「拝啓、女房殿」
大橋医院 大橋信昭
「あなた!いつまで寝ているのよ!もう午前8時よ!遅刻じゃない!」
びっくりして、携帯の目覚ましが壊れているのか?それとも早朝、午前時5時まで随筆を書いていたから、頭が回らない。
洗顔をすませて、シャツを着る。女房が「あなた、ジャケットが裏表反対でしょ!そんな恰好で、外来を、患者さんの前で診察をするの!そらそら!くしたが裏表反対じゃない!あなた、スリッパを履いて動き回るのよ!はずかしいたら!アーそんな恰好で、ズボン履こうとしたらひっくり返り、ストーブが倒れちゃうじゃない!火事になるわよ!ちゃんと座って!」
やっと着替えも終わり、朝食を済ませていたら彼女が、「白衣を着て、食事をしてはいけません!何回、言ったら分かるの?ほら!そこにしみがついているじゃない!新しい白衣に着替えなさい!患者さんが待合室でいっぱいで、院長はいつ回診を始めるのだと、怒っているそうよ!」あわてて、スリッパを履こうとしたら、ひっくり返りそうになり、「あなた、ひっくり返り、足でも骨折したらどうするの!去年の冬は頭を階段のサンに打ち付け5針も近くの外科医に、縫合してもらったでしょ!危なっかしくて、みとられない!」やっと、女房から脱出して、外来に座り回診がはじまった。
診察室は、私の独壇上であるから安心だ。それでも、事務をお願いしている女房が「39℃の患者さんよ!」「先生、この病名、何と書いてあるの!」外来では女房は私のことを“先生”と持ち上げる。外来がはじまれば、あっという間に数時間が過ぎ去る。
外来も終わりそうになると、「今日はOOさんに往診でしょ!」」「今日は産業医じゃない、岐阜県産業保健センターの人が午後1時に向かいに来るって言ってたはよ!」「あなた、今日は小学校の健診でしょ!(以下同文)幼稚園の健診でしょ!中学校の健診でしょ!グループホームの健診でしょ!介護認定審査会があるんじゃない!3軒先のお婆さんが気分が悪いからすぐに往診に来てッて!あなた、往診カバンはそれでいいの!」
「分かった!君の言いたいことはすべてわかっている!間違いがない!」
と反論するがこの前、田んぼの畦道に脱輪したし、居眠り運転で、人こそ怪我はしなかったが、周囲は全て破壊した。私は無事であった。この後始末は全て女房がやってくれる。
私は,女房の奴隷だ。給料は無い。「お金が必要ならば、あげますから」
この家は、診療所は私の名義だが、どこに何が置いてあるか、銀行から金を引き下ろすのはどうしたらよいか、私は理解していない。銀行、市役所は大嫌いだ。故に、女房に愛人の一人でも見つけられたら(実際には恐ろしくて作れない)
顔は傷だらけ、往復ビンタがやってきそうである。
朝はご飯に納豆とみそ汁、昼はカレーかサンドイッチ、夜は家内の私の身体を考えた優しい料理が待っている。ホットである。しかし、すぐに寝間着を揃えて、シャワーである。その間に布団は整理され、炬燵が入っている。
何しろ,朝起きたら、シャッターは開いてあるし、掃除は住んでいるし、排便を終了後、」働くのみである。勉強会の居眠りは本格的に疲労している。
下着もセーターも背広もどこにあるか知らないし、外出時は女房の着付け通りである。これには逆らってはいけない。手帳で一か月の私のスケジュールは、彼女の頭に入っているし、町内づきあい、どぶ掃除、おみやさんの掃除、冠婚葬祭全て女房の言うことをきけばうまくいく。
拝啓、女房殿、あなたのオールマイティーな力で当院も31年過ぎました。
今後ともあなた様の言う通り、仕事を一生懸命やっていきます。お体には充分気をつけてください。 愛と感謝を込めて私は家内に書きました。
(亭主の気持ち) 敬具