大橋院長の為になるブログ

2020.06.03更新

COVID-19患者のPCR検査再陽性化機序-ウイルスが肺に隠れていることを初めて解明:

患者のPCR検査再陽性化は、肺に残存している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と関連している可能性がある。
 武漢で初めてSARS-CoV-2が発生して以降、この街は全国民から注目を集めている。4月26日、約5カ月にわたる戦いの末に吉報が届いた。武漢から入院患者がいなくなったのだ! しかしながら、全国各地で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者のPCR検査再陽性化は国民を不安に陥れている。これらの回復した患者は、また確定患者として感染性を有するようになるのだろうか?
 こうした疑問に答えるためには、まず患者のPCR検査再陽性化の機序を理解する必要がある。研究者による不断の講究の結果、患者のPCR検査再陽性化の原因が初めて明らかになった。
 4月28日、中国人民解放軍第三軍医科大学と南方医科大学の研究者らが「Cell Research」に共同発表した論文には、SARS-CoV-2が肺に潜伏して組織病理学的変化を引き起こす可能性について報告されている。
 この研究では、PCR検査陰性の患者の肺にウイルスが残留していることを初めて病理学的に証明しており、鼻咽頭スワブ検査で陰性という結果が患者の肺組織にウイルスが残っているか否かという事実を反映していない可能性を指摘している。

COVID-19患者のPCR検査再陽性化機序
 1月27日、COVID-19患者と濃厚接触した78歳の女性が転倒して入院した。6日後にSARS-CoV-2の陽性反応を示したため、治療が開始された。2月8日から10日にかけて、この患者の3回の鼻咽頭スワブによるPCR検査はすべて陰性であり、症状が改善したため、退院を待つばかりとなっていた。しかし、患者は2月14日に突然の心停止に陥り、不幸にも死亡した。臨床検査の結果では、この時にCOVID-19患者によく認められるリンパ球減少症が認められた。
 SARS-CoV-2が患者の体内に残存していないかどうかを判断するため、研究者は肺、肝臓、心臓、腸管と皮膚の組織切片のデジタルPCR分析を行った。驚くべきことに患者の肺組織からのみSARS-CoV-2の核酸が検出された。電子顕微鏡による観察では、気管支上皮細胞とII型肺胞上皮細胞の両方から直径70-100nmのSARS-CoV-2粒子が認められた。続いて研究者らは免疫組織化学法を用いた染色による検証を行ったが、同様の結果が得られた。SARS-CoV-2は肺組織内には存在していたが、肝臓、心臓、腸管、皮膚と骨髄にはウイルスの痕跡は認められなかった。
 肺生検標本の病理組織学的検査では、肺胞中隔破裂、II型肺胞上皮細胞の増殖と脱落などの病理学的特徴を含むびまん性肺胞損傷を示していることが判明し、これらはSARSやMERSと一致していた。肺胞腔や肺胞中隔に浸潤した免疫細胞の種類を分析するために、研究者らが免疫組織化学法による染色を行ったところ、主としてCD68+マクロファージ、CD20+B細胞とCD8+T細胞が浸潤していたが、CD4+T細胞とCD38+形質細胞はほとんど検出されなかった.

PCR検査再陽性化患者に“感染性”はあるのか?
 患者が再びSARS-CoV-2の陽性反応を示した場合、ウイルスは他人に感染するのか? この疑問に対して、中国国内外の研究者の回答はこうだ。「再陽性化患者はほとんど感染性がないか感染力が弱い」。
 3月30日に回復した262人の患者を対象とした研究がプレプリントのウェブサイトであるmedRxivに掲載された。対象患者のうち38人が再陽性化を示したにもかかわらず、濃厚接触した21人のPCR検査はすべて陰性であり、感染は認められなかった。
 1週間前に韓国の感染症対策組織は記者会見において、6人の再陽性化患者からウイルスを分離培養した結果はすべて陰性であり、もはや感染性が無いと推測されることを発表した。
肺のウイルス検査が必要かもしれない
 世界保健機関(WHO)の最新統計によると、現時点で世界中の確定患者総数は302万人で、累積死亡者総数は20万人を越えている。たとえ、再陽性化患者に感染性が無かったとしても、警戒を緩めることはできない。最新の研究によると、中国人民解放軍第三軍医科大学と南方医科大学の研究者らは、退院患者、とりわけ基礎疾患を有する高齢者は気管支肺胞洗浄液のウイルス検出を行う必要があり、隔離と経過観察のための期間を延長することが望ましいとしている。おおはし

投稿者: 大橋医院

SEARCH

ARCHIVE

CATEGORY