は、「われわれの研究結果から、2歳半頃にレム睡眠が劇的に減少するのと時を同じくして、睡眠の機能が大きく変化することが明らかになった」と説明している。

 研究チームによると、全ての動物は通常、覚醒時間中にある程度の神経学的ダメージを受ける。ダメージによりニューロン内に蓄積した遺伝子やタンパク質などの破片は、脳の疾患の原因となり得る。このダメージを修復し、残骸を取り除いてくれるのが睡眠だ。本研究論文の上席著者で、UCLA生態学・進化生物学および計算医学教授のVan Savage氏は、こうした脳の修復のほぼ全ては、睡眠中に行われると説明する。しかし、今回の研究結果は、同氏にとっても予想外のものだったらしく、「短期間でこれほど大きな睡眠の変化が見られることにも、また、変化がこれほど早い時期に起こることにも、衝撃を受けた。水が氷に変わるのにも似た遷移だ」と驚きを示している。

 脳を良好な状態に保つには、夜間に十分な睡眠を取ることが大事だと研究グループは指摘する。Poe氏は、「睡眠は、食物と同じくらい重要である。睡眠が神経系のニーズにいかに適合しているかは、奇跡的と言っていいくらいなのだから」と述べている。おおはし

投稿者: 大橋医院

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