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2020.05.28更新

COVID-19で急性心不全の呼吸管理「困難」な施設が増加:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、心不全急性期の呼吸管理に優先して行われる非侵襲的換気療法(NIV)の実施に困難を感じる医師(施設)が増えていることが分かった。日本心不全学会が、全国43都道府県の施設を対象に行ったアンケートで明らかになった。同学会理事長の筒井裕之氏(九州大学循環器内科教授)は「今後も影響を調査し、必要な対策を取っていきたい」と話している。(m3.com編集部・坂口恵/5月26日取材)

70%の施設がCOVID-19で心不全の呼吸管理に困難
 調査は5月11日から14日にかけ、インターネットによるアンケートで実施された。日本心不全学会会員ならびに心不全患者の登録研究(JROADHF-NEXT)の参加施設のうち、全国43都道府県の174施設(うち、5月中旬現在の特定警戒都道府県に所在する施設は100カ所)から回答があった。
 COVID-19が流行する2019年12月以前に急性心不全患者にNIVを使用していた割合は非特定警戒都道府県に所在する施設(74件)と特定警戒都道府県に所在する施設(100件)でそれぞれ97%、95%だった。
 これに対し、COVID-19の流行が始まった2020年1月以降に「NIVの適応を変更した」と回答した施設は、非特定警戒都道府県で47%、特定警戒都道府県では70%に上っていた。ネーザルハイフロー(NHF)についても流行前と後で同様の傾向が見られた。
 また、「COVID-19流行前と比べて、現在、NIVの適応またはNHFの適応がある急性心不全の診療をどの程度困難に感じているか」との質問には、非特定警戒都道府県の49%、特定警戒都道府県では73%が「困っている」と回答していた.

急性心不全に「NIV使用せず、早めの挿管」考慮の施設が増加
 「COVID-19の診断がついている急性心不全患者にNIVやNHFを使用するか」との問いには、いずれのカテゴリーの施設も70-80%が「一切使用していない、またしないつもり」と回答。一部の施設では急性心不全の呼吸管理に対し、「原則、挿管とする」ルールの変更を行っていた。自由回答では、挿管やNIVを行う際に陰圧室や個人防護具(PPE)を使用することや、感染症指定医療機関への転院を検討するといった医療負担の増大を示唆する内容も見られた。
 疑い例に対してもNIVやNHFを「使用する場合もある、もしくはする場合もあると考えている」が、いずれのカテゴリーの地域でも30-40%、「一切使用していない、あるいはしないつもりだ」との回答は50-60%に上っていた。疑い例に対しては、PCR検査で陰性を確認、あるいは胸部CTでCOVID-19による肺炎を疑う所見がないかを確認した後にNIVやNHFの使用を考慮すると回答した施設が複数あった。また、疑い例においても「原則挿管」や指定医療機関への転院を第一に考慮するとの回答も寄せられた。
 回答医師らからは「心不全診療でNIVは必要不可欠な治療手段。感染拡大をさせず安全にNIVを実施できる方法を検討、開発してほしい」「循環器救急での抗原検査の適応に関するガイドラインを作ってほしい」といった切実な声が寄せられている。

筒井氏「院内感染リスク考えると、やむを得ない」
 筒井氏は、m3.comの取材に対し、「今回の全国調査から、COVID-19流行下では急性心不全治療に必要なNHFやNIVの実施が困難なことが明らかになった。陰圧個室がない場合、NHFやNIVはエアロゾル発生の懸念があり、院内感染のリスクを避けるために(実施を控えることが)やむを得ないのが実情だ」との見方を示した。
 また、「心不全患者はCOVID-19も含め、呼吸器感染症を合併しやすい。呼吸器感染症は心不全の増悪因子でもあり、心不全患者のCOVID-19発症による致死率は高いことも報告されている」と指摘。「学会として、医療従事者や患者が必要とする情報を発信していく予定だ。COVID-19が心不全を含む循環器疾患、さらには循環器診療にどのような影響を与えるのか、継続的に調査し、対策を取っていきたい」と話している。おおはし

投稿者: 大橋医院

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