2013.07.17更新

<信念>

大橋信昭

 医師になり35年も、時間が経つと不思議な経験をすることが多い。

ある日流感の流行っている日、待合室は咳、鼻水、咽頭痛の症状の人だらけであった。その大勢の人の中に、この中高年の紳士は風邪ではおかしいとなんとなく思うのである。まるで神様が命令したように、腹部エコー検査をした。
肝腫瘍である。そこには何か悪性の病気の匂いがするのである。中核病院へ連絡を取った。

ある日、アルツハイマー病であると主張する娘さんがいた。確かにそのお母さんは認知も重篤である。そのままアルツハイマー病として、内服させてもいいのだが、急激な認知の症状と、言葉で表せない表情が、脳血管障害を疑った。もちろん、麻痺もなく神経症状もない。中核病院の病診連携室の事務員はその日、悲鳴をあげて忙しそうだった。「先生、アルツハイマー病の痴呆の評価ならまず、脳神経内科の問診を受けてください、」と荒い声が帰ってきた。「いや、どうしてもアルツハイマー病ではないと思うのだよ。脳血管が絡んでいると思うのだ。」強引に私も、至急のMRIを施行してもらった。やはり、硬膜下血腫であった。緊急手術となり、夜の8時に、部長から電話が鳴った。「先生、ありがとう、今手術が終わりましたよ。」次の日の昼休みに見舞いに行った。全く老婆は別人となり、笑顔で私と握手した。娘さんが嘆いていた。「急に元気になり、じっととしていないし、すぐに退院だそうだけど不思議ね。二日前とは別人なのよ。」帰宅の道中、医師として嬉しかった。あのまま、認知症で放置されたら、今の幸福な世界を彼女は知らずに終わってしまったかもしれない。

ある日、元気の無いご円さんを診て、いつの間にか注腸撮影をして早期癌を発見していた。今も元気で、お経さんを上げている。
絶対に、病気は見逃さないぞという信念をいつも持っていれば、医者冥利につく仕事ができるものだ。私も、患者さんも会えば、いつも笑顔でいられる。

岐阜県大垣市の大橋医院の院長の大橋信昭は高血圧症、糖尿病、動脈硬化に全力を尽くします。




投稿者: 大橋医院