大橋院長の為になるブログ

2017.05.21更新

「天国か地獄か」    大橋医院 大橋信昭

 大橋信昭氏は、もう3日目になろうと思いますが、閻魔大王が延々と続く、死人の列を恐ろしい形相で、睨んでいるのでございます。ここで、この死人は天国へ行くか、地獄へ行くか、お決めになるそうです。
 天国は、もう人同士が争うこともなく、蓮華草に囲まれ、池などには、蓮の花が咲きがとても良い匂いがしており、遥かかなたでございますが、仏様がどんな周波数の光でございましょう、眩しく、天国で位してよいと閻魔大王に判断された方々は、それは幸福そうに、戯れておられます。
 方や、何里もある暗い人の泣き叫ぶ世界が地獄だそうであります。そこには血の池や針の山があり、恐ろしい形相の鬼たちに、鞭で叩かれています。
 どの死人も、死亡診断書を医師が書いた時点から、天国で暮らしたいのは当たり前でございます。それを、生前の死者の行いを鑑定して、閻魔大王がお決めになる法律が、いつかの国会で決まったそうです。そろそろ、私の番がやってまいりました。偶然にもOO医局長とすれ違い、天国行が決定され、それは満面の笑みをたたえておられました。
 剛腕で逃げようのない鬼たちに、閻魔大王が怖い顔をして私をにらむ、砂で敷かれた庭に座らされました。もう、脂汗からも冷汗も出ません。
 閻魔大王の怒鳴り声で、私の裁判は始まりました。医師には医師用の閻魔大王がございまして、額に「医」という刺青が掘ってあります。「死に人XZ031号、表を挙げよ!もう俗名も戒名もございません。
 閻魔様は、おっしゃいました。「君!医師になり7年目のこの症例だが、心筋梗塞を、PCIで速やかに治癒させたのは褒めて遣わそう。しかし、右肺尖部にあるこの結節永影を気が付かなかったのかね。この腺癌を見逃したために、この患者は、大変苦しい抗ガン治療を受け、2年後に今、天国にいるがね。君、何か言うことは無いかね!」「いえ!その結節影はどの医師でも、陳旧性肺結核と診断し、今、起きている、心筋梗塞の治療を急ぐものでございましょう!」閻魔様は周りの、死んでいる法医官や、病理管の顔を睨みつけた。焦った私は思わず叫んだ!「症例2345987例目をご覧ください。疲れやすい、食欲がないで私の外来を訪れたのでございます。私は速やかに胃カメラをオーダーし、二日後に胃の粘膜を観察し、バイオプシーをいたし、早期がんⅡaと判断し、当時は内視鏡による胃の摘出術がございませんから、外科医に相談し、手術され20年も延命した症例がございます。!」「しかし、君!2014年にこの症例は、如何に君が疲れていたとしても明日僕の外来へ来たまえ!と鬼のように怒鳴ったそうじゃないか?その患者はその夜、ずいぶん苦しみ、泣いていたそうじゃないか?君の父親と同級生ではなかったか?もうすこし、優しい言葉をかけては上げれなかったのかね?」「人間は、医師と言えども、疲労を重ねるものです。そういう時,つい荒い言葉が出てしまうものです。この症例は私はずいぶん、反省しております。しかし症例569873215例目はいかがでしょうか?私は、もう開業しておりまして、不定愁訴の多い老人を、大学病院へ紹介し、Shy-Drager Syndromeと診断され、その後、在宅療養、ターミナル緩和ケアになりましたが、私は夜中も祝日も、往診し、奥様と一緒に看取った患者さんがございます。祖他、在宅では終末医療は、自分の時間を忘れ、患者宅に日参し、看取り、お通夜まで行き、大勢の家族に感謝されております。!」私は、必死で過去の症例を医師として自信をもって説明した。閻魔大王は、うす気味悪く微笑んだ。「その他にも、無数の検討すべき症例はたくさんありそうだな。今回はOO市民病院の」部長たちに陪審員をしてもらう。それにしても、家族は大切にしておるな。奥さんも、子供たちも立派に育っているじゃないか。褒めてつかわそう。しかし、この1984年の日循総会での研究発表後、君は研究仲間と大酒をふるい、感心しない風俗店で、遊んでいるな。このときばかりでもない、海外の大学へ留学した時も、研究助手と危ない関係になっているのかいなかったのか、閻魔大王にも資料がない。君、どうだったかね?」「いや!閻魔大王は勘違いしておられる。私は、女に臆病で、家内以外を愛した女などございません。よくお調べください!」と私は下手糞な演技をした。
 閻魔大王は、じっと考え込み、「よし、これからOO病院の部長たちの陪審会を開く、天国化地獄か追って通知をいたそう。数日またれよ!」
 私は気が気ではなかった、死ぬときは眠るように、自然死であり、あまり苦しまなかったが、妻や家族たちは遠い将来、天国へ来るに違いない。天国でお花畑で永久に、幸福に暮らしたい。
 あるそよ風が我が家に入り込み、散った桜の花が私の顔に降り注いだ時、一通の手紙を子供の津の一本しかない鬼が笑いながら届けてくれた。恐る恐る開封すると「XZ031号(大橋信昭のこと)、陪審員は長い時間、会議をし、私も君の医師としての一生を観察するに、天国行気を命ずる!」と書いてあった。
ありがとう、閻魔大王。早速、天国への引っ越し準備をして、そこでも医師として頑張るよ。ありがとうございます。(完)

えんま

投稿者: 大橋医院

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