ある日、独田農は考えていた。
木枯らし吹き荒れる、初冬の診察室である。もはや、彼も60歳を超え、
誰が見ても若者とは言わない。仮に若者と言われても、それは残された医師としての
研修医にない、熟練された実が熟す瞬間への期待であろう。
残された医師としての時間は、わからない。悪性腫瘍が顔を出したら、半年の医師の生命かも知れないし、
奇跡的にも不治の病にご縁がなければ、10年や15年になるかもしれない。
これは奇跡に近い。いや頻度の極めて低い話である。
それにしても、今の医学の進歩は新幹線が浮いて東京と大阪を瞬時に往復可能になったに等しい。
毎月山のような医学雑誌、全出席すると病気になる勉強会、IT機械から休みなく得られる医療情報、
パンフレット、MRの宣伝、無限に生産される新薬、ジェネリックに彼の頭はパニック状態になる。
40-50歳の後輩には教えられることは多いが、教えることはほとんどない。
老兵去るべしであろうか?
女性の集団を見ても、服役中の囚人より怖い。綺麗な女性には、恋心を感じるが、一方通行である。
あれほど好きな、映画、読書が老眼も加わって、縁遠くなった。
今や、Windows8に悪戦苦闘しつつ、そのパソコンから流れるジャズでも聴きながら、ビールを飲み、
酔って、記憶力が薄れる中、医学書に目を通しいつの間に、ひとりひっそり院長室の書斎で朝まで
眠ってしまう毎日である。家庭内独居老人である。哀れな醜い存在となった。しかし、携帯が鳴り、患者さんが
呼べば駆けつけるのである。
岐阜県大垣市の大橋医院は、高血圧症、糖尿病、や動脈硬化症に全力を尽くします。
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