大橋院長の為になるブログ

2020.04.30更新

Wellers 症候群:


【一発診断】胸が痛いんです…と60歳代男性
循環器疾患 / 一般内科疾患

おおはし高血圧・糖尿病・喫煙歴のある60歳代男性にみられた前胸部痛である。胸痛が消失した後の心電図にてV2-4誘導で二相性のT波を認め(画像1)、ST変化・異常Q波・R波の減高がなく、高感度トロポニンIが陰性であることからWellens症候群(不安定狭心症のひとつ)を疑った。緊急で冠動脈造影検査を施行したところ、左前下行枝近位部に狭窄病変を認めたため確診した。

Wellens症候群は、不安定狭心症の中で、胸痛が消失した時に前胸部誘導でT波の心電図変化を示すものをいう1)2)。重症度から、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に相当する心電図変化(STEMI equivalents)のひとつである。左前下行枝近位部の高度狭窄を示唆する1)2)。一過性の虚血によって生じた一時的な軽微な心筋障害を反映している1)2)。不安定狭心症で入院した症例の14-18%でみられ、①V2・V3誘導で対称性の深い陰性T波(時にV1・V4・V5・V6誘導を含む)(76%)、②V2・V3誘導で二相性T波(24%)、の2つに分類される3)。

診断基準としては、①最近の胸痛の既往、②胸部誘導で異常Q波がない、③胸部誘導でR波の減高がない、④心筋逸脱酵素の上昇がないか、あっても軽度(正常値の2倍まで)、⑤ST上昇がないか、あっても軽度(1mm以下)、⑥V2・V3誘導で対称性の深い陰性T波もしくは二相性T波、⑦胸痛が消失した時の心電図変化3)4)、などがある。左前下行枝に病変のある不安定狭心症における陰性T波の感度は69%、特異度は89%、陽性適中率は86%であり5)、胸痛時の心電図では正常化(pseudo-normalization)、もしくはST-T波の上昇がみられる2)3)。

本所見がみられた場合は、トレッドミル検査などの運動負荷試験は禁忌であり3)、早期に冠動脈造影検査からの再潅流療法を行う。未治療の場合、75%が1週間以内に心筋梗塞に進展する1)。

投稿者: 大橋医院

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