大橋院長の為になるブログ

2020.05.07更新

肥満者は非高齢でもCOVID-19が重症化しやすい 米国の死亡者数が多い原因?新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連のこれまでの報告から、高齢や慢性疾患が重症化や死亡のリスク因子であることが明らかになっている。しかし、肥満者の場合は高齢でなくても重症化リスクが高いことを示す2件の研究が発表された。肥満に伴う全身の炎症がCOVID-19重症化に関連していると考えられ、心疾患や肺疾患を有することよりも重症化との関連が強いという。
 米ニューヨーク大学(NYU)のJennifer Lighter氏は、「米国民の40%が肥満である。この肥満者の多さが、他の国に比べてCOVID-19罹患率と死亡率が高いことに、影響を及ぼしていることは疑いない」と、「Clinical Infectious Diseases」4月9日オンライン版に掲載された論文で述べている。
 60歳未満の人は一般に、COVID-19の重症化リスクは低いと考えられている。しかしLighter氏らが行った、ニューヨーク市内のCOVID-19患者の治療状況を年齢別、BMI別に検討した結果から、60歳未満であってもBMI高値ではCOVID-19が重症化しやすいことが明らかになった。具体的には、BMIが30~34の人は30未満の人に比較し、緊急入院の頻度が2.0倍、ICU入室頻度が1.8倍となり、さらにBMIが35以上の場合は同順に2.2倍、3.6倍に上った。一方、60歳以上ではBMIによる有意な重症化リスクの上昇は見られなかった。
 Lighter氏によると、肥満者は糖尿病や心疾患がなくてもハイリスクであり、その理由について「肥満者は閉塞性睡眠時無呼吸、喘息、胃食道逆流症などを有することが多く、これらが呼吸器系に影響し、COVID-19のような感染症の転帰に影響を及ぼす可能性がある」と説明している。
 もう一つの研究はNYUのChristopher Petrilli氏らによる研究で、「medRxiv」4月11日オンライン版に掲載された。それによると、COVID-19による入院のリスク因子は高齢(75歳以上でオッズ比66.8、65~74歳で同10.9)、肥満(BMI40以上で同6.2)、および心不全(同4.3)であり、重症化のリスク因子は、入院時の酸素飽和度低値(SpO2が88%未満で同6.99)と炎症マーカー高値(CRP200mg/L以上で同5.78)などだった。
 Petrilli氏は、肥満が全身の慢性炎症を来した状態であることがCOVID-19重症化と関連しているのではないかと考察している。慢性炎症については近年、心疾患や2型糖尿病、がんなど、多くの疾患との関連が指摘されている。
 一方、米イェール・グリフィン予防研究センターのDavid Katz氏は、COVID-19の感染のリスク因子を正しく評価するためには、医療措置が必要となる患者のデータのみに基づく解析では不十分であると指摘。「何が重要かを知るには、一般集団からの無作為化された検討対象のデータが必要。症状の有無に関わらず、年齢、健康状態、体重を層別化し、それぞれのカテゴリーの感染率を調査しなければならない」と述べている。
 ただし、同氏も「年齢と感染前の健康状態が、COVID-19重症化と死亡リスクにおける重要な予測因子だ」としている。そして、「われわれは年齢を変えることはできないが、適切な場所にいながら体重を管理し健康状態を維持することは可能であり、COVID-19パンデミックを乗り越える力を高めることができる」と語っている。 おおはし

投稿者: 大橋医院

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