2015.01.29更新

<私の大垣.名古屋間>
大橋信昭
私の主任教授が亡くなられた。主任教授といえば、今日いたるまで、医師とはどういう職業か?患者さんといかに接すべきか?研究面、私生活(仲人、開院式)にもご協力していただき、御恩が深く、お通夜はどうしても出席せねば罰があたる。場所は名古屋の覚王山の地下鉄駅徒歩5分ということで、安心しきっていた。しかし、覚王山は遠い。千種、今池より東である。車内案内を頼りに不安ながら降りたが、2番出口と式場の案内に書いてあるが、2番線が無い。思い切って、1番線から地上へ飛び出たが、大きな歩道と車道と、怖い顔した人達が数人、すれ違うだけで、東西南北が分からずに、思わずに近くのコンビニへ入り込んだ。100円のチョコバーを買って、店員に東はどの方向か?と聞いたら分からぬという。必死で喪服の人たちを探し、この道をまっすぐだと教えてくれた。名古屋の5分と大垣の5分は違い、名古屋は全力で歩いて5分である。やっと葬儀場についた私は、最後のお参り人であった。奥様は変わらずお綺麗であった。「お参りさせてください。」「どうぞ」と言われ、焼香し、お祈りし、御棺の中の恐い教授を久しぶりに見た。病棟では鬼のような顔をしていたが、棺桶の中でも私は恐怖で震えた。どうして、奥様は相変わらずお綺麗なのに、教授の顔は病棟回診の時の、近寄りがたい顔をこんな葬儀場でもしているのであろう?しっかり、数珠を持ち、過去のお礼を心の中で唱えた。
サー、大垣へ帰るぞ!大垣は間違えることはあるまい。名古屋方面の地下鉄に飛び乗った。満員であったが座れることができた。気が付くと両隣は若い女性であった。私に両方からぴったり寄り添ってくる。ここで間違っても、どちらかの女性に接触したら、「この人!痴漢です!」と周囲の人に奇声をあげ、私は逮捕される予感がした。特に両手はポケットに突っ込み、両側の女性に触れるのを神経質に回避した。大垣の開業医が痴漢すると新聞紙に印刷されれば、私の店は閉じねばならぬ。最近の女性はそれくらい怖いものである。
やっと地下鉄から脱出し、名古屋駅の前に立った。なんという人の数であろう。店屋には行列が並ぶし、大垣祭りが毎日、行われているようなものだ。人の波にもまれ、IR名古屋駅にやっと入り、大垣方面快速に乗り、ラッキーにもまた座れることができた。その席は二人用であり、私は窓側に座ったのである。しかし、またしても隣に中年の貴婦人が慌てて座り込んだのである。昨今の満員電車の女性に触れたというだけで事件になっているので、私は窓を真剣に眺め、"あなたと私とは何の関係もありませんよ"という態度を貫き通した。大垣まで疲れてしまった。
大垣駅は名古屋駅と違い、降りる人も、行き会う人もまばらである。大都会と田舎の大変な違いである。まっすぐに、我が家へ向かった。ここでまた困った問題が起きたのである。大垣駅から当院へ行くには最短距離の道を選ぶと、暗い細い道しかない。その前を若いOLが綺麗に着飾り、長い足にハイヒールに音を立てながら、闊歩しているのである。他に道はないこともないが道路しかない。彼女は、私を振り返り、警戒注意報か緊急体制に入ったようである。路上で若い女性が暴徒に襲われる新聞記事が多い。私はその気はない。むしろ、体格のいいこの若い女性と格闘技をしても、完敗になりそうである。私は、前で立ち止まり、私を睨んでいる女性を避け、車道へ走ったのである。夜間の車道は、道路交通法を無視した若者がいっぱいだ。私は走った。日ごろ走ることが無いのに、女性から遠ざかり、車に気を付け、当院へたどり着いたのである。
心拍数が上がり、頭がふらふらして、汗びっしょりで、家内にやっと逢えた。こういう時の家族は、有難い。「よく、無事に帰ってきました。」私は、しばらく放心状態であったが、シャワーを浴び、寝間着に着替え、ソファーにくつろぎながら、大都会では私はつぶされてしまう、大垣の田舎よ、万歳と、思った。
名古屋からのお誘いはできるだけ避けよう。グローバル社会にお恥ずかしい話である。



岐阜県大垣市の大橋医院は、高血圧症、糖尿病、や動脈硬化症に全力投球します。

投稿者: 大橋医院