大橋院長の為になるブログ

2020.10.28更新

LDL-コレステロールと収縮期血圧の低下は脳血管障害を減少させる:

低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)1または収縮期血圧(SBP)2を低下させると、心血管系疾患(CVD)のリスクが低下することが多数の短期試験で示されており、メンデルランダム化試験からは、これらのベネフィットが、時間が経つにつれて増大する可能性が示唆されている。欧州心臓病学会議(ESC Congress) 2019において、英国ケンブリッジの治療開発分野(Translational Therapeutics)の研究責任者・教授であるBrian Ference氏は、生涯にわたる心血管(CV)イベントのリスクと、LDL-CおよびSBPの両方の長期間の低下との関連を評価し定量化することを目的とした大規模研究の結果を公開した。

 「LDL[-C]とSBP両方の長期間の低下による効果は、長期ランダム化試験で評価されるのが理想的でしょう」とFerence氏は説明した。「しかし、このような試験は完了するのに数十年かかるため、実施される可能性はあまりありません」。

 Ference氏らは、この課題を解決するため、低LDL-Cまたは低SBPと関連する先天的な遺伝的変異に基づき、英国バイオバンクに登録された438,952人をランダム化した。まず100個のエキソーム変異によるLDL-C遺伝スコア(中央値以上または以下)に従って割り付け、次に61個のエキソーム変異によるSBPスコア(中央値以上または以下)によって割り付けた。

 こうして、低LDL-C群、低SBP群、低LDL-Cかつ低SBP群、および対照群の4群にランダム化した。「脂質や血圧に関連しないベースラインの特性には(4群間で)差はみられず、各群への割り付けは実際にランダムであったことが実証されました」とFerence氏は付け加えた。

 主要アウトカムである主要冠動脈イベント(MCE)は、非致死性心筋梗塞(MI)、冠動脈血行再建術、または冠動脈疾患による死亡の初発と定義され、合計24,980人に認められた。副次的アウトカムは、MCEまたは虚血性脳卒中の初発として定義される主要心血管イベント(MCVE)および複合アウトカムの個々の要素であった。
LDL-C遺伝スコアが中央値より高い群は、対照群と比較して生涯のLDL-C が15.1mg/dL低く、LDL-C が1mmol/L低下することでMCEリスクが54%低下した(OR:0.46;95%CI:0.43~0.48)。SBPの遺伝スコアが中央値を上回った群は、対照群と比較してSBPが2.9 mmHg低く、SBPが10 mmHg低下することでMCEリスクが45%低下した(OR:0.55;95%CI:0.52~0.59)。
これらの結果から、生涯にわたるLDL-CおよびSBPの低下はMCEリスクを低下させることが示されたが、その影響は互いに独立していることが分かった。低LDL-C群では、対照群と比較したMCEリスクの低下は、SBPスコアによってさらに4つに分けた群のそれぞれで一貫しており、低SBP群でもLDL-Cスコアによってさらに4つに分けた群で同様だった。しかし、2×2要因分析から、これらの影響は相加的であることが示された。低LDL-Cかつ低SBP群では、LDL-Cの1mmol/L低下およびSBP の10 mmHg低下により、対照群と比較して生涯のMCEリスクが78%低下した(OR:0.22;95%CI:0.21~0.24)。
Ference氏は、「LDL[-C]とSBPの両方の低下による効果は、複数の異なるCVアウトカム間で全く同様のようでした」と参加者に語った。低LDL-Cかつ低SBP群は、対照群と比較して、MCVEリスクが73%低く、非致死性MIリスクが75%低く、冠動脈疾患による死亡リスクが68%低かった。低LDL-Cかつ低SBP群の結果は、糖尿病の有無、性別、BMIなどによる様々なサブグループでも同様であったが、Ference氏は、喫煙者で影響がわずかに減弱することを強調した。
用量反応性を評価するために追加された4×4要因分析において、LDL-CとSBPの低下のいずれの組み合わせでも、双方の低下を合わせた差に比例してCVDリスクが低下した。このことは、長期間のLDL-CおよびSBP低下が生涯のCVDリスクに及ぼす影響は用量依存的であり、程度と期間の両方によって決定しうることを示している。
「結論として、生涯にわたるLDL[-C]とSBPの両方の低下は、生涯のCVDリスクに、独立して相加的かつ用量依存的に影響を及ぼします」とFerence氏は述べた。「ほとんどのCVイベントが予防可能であることが確認されたと言えます。そして、長期間LDL[-C]とSBPを軽度低下させることで、ほとんどのCVイベントを予防できることが示唆されます」と同氏は続けた。
同氏は、これらの影響は経時的に増加すると考えられるため、「LDL[-C]とSBPのわずかな差でさえも、生涯にわたるCVDリスクの劇的な減少をもたらす可能性があります」と説明した。この結果は、生涯のCVリスク減少へのアプローチと低LDL-Cを達成するための生活指導を推奨する、脂質異常症の管理の新しいESC/ European Atherosclerosis Society (EAS)ガイドライン3を強く支持している。
「関連の大きさを定量化し、関連形式を明らかにした本研究の結果は、新たな生涯リスクアルゴリズムの設計や次世代のCV予防ガイドラインへの情報提供を可能にします。」おおはし

投稿者: 大橋医院

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