2016.11.21更新

やくいん

大橋信昭

 3日前の日曜日に町内の役員会があった。私は会計監査という役員をやっている。1年間の会計が監査をする役だから、責任重大であるはずである。しかし、もう一人の会計監査が御隠居であり、朝から酒を飲んでいる人であるから、会計帳簿を見る前に「大変結構です」という。そして、私に「この会計さんなら、もう間違いはありません。何、町内から苦情が出たら、御尻でもまくって辞職願を出しましょう。」と最初からやる気がない。だから一度も会計簿をじっくり見たことが無い。役員会の席ではひやひやである。役員会にはその酒豪は出ないので、私一人決まりきったように「平成27年1月4日に、予算決算書を監査したところ、適正なる会計であり、ここにご報告します。」と言う。司会者が「御異議無ければ拍手をお願いします。」という。しばらく沈黙の後、拍手が起こる。ほっとする。世の中、こんないい加減で良いものかと考える。
 何しろ、私は役員というものには適正ではない。今年、組長であるが今年、葬式でも起きたら、何の役にも立たないから困ったものだ。
大体、町内の行事は私には向いていない。まず大垣祭りである。あんな伝統を400年間も続行するものだから、大変な迷惑である。紋付き袴、足袋か下駄をはかねばならない。自分では紋付き袴は着ることが出来ないので、妻に任せている。あれを着るたびに、昔の日本人を尊敬する。私の家の家紋付き紋付き袴を着て、足袋をはき外へ一歩出た段階で、疲れ切っている。この祭りにまともに付き合うと私は途中で失神発作を起こすので、途中、消えて私の家で、そっと外の祭りの音に耳を塞ぐ。町内の山(車編に山を付ける)と、市内を練り歩くのだから、町内や関係者の体力には感心する。子供のころには、祭りの雑音や、屋台のお菓子には、心を騒いだが、笛も吹けず、太鼓も叩けず、紋付き袴で、後ろめたく町内の人の後方に付く。普段力仕事をしていないから、聴診器と往診鞄しか持たないから、提灯を飾り、まして祝儀集めに各家に行くのは聞く力避けている。
 大垣祭りが終わるとほっとするが、そこでまた会計監査の仕事がある。いつもの調子で、会計は適正であるという。拍手が終わりほっとする。誰も見ていないのか、国家の予算決算はこんな調子ではいけない。優秀な官僚がいるから本当に適正な予算決算であろう。
 その次は、8月に行われる夏祭りである。青年部主催であるが、私はすでに松竹会(還暦過ぎの人の集合)に入っており、前回の役員会で、同じ人間が青年部と松竹会に属するのは非合理であると主張したが、相手にされなかった。8月の第一日曜日の正午に、公民館集合となっているが、私には不可能である。熱中症になるであろう。若い人は、その40度近い炎天下に滑り台や、長椅子を動かしテントを張り、屋台を組み、みたらしやお好み焼き作り、肉を焼き始めるのである。私には決して向いていない。太陽が西に傾き、薄暗くなってから私は姿を現す。後片づけの手伝いである。しかも、できるだけ軽い荷物を選択し、朝から重労働をしていたような格好をする。お祭り後の反省会には出席し、若い人たちの御苦労をねぎらう。
 こんな調子であるから、会計監査以上の大役は、緊急患者が多いからと町内には断っている。実際、24時間365日体制で、診療に向かっているのでご勘弁願いたい。1年間、皆さんに迷惑をかけることなく暮らしていくのは私の町内では大変である。色男でもなく、力も芸もないが、医師として何とか面目を保つようにしたいのである。
 

 

投稿者: 大橋医院